RAC(アールエーシー)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説
RAC(アールエーシー)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。
読み方
日本語表記
răc (ラク)
英語表記
RAC (アールエーシー)
用語解説
RAC(Real Application Clusters)は、Oracle Databaseが高可用性とスケーラビリティを実現するための重要な技術である。これは、複数の独立したコンピュータ(サーバ)が連携し、あたかも一つの大きなデータベースであるかのように機能する仕組みを指す。システムエンジニアを目指す初心者にとって、大規模なエンタープライズシステムを理解する上で避けて通れない概念の一つだ。
RACの最大の目的は、データベースの停止時間を極力短くし、かつシステムの処理能力を柔軟に拡張することにある。従来の単一サーバで稼働するデータベース(シングルインスタンス)では、そのサーバ自体に障害が発生した場合、データベース全体が利用できなくなり、サービスが停止してしまうという課題があった。また、処理能力を向上させるためには、より高性能なサーバに買い替える「スケールアップ」が主な手段であり、性能向上に限界があったり、初期投資が非常に高額になったりする問題があった。RACはこれらの課題を解決するために開発された。
具体的にRACの構成を考えると、複数のサーバが共通の記憶装置(共有ディスク)に接続されている点が特徴である。これらのサーバはそれぞれ独立したOracle Databaseのインスタンス(メモリ領域とバックグラウンドプロセス群)を持ち、同じ共有ディスク上のデータファイル、制御ファイル、REDOログファイルといったデータベースの物理ファイルを共有して利用する。これにより、どのサーバからでも同じデータにアクセスし、処理を行うことが可能となる。
高可用性の観点からRACを見ると、その最大の利点は障害発生時の堅牢性にある。RAC環境では、仮にいずれか一つのサーバにハードウェアやソフトウェアの障害が発生し、そのサーバ上のインスタンスが停止しても、他の稼働中のサーバインスタンスが自動的に処理を引き継ぎ、データベースサービスを継続させることができる。これは「フェイルオーバー」と呼ばれる機能で、ユーザーやアプリケーションから見ると、一時的に処理が遅延する可能性はあるものの、データベースが完全に停止することなくサービスが提供され続けるため、業務への影響を最小限に抑えることができる。シングルインスタンスのデータベースでは、サーバ障害がそのままデータベースの停止を意味するため、この点の差は非常に大きい。RACはこの仕組みにより、金融システムや通信システムなど、24時間365日の連続稼働が求められるミッションクリティカルなシステムにおいて不可欠な技術となっている。
次にスケーラビリティについてだが、RACはシステムの処理能力を柔軟に拡張できる「スケールアウト」のアプローチを提供する。これは、高性能な一台のサーバに依存するのではなく、一般的な性能のサーバを複数台追加していくことで、全体の処理能力を向上させるという考え方である。RAC環境では、データベースの負荷が増大した場合、新たなサーバを追加し、それをRACクラスタに組み込むだけで、データベース全体の処理能力を向上させることが可能となる。これにより、段階的な投資でシステムの成長に合わせて性能を拡張できるため、将来的な需要変動にも柔軟に対応できる利点がある。また、複数のサーバインスタンスが同時にデータベースにアクセスして処理を行うことで、ユーザーからのリクエストを分散処理し、単一サーバでは処理しきれない大量のトランザクションをさばくことができる。
RACの仕組みを支える主要な技術要素も理解しておくべきだ。まず、先述の「共有ディスク」が基盤となる。全てのインスタンスが同じデータにアクセスするため、共有ディスクの存在は不可欠である。そして、これらのサーバインスタンス間での高速な通信を可能にする「インターコネクト」という専用ネットワークが重要になる。インターコネクトは、インスタンス間でキャッシュされているデータの一貫性(キャッシュコヒーレンシ)を保つために利用される。例えば、あるインスタンスがデータを更新し、そのデータが別のインスタンスのメモリにもキャッシュされている場合、インターコネクトを通じてデータの更新情報が通知され、常に最新のデータが参照されるように制御される。このキャッシュコヒーレンシの維持は、RACが複数インスタンスで同じデータに矛盾なくアクセスするために非常に重要な役割を果たす。この一貫性制御は、Global Cache Service (GCS) と呼ばれるRAC独自の機能によって実現されている。
また、RACの構成には、Oracle Clusterware (CRS: Cluster Ready Services) と呼ばれるクラスタ管理ソフトウェアが必須となる。これは、各サーバの稼働状況を監視し、障害が発生したサーバを検知して自動的にフェイルオーバー処理を実行したり、データベースやリスナーなどの各種リソースを管理したりする役割を担う。つまり、RAC全体を一つのまとまりとして機能させるための土台となるソフトウェアである。さらに、共有ディスクの管理を簡素化するための「Automatic Storage Management (ASM)」という機能もよく利用される。ASMは、データベースが利用するディスク領域を効率的に管理し、I/O性能の最適化やディスク障害時の保護機能を提供する。
RACの導入には多くのメリットがある一方で、考慮すべき点も存在する。構成がシングルインスタンスに比べて複雑になるため、導入や運用管理にはより高度な専門知識が求められる。また、ライセンス費用やハードウェア費用(特に共有ディスクやインターコネクト)が増加する傾向がある。さらに、共有ディスクへのアクセスが集中することで、性能上のボトルネックとなる可能性もゼロではない。アプリケーションによっては、RACの特性を最大限に活かすために、データベースへの接続方法やトランザクション処理の設計において、RACを意識したチューニングが必要となる場合もある。
しかし、これらの考慮事項を上回るメリットが、RACを大規模かつミッションクリティカルなシステムにおいて非常に魅力的な選択肢としている。システムエンジニアとして、高可用性やスケーラビリティが求められる要件に対して、RACがどのような解決策を提供するのかを理解しておくことは、システム設計や構築、運用において大いに役立つだろう。RACは単なるデータベース機能の一つではなく、現代のビジネス要件に応えるための重要なインフラ技術の一つとして、その概念と仕組みをしっかりと把握することが求められる。