共通型システム (キョウツウガタシステム) とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

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共通型システム (キョウツウガタシステム) の読み方

日本語表記

共通型システム (キョウツウガタシステム)

英語表記

common type system (コモン タイプ システム)

共通型システム (キョウツウガタシステム) の意味や用語解説

共通型システムとは、企業内の複数の業務システムが共通して利用する機能やデータを、一つの独立したシステムとして集約・提供する設計思想、またはそのシステム自体を指す。従来、業務部門ごとに個別のシステムが開発されることが多く、結果として類似した機能が重複して作られたり、データが各システムに分散して連携できない状態、いわゆるサイロ化に陥ったりする問題があった。共通型システムは、このような非効率を解消し、システム開発と運用の全体最適化を目指すためのアプローチである。個別の要求ごとにシステムを構築する「個別型システム」と対比される概念であり、多くの企業でITガバナンスを強化し、経営資源を有効活用するために採用されている。 共通型システムを導入する主な目的は、開発・保守の効率化とコスト削減にある。例えば、顧客情報を管理する機能は、営業支援システム、販売管理システム、顧客サポートシステムなど、多くのシステムで必要とされる。個別型システムでは、これらのシステムそれぞれで顧客管理機能を開発する必要があり、開発工数やコストが重複してしまう。共通型システムでは、顧客情報を一元管理する「顧客マスタシステム」を構築し、各業務システムはAPI(Application Programming Interface)などを通じてこの共通システムを利用する。これにより、一度開発した機能を再利用できるため、個別の開発が不要となり、開発期間の短縮とコストの削減が実現できる。また、保守性も大幅に向上する。顧客情報の仕様に変更が生じた場合、共通の顧客マスタシステムを一箇所修正するだけで、それを利用する全てのシステムに修正内容が反映される。これにより、修正漏れのリスクが低減し、品質の均一化が図れるだけでなく、保守作業にかかる負担も軽減される。 次に、データの一元管理による活用促進も大きなメリットである。各システムが独自にデータを保持していると、データの重複や不整合が発生しやすくなる。例えば、ある顧客の住所が営業支援システムでは更新されているが、販売管理システムでは古いままといった事態が起こり得る。共通のマスタシステムでデータを一元管理することで、常に最新かつ正確なデータを全部門で共有でき、データの信頼性が向上する。さらに、一元化されたデータは、全社横断的なデータ分析や経営判断のための情報基盤として活用しやすくなる。これにより、データに基づいた意思決定を推進することが可能となる。 共通化される機能の代表例としては、認証・認可機能が挙げられる。多くのシステムで必要となるログイン処理や、ユーザーの役割に応じたアクセス権限の管理を共通の認証基盤システムに集約する。これにより、利用者は一度のログインで複数のシステムを利用できるシングルサインオン(SSO)を実現でき、利便性が向上する。システム管理者にとっても、ユーザーアカウントや権限の管理を一元化できるため、セキュリティ管理が容易になる。このほか、前述の顧客マスタや商品マスタといったマスタデータ管理機能、各システムの操作ログやエラーログを一元的に収集・管理するロギング機能、複数のサービスで利用される決済処理を担う決済システムなども共通化の対象となることが多い。共通型システムのアーキテクチャは、一般的に、共通の機能を提供する「共通基盤(プラットフォーム)」と、その上で動作する個別の「業務アプリケーション」という階層構造で構成される。業務アプリケーションは、共通基盤が提供する機能をAPIを介して呼び出すことで利用する。APIは、システム同士が機能やデータをやり取りするための明確な接続仕様であり、これを用いることで、業務アプリケーションは共通基盤の内部的な実装を意識することなく、必要なサービスを部品のように利用できる。 一方で、共通型システムにはデメリットや慎重に検討すべき点も存在する。第一に、共通システムの設計が複雑化しやすいという課題がある。多くの業務システムの要求を満たす汎用的な機能を設計する必要があるため、仕様が肥大化し、開発やテストの難易度が高くなる傾向がある。第二に、障害発生時の影響範囲が広範囲に及ぶリスクがある。認証基盤や顧客マスタといった中心的な共通システムに障害が発生すると、それに依存する全ての業務システムが停止する可能性がある。そのため、共通システムには非常に高い可用性と信頼性が求められ、冗長構成の採用など、相応のコストと技術が必要となる。さらに、共通化による柔軟性の低下も考慮しなければならない。全社標準の仕様を適用するため、特定の業務部門が持つ特殊な要件や、急な仕様変更に迅速に対応することが難しくなる場合がある。また、導入プロセスにおいては、関係する複数の部署やシステム開発チームとの間で、共通化する機能の範囲や仕様について合意を形成する必要があり、組織間の調整に多大な時間と労力がかかることもある。したがって、共通型システムを導入する際は、何でも共通化すれば良いというわけではなく、全社的なメリットと個別業務の効率性のバランスを考慮し、どの機能を共通化し、どの機能を個別システムに残すかを戦略的に判断することが極めて重要となる。

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