共通情報モデル(キョウツウジョウホウモデル)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

共通情報モデル(キョウツウジョウホウモデル)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

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読み方

日本語表記

共通情報モデル (キョウツウジョウホウモデル)

英語表記

Common Information Model (コモンインフォメーションモデル)

用語解説

共通情報モデルとは、ITシステムを構成するさまざまなリソース、例えばサーバ、ネットワーク機器、ストレージ、アプリケーション、サービスといったものの情報を、ベンダーや技術の種類に依存せず、統一された方法で記述するための標準的な枠組みである。現代のIT環境は、多様なベンダーの製品やオープンソース技術が混在しており、それぞれの管理情報がばらばらの形式で提供されると、システム全体の管理が非常に複雑になるという課題を抱えている。共通情報モデルは、このような異種混在環境における管理情報を標準化し、一貫した視点でリソースを管理できるようにすることを目指して策定された。DMTF(Distributed Management Task Force)という標準化団体によって開発・維持されており、ITインフラ全体を対象とした情報モデルとして広く認識されている。これにより、管理アプリケーションが多様なITリソースから情報を取得し、相互運用性を高めるための共通言語を提供する役割を担う。

共通情報モデルはオブジェクト指向のアプローチを採用しており、管理対象のITリソースを「オブジェクト」として表現する。それぞれのオブジェクトは特定の「クラス」に属し、そのオブジェクトが持つ具体的な情報(属性)を「プロパティ」として定義する。さらに、異なるオブジェクト間の関係性を示す「関連付け」を定義することで、ITインフラ全体の構造や相互依存関係をモデル化できる。

共通情報モデルの核となるのは「CIMスキーマ」と呼ばれる情報の体系である。このスキーマは、管理対象のITリソースをどのように分類し、どのような情報を保持するか、またそれらの関係性をどのように表現するかを定義する。CIMスキーマは階層構造を持っており、大きく以下の3つのレベルで構成される。まず、最も抽象度が高い「コアモデル」は、全ての管理対象に共通するごく基本的な概念を定義する。次に、「共通モデル」は、特定の管理分野、例えばシステム、ネットワーク、アプリケーション、ストレージといった領域に共通する概念を定義する。例えば、システムモデルではコンピュータシステムやオペレーティングシステムに関するクラスが、ネットワークモデルではネットワークインターフェースやIPアドレスに関するクラスが定義される。最後に、「拡張モデル」は、特定のベンダー製品や技術に特化した詳細な概念を定義する。この階層構造により、共通情報モデルは汎用性と詳細さを両立させることが可能になっている。

共通情報モデルの具体的な利用には、通常、WBEM(Web-Based Enterprise Management)というアーキテクチャが用いられる。WBEMは、共通情報モデルで定義された情報をネットワーク経由でやり取りするための標準であり、管理アプリケーションが共通情報モデルに対応したエージェント(CIMOM: CIM Object Manager)と通信して情報を取得したり、設定を変更したりすることを可能にする。Windows環境におけるWMI(Windows Management Instrumentation)は、WBEMをベースにした共通情報モデルの実装の一つとして知られている。

共通情報モデルを導入することによって、多くのメリットがもたらされる。第一に、異種混在のIT環境において、管理ツールが特定のベンダーの製品に依存することなく、標準化された情報モデルを通じて様々なリソースの情報を一元的に取得・管理できるようになる。これにより、管理システムの開発コストを削減し、運用効率を大幅に向上させることができる。第二に、IT資産の構成情報を正確に把握し、変更管理やトラブルシューティングの迅速化にも寄与する。例えば、あるサーバの障害発生時に、そのサーバに接続されているストレージやネットワーク機器、稼働しているアプリケーションといった関連情報を共通情報モデルを通じて素早く特定できる。第三に、将来的に新しい技術や製品が導入された際にも、既存の共通情報モデルのスキーマを拡張することで容易に対応できるため、システムの柔軟性と拡張性が高まる。

共通情報モデルの考え方は、クラウド環境での仮想マシンの管理、データセンター内の物理サーバと仮想リソースの統合監視、ネットワーク機器の構成情報取得、ストレージ容量の利用状況管理など、多岐にわたるシステム管理の場面で活用されている。例えば、統合管理ツールがサーバ、ネットワーク機器、ストレージといった異なるデバイスから共通情報モデル形式で情報を収集し、それらを単一の管理画面で表示したり、自動化されたワークフローの判断材料としたりする場合がある。共通情報モデルは、現代の複雑なITインフラを効率的かつ効果的に管理するための重要な基盤技術の一つであると言える。

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