【ITニュース解説】Vector Databases

2025年09月04日に「Dev.to」が公開したITニュース「Vector Databases」について初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

作成日: 更新日:

ITニュース概要

ベクトルデータベースは、テキストや画像などのデータを意味や類似性に基づいて検索できるデータベース。データは「埋め込みベクトル」という数値の配列で表現され、類似したデータは近い位置に配置される。大量のベクトルを効率的に保存・検索するために、インデックス技術やフィルタリング機能を備えている。

出典: Vector Databases | Dev.to公開日:

ITニュース解説

近年注目を集めている「ベクトルデータベース」について解説する。これは、従来のデータベースとは異なり、ベクトルと呼ばれる特殊なデータ形式を効率的に保存・検索するためのシステムだ。システムエンジニアを目指す初学者にとって、この技術を理解することは、今後のAI技術の発展に対応するために不可欠となる。

まず、ベクトルとは何かを理解する必要がある。ベクトルは、簡単に言えば、数字の並びのことだ。例えば、2次元の座標を表す場合、[3.5, 7.2]のように表現できる。機械学習においては、このベクトルを使って、データの特徴や意味を多次元空間における位置として表現する。

ここで重要なのが「埋め込みベクトル」だ。これは、テキスト、画像、音声などの複雑なデータを、その意味や類似性を捉えることができるように数値化したベクトルのことだ。例えば、「犬」と「子犬」という言葉は意味が似ているため、埋め込みベクトル空間上では近い位置に配置される。一方、「犬」と「車」は意味が異なるため、遠い位置に配置される。埋め込みベクトルの次元数は、モデルによって異なり、次元数が大きいほど、より詳細な情報を表現できるが、保存や検索のコストも高くなる。

テキストデータを扱う場合、単語の順序も重要となる。例えば、「犬が人を噛む」と「人が犬を噛む」では意味が全く異なる。この順序情報を埋め込みベクトルに含めるために、「位置エンコーディング」という技術が用いられる。これは、単語の位置情報を表すベクトルを、埋め込みベクトルに加えることで、文全体の意味を正確に捉えることを可能にする。

ベクトルデータベースは、これらのベクトル、特に埋め込みベクトルを大量に保存し、高速に検索するために設計されたデータベースだ。従来のデータベースのようにキーワードで検索するのではなく、意味的に近いベクトルを検索することができる。これを「セマンティック検索」と呼ぶ。

ベクトルデータベースの重要な機能として、まず「永続性」が挙げられる。大量のベクトルをメモリ上に保持することは現実的ではないため、ハードディスクなどのストレージに長期的に保存する必要がある。また、ベクトルの作成、読み出し、更新、削除といった基本的なデータベース操作(CRUD操作)もサポートされている必要がある。さらに、単にベクトルを保存するだけでなく、後述する索引構造も永続化する必要がある。

次に、「類似性検索」は、ベクトルデータベースの中核となる機能だ。これは、クエリベクトル(検索したいベクトルのこと)に最も意味的に近いベクトルをデータベースから見つけ出す機能だ。類似性の尺度としては、コサイン類似度、ユークリッド距離、ドット積などが用いられる。

しかし、データベースに保存された全てのベクトルを一つ一つ比較していては、検索に時間がかかりすぎる。そこで、「索引」と呼ばれるデータ構造を用いて、検索を高速化する。代表的な索引アルゴリズムとしては、HNSW、IVF、PQ、Annoyなどがある。これらのアルゴリズムは、「近似最近傍探索(ANN)」と呼ばれる技術に基づいており、多少の精度を犠牲にする代わりに、大幅な高速化を実現している。

HNSWは、多層構造のグラフを用いてベクトル間の近さを表現する。IVFは、ベクトルをいくつかのクラスタに分割し、検索時に最も関連性の高いクラスタのみを探索する。PQは、ベクトルを圧縮することでメモリ使用量を削減する。Annoyは、ランダムな射影木を複数作成し、効率的に検索を行う。これらのアルゴリズムは、それぞれ特徴があり、データの特性や要件に応じて使い分ける必要がある。例えば、HNSWは高速な検索が可能だが、メモリ消費量が多い。PQはメモリ効率が良いが、精度がやや劣る。

最後に、ベクトルデータベースは、しばしば「フィルタリング」や「メタデータ」と組み合わせて使用される。例えば、「過去1ヶ月間の類似するサポートチケットを検索する」や「シューズカテゴリの商品を推薦する」といった具体的な要件に対応するためには、単に意味的に近いベクトルを検索するだけでなく、日付やカテゴリなどの条件で絞り込む必要がある。このために、各ベクトルにメタデータ(キーと値のペア)を付与し、検索時にこれらのメタデータに基づいてフィルタリングを行う。

このように、ベクトルデータベースは、単にベクトルを保存するだけでなく、高速な類似性検索、効率的な索引構造、柔軟なフィルタリング機能などを備えた、高度なデータ管理システムだ。システムエンジニアを目指す者は、これらの基本的な概念を理解し、実際のアプリケーションでの活用方法を学ぶことが重要となる。

【ITニュース解説】Vector Databases | いっしー@Webエンジニア