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DPCM(ディーピーシーエム)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

DPCM(ディーピーシーエム)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

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読み方

日本語表記

差分パルス符号変調 (サブンパルスゴウヘンチョウ)

英語表記

Differential Pulse-Code Modulation (ディファレンシャル・パルス・コード・モジュレーション)

用語解説

「DPCM」とは、Differential Pulse Code Modulation(差分パルス符号変調)の略称であり、デジタル信号処理においてデータ圧縮を実現するための符号化手法の一つである。特に音声や画像のような連続したデータにおいて、その前後のデータ間に存在する高い相関性(冗長性)を利用して、データ量を削減することを目的としている。これにより、限られた帯域幅の通信路で効率的にデータを伝送したり、ストレージ容量を節約したりすることが可能となる。

デジタル信号の基本的な符号化方式として、パルス符号変調(PCM: Pulse Code Modulation)がある。PCMはアナログ信号を一定時間間隔で標本化し、それぞれの標本値を離散的なレベルに量子化し、その量子化された値を二進数で符号化する方式である。非常に高音質で元の信号を再現できる利点がある一方で、標本値そのものを符号化するため、データ量が大きくなるという課題を抱えている。例えば、ある瞬間の標本値が「100」だったとして、次の瞬間の標本値が「101」、その次が「102」といったように、連続する標本値がわずかしか変化しない場合が多い。PCMではこれらの値すべてを個別に符号化するため、変化の少ない部分でも多くのビットを消費してしまう。

DPCMはこのPCMの課題を解決するために考案された。DPCMの基本的な考え方は、現在の標本値そのものを符号化するのではなく、現在の標本値と予測される標本値との「差分」を符号化するという点にある。音声や画像のような信号は、時間的または空間的に連続する標本値が大きく変動することは少なく、多くの場合、直前の標本値に近い値を取る。この性質を利用し、予測器を用いて直前の標本値、または過去の複数の標本値から現在の標本値を予測する。そして、実際の現在の標本値とこの予測値との差分を計算する。この差分信号は、元の標本値に比べて値の範囲が小さくなる傾向があるため、より少ないビット数で量子化し、符号化することが可能となる。これがDPCMによるデータ圧縮のメカニズムである。

DPCMのエンコーダ側では、まずアナログ信号を標本化したデジタル信号が入力される。この信号は、予測器に入力され、同時に予測器からの出力である予測値との差分を計算する減算器にも入力される。予測器は過去の標本値(またはその復元値)を利用して、現在の標本値を推定する。例えば、最も単純な予測器は直前の標本値をそのまま現在の標本値の予測値とする。実際の現在の標本値と予測値との差分が求められ、この差分信号は量子化器に入力される。量子化器は差分信号を離散的な値に変換するが、差分信号の振幅が小さいため、PCMで元の標本値を量子化する場合よりも少ないビット数で効率的に表現できる。量子化された差分信号は符号化され、伝送路を通じて送信される。また、重要な点として、この量子化された差分信号はデコーダ側で元の信号を復元するために使われるだけでなく、エンコーダ側の予測器にもフィードバックされる。これにより、予測器は常に復元された信号(またはそれに近い信号)に基づいて次の予測を行うことができ、予測誤差の蓄積を防ぎ、安定した予測性能を維持する。具体的には、予測値に量子化された差分信号を加算することで、元の標本値に近い値(復元値)を得て、これを次の予測の基準とする。

デコーダ側では、エンコーダから送信された量子化された差分信号を受信する。デコーダもエンコーダと同じ予測器を内蔵しており、過去に復元された標本値(または初期値)に基づいて、現在の標本値を予測する。受信した差分信号とこの予測値を加算することで、元の標本値に近い信号を復元する。このようにして復元された信号は、次の予測の基準として予測器にフィードバックされる。この一連のプロセスにより、受信側で元の信号が再構築される。

DPCMの主な利点は、そのデータ圧縮効率の高さにある。PCMと比較して、伝送に必要なビットレートを大幅に削減できるため、通信帯域の節約やストレージ容量の削減に貢献する。特に、信号に高い相関性がある場合にその効果は顕著である。これにより、限られた資源を有効活用できる。

一方で、DPCMにはいくつかの欠点も存在する。第一に、予測器の性能が圧縮効率と復元信号の品質に大きく影響する。信号の性質が大きく変化するような場面では、固定的な予測器では十分な性能を発揮できない場合がある。第二に、量子化誤差が完全にゼロではないため、復元信号には常に何らかの誤差が含まれる。また、エンコーダ側の予測器に量子化された差分信号がフィードバックされることで誤差の累積は抑制されるものの、予測誤差や伝送エラーが発生した場合、それがデコーダ側で伝播してしまう可能性も存在する。

DPCMは、そのシンプルな原理と高い圧縮効率から、初期のデジタル音声通信システム、特に電話回線における音声符号化に広く適用されてきた。さらに、DPCMの概念を拡張した適応差分パルス符号変調(ADPCM: Adaptive DPCM)も開発された。ADPCMは、信号の統計的特性に応じて予測器の係数や量子化ステップサイズを動的に変化させることで、より高い圧縮効率と音質を実現する。このADPCMは、狭帯域の音声通信やマルチメディア圧縮の分野で広く利用された実績を持つ。画像圧縮においても、JPEGなどの画像フォーマットで、より効率的な圧縮を行うための前処理としてDPCMの考え方が応用されている。

DPCMは、デジタル信号処理の基礎をなす重要な技術であり、その後のより高度な圧縮技術の発展に大きな影響を与えた。連続するデータ間の冗長性を巧みに利用するという基本的な思想は、現代の様々なデータ圧縮アルゴリズムにも通じるものである。

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