コンパイラ型言語 (コンパイラガタゲンゴ) とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

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コンパイラ型言語 (コンパイラガタゲンゴ) の読み方

日本語表記

コンパイラ型言語 (コンパイラガタゲンゴ)

英語表記

Compiled language (コンパイルド ランゲージ)

コンパイラ型言語 (コンパイラガタゲンゴ) の意味や用語解説

コンパイラ型言語は、プログラマが記述したソースコードを、コンピュータが直接理解できる機械語へと事前に一括変換(コンパイル)してから実行するタイプのプログラミング言語である。この変換作業を行うプログラムをコンパイラと呼ぶ。コンパイルによって生成された機械語の集合体は実行ファイルとなり、一度作成されれば、その環境上で単独で動作させることが可能となる。この事前変換のプロセスは、プログラムの実行速度や配布形態、開発のワークフローに大きな影響を与える。具体的には、コンパイル済みのプログラムは実行時に翻訳のオーバーヘッドがないため非常に高速に動作するという大きな利点を持つ一方で、ソースコードを変更するたびにコンパイルというステップを挟む必要があるため、開発サイクルの初期段階では反復的なテストに時間を要することがあるという特性を持つ。システムエンジニアを目指す上で、このコンパイラ型言語の基本的な概念を理解することは、プログラムの実行原理や性能特性、開発プロセスの違いを把握するための重要な第一歩となる。 コンパイラ型言語におけるプログラムの実行までの流れは、大きく分けていくつかの段階を踏む。まず、プログラマが特定のプログラミング言語の文法に従って記述したテキストファイルがソースコードである。このソースコードは、人間にとっては理解しやすい形式だが、CPUは直接理解できない。そこで、コンパイラが登場する。コンパイラは、このソースコードを解析し、プログラムの論理構造や文法的な正しさをチェックしながら、コンピュータが理解できる機械語命令の羅羅に変換する。この機械語命令の集合体は、通常、オブジェクトファイルという中間形式で出力される。一つのソースファイルが必ずしも一つの完全なプログラムになるわけではなく、複数のソースファイルからなる大規模なプログラムの場合、それぞれのソースファイルが個別にオブジェクトファイルに変換される。次に、リンカと呼ばれる別のツールが機能する。リンカは、生成された複数のオブジェクトファイルや、プログラムが利用する外部のライブラリ(例えば、ファイルの読み書きや画面表示などの共通機能を提供する部品群)を結合し、一つの完全な実行ファイルを生成する役割を担う。この実行ファイルは、オペレーティングシステムが直接ロードし、CPUが実行できる形式になっているため、コンパイルが完了すれば、ソースコードがなくてもプログラムを実行可能になる。 この事前コンパイルのプロセスは、プログラムの実行速度に絶大な影響を与える。インタプリタ型言語のようにプログラムの実行と同時に一行ずつ翻訳しながら実行する方式とは異なり、コンパイラ型言語では実行前にすべての翻訳が完了しているため、実行時に翻訳のための処理を一切必要としない。これにより、CPUはプログラムコードを中断なく高速に処理することが可能となる。また、コンパイラは単にソースコードを機械語に変換するだけでなく、生成される機械語がより効率的に動作するように最適化を行う機能も持つことが多い。例えば、冗長な計算の省略や、メモリへのアクセス回数の削減など、様々な手法を用いてプログラムの実行性能を向上させる。この最適化の度合いはコンパイラの性能や設定によって異なり、同じソースコードからでも異なる性能の実行ファイルが生成されることがある。 開発プロセスにおいては、コンパイルとリンクのステップが必須となるため、ソースコードを少し修正するたびに再コンパイルが必要となる。これは、開発初期の試行錯誤が多い段階では、変更、コンパイル、実行、テストというサイクルに時間がかかり、開発効率を低下させる要因となることもある。特に大規模なプロジェクトでは、コンパイル時間が数分から数十分、あるいはそれ以上になることも珍しくない。しかし、一度実行ファイルが生成されてしまえば、ユーザーはそのファイルを配布するだけでプログラムを利用できるため、配布のしやすさや実行環境への依存が少ないというメリットがある。このため、OS自体やデバイスドライバ、ゲームなどの性能が求められるアプリケーション、あるいは組み込みシステムなど、高い実行性能と安定性が要求される分野で広く利用されている。 メモリ管理の面では、C言語やC++などの伝統的なコンパイラ型言語の多くは、プログラマがメモリの確保と解放を明示的に行う必要がある。これにより、メモリを最大限に効率的に利用できる反面、プログラマがメモリの解放を忘れるとメモリリークと呼ばれる問題が発生したり、既に解放されたメモリ領域にアクセスしようとするとセグメンテーション違反などの深刻なエラーを引き起こしたりする可能性がある。しかし、Go言語やRust言語のような比較的新しいコンパイラ型言語では、ガベージコレクションによる自動メモリ管理(Go)や、所有権システムという独自の仕組み(Rust)によって、安全性を高めつつも、低レベルな制御を可能にするアプローチが取られているものもある。これにより、プログラマの負担を軽減しつつ、メモリ安全性の高いプログラム開発を支援している。 代表的なコンパイラ型言語には、システムプログラミングや組み込み開発で多用されるC言語、オブジェクト指向プログラミングの主要言語であるC++、高速な並行処理に強みを持つGo言語、メモリ安全性とパフォーマンスを両立させるRust言語などがある。Javaもソースコードを直接機械語にコンパイルするわけではないが、一度JVM(Java Virtual Machine)のバイトコードという中間コードにコンパイルされ、このバイトコードが実行時にJIT(Just-In-Time)コンパイラによって機械語に変換されるため、広義にはコンパイラ型言語に近い特性を持つと言える。これらの言語は、それぞれの特性を活かし、様々なシステムの基盤を支えている。システムエンジニアとしてキャリアを築く上で、コンパイラ型言語の仕組みを深く理解することは、高性能で信頼性の高いシステムを設計・実装するための不可欠な知識となるだろう。

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