ダークファイバー (ダークファイバー) とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

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ダークファイバー (ダークファイバー) の読み方

日本語表記

ダークファイバー (ダークファイバー)

英語表記

dark fiber (ダークファイバー)

ダークファイバー (ダークファイバー) の意味や用語解説

「ダークファイバー」とは、まだ光信号が送られておらず、つまり通信に使われていない状態の光ファイバーケーブルを指す。光信号が送られていないため「光っていない」、すなわち「暗い(ダーク)」という意味合いでこの名称が付けられている。これは、すでに通信サービスを提供するために光信号が流れている「ライトファイバー」と対比される概念である。通常、光ファイバーケーブルは一度敷設されると、その中に複数の光ファイバー心線が含まれている場合が多い。その中で、需要の増加を見越して予備として敷設されたり、あるいは通信事業者がインフラとして準備したものの、まだ利用されていない心線が存在する。ダークファイバーとは、まさにそのような未使用の光ファイバー心線を、通信事業者や企業が借り受けて利用する形態を指す。 ダークファイバーの利用は、特に高速・大容量の通信が不可欠な現代のITインフラにおいて、重要な選択肢の一つとなっている。その最大の特長は、光ファイバーケーブルそのものを借り受けるため、利用者が通信機器(光送受信装置、ルーター、スイッチなど)を自由に選定し、自社のニーズに合わせて柔軟なネットワークを構築できる点にある。通常のインターネットサービスプロバイダ(ISP)から提供される光回線サービスでは、利用可能な帯域幅や機器の種類がサービス提供者によって定められている。しかし、ダークファイバーの場合は、光ファイバーの物理的な経路を独占的に利用できるため、利用者は自身の設置する通信機器の性能次第で、事実上無限の帯域幅(通信速度)と、非常に低い遅延を実現することが可能となる。 この自由度の高さは、企業やデータセンター事業者にとって大きなメリットをもたらす。例えば、データセンター間で大量のデータを高速かつセキュアに転送する必要がある場合、ダークファイバーは理想的な選択肢となる。自社で機器を制御できるため、特定の通信プロトコルを利用したり、独自のセキュリティ対策を講じたりといった、カスタマイズ性の高いネットワークを構築できる。これにより、外部ネットワークからの影響を受けにくく、機密性の高いデータを扱う際に極めて高いセキュリティレベルを確保できる。 また、長期的な視点で見ると、コスト削減にも寄与する場合がある。初期投資として光送受信装置などの通信機器の購入費用は発生するが、一度導入してしまえば、月々の費用は光ファイバーのレンタル料と電力費用、および機器の保守費用が主となる。一般的な通信サービスのようにデータ量に応じた課金や、帯域幅に応じた高額な月額料金が発生しないため、特に大容量の通信を恒常的に行う企業にとっては、運用コストを大幅に削減できる可能性がある。さらに、将来的に通信需要が増加した場合でも、機器のアップグレードを行うだけで対応できるため、インフラの再構築に伴う大規模なコストや労力を抑えることができる。 一方で、ダークファイバーの利用にはいくつかの課題も存在する。最も大きな点としては、自社で通信機器の選定、導入、設定、そして運用・保守まで全てを行う必要がある点が挙げられる。これは、システムエンジニアとしての高度な専門知識と技術力を要求されることを意味する。通信機器の障害発生時には自社で迅速に対応する必要があり、適切なスキルを持った人員がいない場合は、外部の専門業者に依頼することになるため、その分のコストも考慮に入れる必要がある。また、ダークファイバーはあくまで光ファイバーケーブルそのものを借り受ける形態であるため、敷設されている区間が限定される場合がある。特に利用したい地点間にダークファイバーが敷設されていない場合は、新規に敷設するコストと時間がかかるか、利用自体が困難になる可能性も存在する。 ダークファイバーの具体的な利用例としては、まずデータセンター間接続が挙げられる。複数のデータセンターを持つ企業やクラウドサービスプロバイダは、膨大なデータを高速でやり取りする必要があるため、自社でダークファイバーを利用し、広帯域で低遅延の専用ネットワークを構築している。次に、企業の拠点間接続も多い。本社と支社、工場間などで、基幹システムやCADデータなど大容量の情報をセキュアに共有するために利用される。さらに、放送局や証券会社など、リアルタイム性と信頼性が極めて重要視される業界においても、ダークファイバーは重要なインフラとして活用されている。近年では、5G移動通信システムにおける基地局とコアネットワークを結ぶバックホール回線や、エッジコンピューティングの基盤としてもその活用が期待されている。 日本においては、NTT東日本・西日本などが保有する通信回線の一部を、他事業者がダークファイバーとして利用できる仕組みが整備されている。これは「光コラボレーションモデル」とは異なり、あくまで物理的な光ファイバーを賃貸するものである。総務省の指導の下、通信インフラの有効活用と競争促進のために提供されており、これにより多くの企業が自社ネットワークの自由な構築と運用を実現している。ダークファイバーは、単なる通信手段としてだけでなく、デジタル社会を支える基盤としての役割を担い、システムエンジニアがネットワークインフラを設計・構築する上で理解しておくべき重要な概念の一つであると言える。

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