【ITニュース解説】Ubuntu 25.10(questing)の開発; RISC-VのRVA23への切り替え・OpenSSL 3.5.0の導入
ITニュース概要
開発中のUbuntu 25.10 (questing) では、複数の技術刷新が行われる。コンピュータの頭脳であるRISC-Vの規格をRVA23プロファイルに切り替え、データ暗号化のOpenSSLは3.5.0を導入する予定だ。
ITニュース解説
Ubuntu 25.10、コードネーム「questing」の開発が始まった。この新しいUbuntuのバージョンでは、主にRISC-Vアーキテクチャの対応強化と、暗号化ライブラリOpenSSLの最新版導入が注目されている。これらの変更は、未来のコンピューティング環境と、システムを支えるセキュリティ基盤に大きな影響を与えるため、システムエンジニアを目指す者にとって理解しておくべき重要なトピックである。 まず、Ubuntu 25.10という「Ubuntu」について解説する。UbuntuはLinuxと呼ばれるOSの一種で、世界中で非常に広く使われている。サーバーの構築、個人のデスクトップコンピューターでの利用、さらにはスマートフォンやIoTデバイスといった小型機器に組み込まれるなど、その用途は多岐にわたる。Ubuntuは定期的に新しいバージョンがリリースされ、そのたびに最新の技術を取り込み、セキュリティを強化している。今回の「questing」も、その継続的な進化の一環として位置づけられる。 次に、このニュースの中心である「RISC-Vアーキテクチャ」について説明する。コンピューターの頭脳であるCPUは、プログラムを実行するために特定の「命令」を理解する必要がある。この命令の集まりと、その命令に基づいてCPUを設計するためのルールを「命令セットアーキテクチャ(ISA)」と呼ぶ。これまで、PCではIntelやAMDが開発するx86、スマートフォンではARMが開発するARMといったISAが主流であった。しかし、RISC-Vはこれらの既存のISAとは一線を画す特徴を持っている。それは「オープンソース」であることだ。オープンソースとは、その設計図や開発方法が誰でも自由に利用、改良、再配布できる状態を指す。これにより、特定の企業に縛られることなく、誰もがRISC-VベースのCPUを開発できる。この自由度の高さが、RISC-Vを非常に柔軟で、多様なデバイスや用途に適応できる可能性を秘めた技術として注目させている。 今回のUbuntu 25.10の開発では、このRISC-Vにおいて「RVA23プロファイル」への対応が進められる。RISC-Vは非常に柔軟な設計が可能である反面、そのままだと様々なバージョンのRISC-V CPUが乱立し、ソフトウェア開発者が対応に苦慮する可能性があった。そこで、「プロファイル」という概念が導入された。プロファイルとは、RISC-Vの機能の中から特定のものを選び出し、「この機能は必ず実装するべきだ」「この仕様に統一しよう」といった、標準的な機能セットやルールを定めたものである。RVA23プロファイルは、そのプロファイルの中でも比較的新しい、より洗練された標準の一つである。UbuntuがRVA23プロファイルに対応するということは、この新しい標準に準拠したRISC-V CPUであれば、Ubuntuが安定して動作することを意味する。これにより、RISC-V向けのソフトウェア開発者は、特定のプロファイルに沿って開発されたRISC-Vシステム上で、自分のプログラムが確実に動作すると安心して開発を進められるようになる。これは、RISC-Vエコシステム全体の互換性と安定性を高める上で非常に重要なステップである。 このRISC-V対応の推進には、Rivosという企業がパートナーシップを結んで関わっている。RivosはRISC-V技術に特化した企業であり、ハードウェアとソフトウェアの両面で専門知識を持っている。このような企業との協力は、Ubuntu開発陣がRISC-V関連の最新技術やノウハウを効率的に取り入れ、より質の高い対応を実現するために不可欠である。ハードウェアとOS(ソフトウェア)の連携がスムーズに進むことで、最終的にはより高性能で安定したシステムが実現される。 UbuntuがRISC-Vへの対応を強化する意義は大きい。これは、将来的なコンピューティングの多様化に対応するための重要な戦略である。RISC-Vは、スマートフォン、自動車、エッジコンピューティングデバイス、さらにはスーパーコンピューターなど、あらゆる分野での利用が期待されている。UbuntuがRVA23のような標準プロファイルに積極的に対応することで、これらの新しいRISC-Vベースのハードウェア上でも、OSとして安定稼働し、幅広いアプリケーションをサポートできるようになる。これにより、システムエンジニアは、従来のx86やARMだけでなく、RISC-Vという新たな選択肢の上で、より革新的で多様なシステムを構築する機会を得るだろう。 そして、もう一つの重要な変更点が「OpenSSL 3.5.0の導入」である。OpenSSLは、インターネット上の通信の安全を確保するために不可欠なソフトウェアライブラリである。ウェブサイトへのアクセス、メールの送受信、オンラインバンキングなど、私たちが日常的に利用するデジタルサービスの多くは、OpenSSLのような暗号化技術によって安全が保たれている。ウェブサイトのアドレスが「https://」で始まるのは、このOpenSSLなどが提供するSSL/TLSという技術によって通信が暗号化されていることを示している。OpenSSLがバージョン3.5.0に更新されるということは、セキュリティ上の既存の脆弱性(弱点)が修正され、新しい暗号技術やプロトコルがサポートされ、全体の性能が向上することを意味する。システムエンジニアにとって、システムのセキュリティは最優先事項の一つであり、このような基盤となるライブラリの更新は、常に最新の脅威からシステムを守るために極めて重要である。 Ubuntu 25.10の開発は、単なるOSのアップデートに留まらない。RISC-VにおけるRVA23プロファイルへの対応は、新しいCPUアーキテクチャの標準化と普及を加速させ、OpenSSL 3.5.0の導入は、デジタル社会の基盤となるセキュリティをより強固にする。これらの技術動向は、システムエンジニアを目指す者にとって、未来のITインフラがどのように進化していくのか、そしてどのような技術が社会に貢献していくのかを理解する上で非常に価値のある情報である。これらの変化を追い、新しい技術を学ぶことは、将来のキャリア形成において強力な武器となるだろう。