自動ワークロード・リポジトリ (ジドウワークロードリポジトリ) とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説
自動ワークロード・リポジトリ (ジドウワークロードリポジトリ) の読み方
日本語表記
自動ワークロードリポジトリ (ジドウワークロードリポジトリ)
英語表記
Automated Workload Repository (オートメーテッド ワークロード リポジトリ)
自動ワークロード・リポジトリ (ジドウワークロードリポジトリ) の意味や用語解説
自動ワークロード・リポジトリ(AWR)は、Oracleデータベースにおける重要なパフォーマンス監視および診断機能である。この機能は、データベースの活動に関する詳細な統計情報を定期的に収集し、保存することで、システムエンジニアがデータベースの性能問題を発見し、解決するための強力なツールを提供する。データベースの健全性を維持し、最適なパフォーマンスを発揮させるためには、その内部で何が起こっているかを正確に把握することが不可欠であり、AWRはその目的のために設計されている。 データベース運用において、システムが遅い、特定の処理に時間がかかるといった問題は頻繁に発生する。これらの問題の原因は多岐にわたり、CPUのボトルネック、メモリ不足、ディスクI/Oの遅延、非効率なSQL文、ロック競合など、様々な要因が考えられる。AWRは、これらの要因を特定するための客観的なデータを提供し、経験に基づいた推測ではなく、データに基づいた合理的な意思決定を可能にする。これにより、データベースの専門家ではないシステムエンジニアでも、パフォーマンス低下の根本原因に効果的にアプローチできるようになる。 詳細に入ると、AWRは特定の時間間隔でデータベースの「スナップショット」と呼ばれる統計情報のセットを自動的に取得する。デフォルトでは1時間に1回、このスナップショットが取得されるよう設定されており、取得されたデータはデータベース内部の専用領域、すなわちAWRリポジトリに保存される。このリポジトリに保存される情報には、CPU使用率、メモリ使用状況、ディスクI/O統計、データベースセッションの活動、実行されたSQL文に関する詳細な統計、そして様々な待機イベント(データベースが何らかのリソースを待っている時間)など、多岐にわたるパフォーマンスメトリクスが含まれる。 これらのスナップショットデータは、デフォルトで8日間保持されるが、この保存期間は運用要件に応じて変更可能である。保存された過去のスナップショットを利用することで、特定の期間におけるデータベースのパフォーマンス傾向を分析したり、システム変更(例えば、パッチ適用や設定変更)がパフォーマンスに与えた影響を比較評価したりすることが可能になる。これにより、問題が突発的に発生した場合だけでなく、長期的な視点でのパフォーマンス管理や容量計画にもAWRを活用できる。 AWRの最も一般的な利用方法は、「AWRレポート」の生成である。これは、指定した2つのスナップショット間の期間におけるデータベースのパフォーマンス統計を詳細にまとめたテキストまたはHTML形式のレポートである。AWRレポートには、データベース全体のサマリー情報、CPU、I/O、メモリなどのリソース使用状況、最もリソースを消費しているSQL文(トップSQL)、主要な待機イベントとその発生回数や平均待機時間、インスタンスのアクティビティ統計など、非常に多くのセクションが含まれる。 システムエンジニアは、このレポートを読み解くことで、パフォーマンス問題のボトルネックを特定できる。例えば、レポート内の「Top 5 Timed Foreground Events」セクションを参照すれば、データベースが最も多くの時間を費やしている待機イベントが何かを把握でき、それがディスクI/Oに関連するものであれば、ディスクの性能やSQLのI/Oパターンに問題がある可能性が高いと判断できる。また、「SQL ordered by Elapsed Time」セクションからは、実行に最も時間がかかっているSQL文を特定し、そのSQL文をチューニングの候補としてリストアップできる。 AWRは単独で機能するだけでなく、Oracleデータベースの他の診断ツールと密接に連携する。例えば、自動データベース診断モニター(ADDM)はAWRのデータを利用して自動的にパフォーマンス診断を行い、具体的な改善策を推奨する。また、アクティブセッション履歴(ASH)は、AWRよりもさらに細かい粒度でセッションのアクティビティを記録し、AWRと組み合わせることで、より詳細なリアルタイムに近いパフォーマンス分析を可能にする。 ただし、AWRはOracle Database Enterprise EditionにおけるDiagnostic Packの一部として提供される機能であり、利用には適切なライセンスが必要である点に留意する必要がある。また、AWR自体が収集する統計情報の量は膨大であるため、そのリポジトリのサイズ管理や、データ収集によるごくわずかなオーバーヘッドについても理解しておくことが望ましい。しかし、これらの考慮事項を差し引いても、AWRが提供する洞察は、データベースの安定稼働と性能向上にとって不可欠な価値を持つ。