代替HTTPポート (ダイタイエイチティーティーピーポート) とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

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代替HTTPポート (ダイタイエイチティーティーピーポート) の読み方

日本語表記

代替HTTPポート (ダイタイエイチティーティーピーポート)

英語表記

Alternative HTTP port (オルタナティブ エイチティーティーピー ポート)

代替HTTPポート (ダイタイエイチティーティーピーポート) の意味や用語解説

代替HTTPポートとは、Web通信プロトコルであるHTTPまたはHTTPSで、標準的に使用されるポート番号以外の番号を利用して通信を行う仕組み、またはそのポート自体を指す。この概念を理解するためには、まずIPアドレスとポート番号の役割を把握する必要がある。インターネット上の通信は、IPアドレスで通信先のコンピューターを特定し、ポート番号でそのコンピューター上で動作しているどのアプリケーション(サービス)と通信するかを指定する。IPアドレスは通信相手の機器を特定するための一意の番号であり、ポート番号は、その機器内で通信を受け付けるプログラムを識別するための番号である。HTTP通信は、WebブラウザとWebサーバーが情報をやり取りするための基本的なプロトコルであり、通常、暗号化されていないHTTP通信にはTCPの80番ポートが、暗号化されたHTTPS通信にはTCPの443番ポートが世界的な標準(ウェルノウンポート)として割り当てられている。WebブラウザでURLを入力する際にポート番号を省略すると、自動的にこれらの標準ポートが使用される。代替HTTPポートは、この80番や443番といった慣例的なポートを使わずに、別の番号を用いてHTTP通信を実現するものである。 代替HTTPポートが利用される背景には、いくつかの技術的、運用的な理由が存在する。第一に、一台のサーバーマシン上で複数のWebサーバーやWebアプリケーションを同時に稼働させるためである。一つのIPアドレスに対して、80番ポートを使用できるプロセスは一つだけである。例えば、本番環境用のWebサーバーが80番ポートで稼働しているサーバー上で、開発中の別のWebアプリケーションをテストしたい場合、同じ80番ポートは使用できない。このような状況で、開発用のWebアプリケーションを8080番ポートなどで起動すれば、両方のサービスが互いに干渉することなく共存できる。これにより、限られたサーバーリソースを効率的に活用することが可能となる。URLを指定する際は、「http://サーバーアドレス:8080/」のように、コロンの後にポート番号を明記することで、目的のアプリケーションにアクセスする。 第二の理由は、セキュリティの向上を目的としたものである。80番や443番といった標準ポートは、Webサーバーの存在を示す目印となるため、世界中の攻撃者による不正アクセスや脆弱性スキャンの主要な標的となりやすい。そこで、管理画面や内部システム用のWebインターフェースなど、不特定多数からのアクセスを想定していないサービスを、標準ポートから変更した代替ポートで運用することがある。これにより、無差別に行われる自動化された攻撃の対象から外れやすくなり、攻撃者にサービスの存在を即座に特定されるリスクを低減できる。これは根本的なセキュリティ対策ではないが、攻撃の初期段階における防御層の一つとして機能する。 第三に、システムの権限に関する制約が挙げられる。多くのUNIX系オペレーティングシステムでは、0番から1023番までのポート番号(ウェルノウンポート)はシステムによって予約されており、これらを使用するアプリケーションを起動するには管理者権限(root権限)が必要となる。開発者が自身の一般ユーザー権限で、手軽にWebサーバーを起動してコーディングやテストを行いたい場合、管理者権限を必要としない1024番以降のポート(ユーザーポート)を使用する必要がある。JavaのアプリケーションサーバーであるApache TomcatのデフォルトHTTPポートが8080番に設定されているのは、この理由が背景にある代表的な例である。 第四の理由として、ネットワーク環境の制約を回避する目的がある。企業のファイアウォールやインターネットサービスプロバイダ(ISP)によっては、セキュリティポリシーの一環として、特定のポート番号以外の通信をブロックしている場合がある。また逆に、家庭用インターネット回線では、ユーザーが自宅サーバーを公開して不特定多数にサービスを提供することを防ぐ目的で、80番ポートへの外部からの着信通信を制限していることがある。このような環境でWebサーバーを外部に公開したい場合、ISPが許可している別のポート番号(例えば8080番など)を代替ポートとして利用する必要が生じる。 代替HTTPポートを利用する際の注意点として、まずファイアウォールの設定が挙げられる。サーバー自身や、そのサーバーが接続されているネットワークのファイアウォールで、使用する代替ポート番号の通信を明示的に許可しなければ、外部からアクセスすることはできない。また、実運用においては、利用者にポート番号を含んだ完全なURLを伝えなければならないため、利便性が低下する可能性がある。この問題を解決するため、実際のシステム構成ではリバースプロキシという技術が頻繁に用いられる。リバースプロキシは、外部からのアクセスを標準の80番や443番ポートで一旦受け付け、そのリクエストを内部で代替ポート(例:8080番)で稼働しているアプリケーションサーバーに転送する役割を担う。この構成により、利用者はポート番号を意識することなくサービスにアクセスでき、システム管理者はセキュリティの強化や負荷分散といったメリットを享受できる。

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