【ITニュース解説】Writing Code Is Easy. Reading It Isn't

2025年09月09日に「Reddit /r/programming」が公開したITニュース「Writing Code Is Easy. Reading It Isn't」について初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

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ITニュース概要

コードを書くことより、他人が書いたコードを読むことの方が遥かに難しい。実際の開発ではコードを読む時間が大半を占めるため、将来の自分や他人のために、誰が見ても理解しやすいコードを書く意識が重要となる。

ITニュース解説

プログラミングの学習を始めたばかりの頃は、新しい構文を覚え、課題を解決するためのコードを書き上げることに集中するだろう。しかし、プロのシステムエンジニアとしてキャリアを積んでいく上で、実はコードを書く能力と同じか、それ以上に重要となるスキルがある。それが「コードを読む能力」である。「コードを書くのは簡単だ。読むのはそうではない」という言葉は、プログラミングの世界におけるこの重要な真実を的確に表している。

コードを書く行為は、自分の頭の中にある設計図やアイデアを、プログラミング言語というルールに従って表現する作業である。目的や背景、技術的な制約など、必要な情報はすべて書き手自身の頭の中に存在している。いわば、答えを知っている状態で数式を組み立てるようなものであり、思考の流れは一方向で完結する。一方で、他人が書いたコードを読む行為は、これとは全く異なる認知プロセスを要求される。それは、完成した建築物だけを見て、その設計思想や構造、なぜその材料が選ばれたのかを解読する探偵のような作業に近い。コードという最終的な成果物から、書き手の意図や思考のプロセス、そしてコードには現れない背景情報までを逆方向に辿る必要があるため、そこには多くの困難が伴うのだ。

コードの読解を難しくする要因は複数存在する。最も一般的なのは、変数や関数の名前が不適切であるケースだ。「data」や「temp」、「flag」といった曖昧な名前では、それが何を保持し、どのような目的で使われるのかをコードの文脈から推測しなければならない。また、一つの関数があまりにも長大で、多くの役割を担っている場合も理解を著しく妨げる。何百行にもわたるコードの塊を前にすると、どこでどのような処理が行われているのか、その全体像を把握するだけで多大な労力を要する。さらに、コメントやドキュメントが不足している場合、読み手はさらに困難な状況に置かれる。特に、なぜその実装方法が選ばれたのかという「理由」や、背景にあるビジネス上のルールに関する説明がなければ、コードの表面的な動作はわかっても、その本質的な意味を理解することはできない。

システム開発の現場において、ゼロから新しいコードを書く時間よりも、既存のコードを読んで修正したり、機能を追加したりする時間の方が圧倒的に長いのが実情だ。稼働中のシステムで障害が発生すれば、原因を特定するために膨大な量のコードを読み解く必要がある。チームで開発を進める上では、他のメンバーが書いたコードをレビューしたり、機能を引き継いだりすることも日常茶飯事である。コードを正確かつ迅速に読む能力がなければ、これらの業務を効率的にこなすことはできず、チーム全体の生産性を低下させる原因にもなりかねない。逆に言えば、コードを読むスキルは、優れたエンジニアが書いたオープンソースソフトウェアなどを通じて、彼らの思考や設計思想を学ぶための最高の学習手段ともなる。

では、将来の自分や他のエンジニアが読みやすいコードを書くためには、何を意識すれば良いのだろうか。まず、最も基本的かつ重要なのは、命名規則を徹底することだ。変数名や関数名は、その役割や目的が一目でわかるように、具体的で誤解の余地がない単語を選ぶべきである。次に、処理の単位を小さく保つことを心掛ける。一つの関数には一つの明確な役割だけを持たせるように設計することで、コードの各部分が何をしているのかを容易に理解できるようになる。そして、コメントを有効に活用することも重要だ。ただし、コードを見ればわかるような「何をしているか」を説明するコメントは冗長になりがちである。書くべきなのは、その処理が必要になった背景や、なぜこの特定の実装方法を選んだのかという「なぜ」の部分だ。こうした書き手の意図を補う情報が、読み手の理解を大いに助けることになる。

結論として、プログラミングは単にコンピュータへ命令を伝える技術ではなく、人間同士のコミュニケーションの手段でもあると理解することが重要だ。書かれたコードは、時間を超えて他のエンジニア、そして未来の自分自身へのメッセージとなる。常に「このコードを読む人は、どのような情報を必要とするだろうか」と自問自答し、読み手の視点に立ってコードを書く姿勢を持つことが、単なるプログラマーから、信頼されるシステムエンジニアへと成長するための不可欠な要素となる。コードの可読性を追求する意識は、長期的に見て自分自身の仕事を楽にし、プロジェクト全体の成功に貢献する、極めて価値の高いスキルなのである。

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