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GARP(ギャープ)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

GARP(ギャープ)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

作成日: 更新日:

読み方

日本語表記

ガープ (ガープ)

英語表記

GARP (ギャープ)

用語解説

GARPは、Generalized Architecture for Resource Pre-Commitmentの略であり、分散システムにおいて複数のリソースが関与するトランザクション処理の原子性、すなわち「すべて成功するか、すべて失敗するか」というアトミック性を保証するための汎用的なアーキテクチャおよび概念を指す。現代のITシステムは、単一のサーバー上で完結するものが少なく、複数のデータベース、アプリケーション、マイクロサービス、クラウドサービスなどが連携し合って一つのビジネスプロセスを形成する分散環境が主流となっている。このような環境において、データの一貫性や信頼性を維持するためには、各リソースが互いに協調し、トランザクションが確実に完了するか、または完全にキャンセルされることを保証する仕組みが不可欠であり、GARPはその根幹をなす考え方である。システムエンジニアを目指す者にとって、分散システムにおけるデータ整合性の重要性を理解し、それを実現するための基礎概念としてGARPを把握することは非常に重要となる。

詳細にGARPの概念を掘り下げると、その中心にあるのは「リソースの事前予約(Pre-Commitment)」という考え方である。これは、トランザクションに参加する各リソースが、最終的なコミット(変更の確定)またはアボート(変更の破棄)の決定が下される前に、自身の担当する処理が完了する準備が整っていることを、トランザクションを管理するコーディネーターに対して表明するプロセスを意味する。具体的には、トランザクションが実行され、各リソースに対する変更が仮適用された後、コーディネーターは各リソースマネージャー(データベースシステムなど)に対し、「このトランザクションをコミットしてもよいか」という問い合わせを行う。これに対し、リソースマネージャーは、仮適用された変更を永続化可能な状態(例えば、ログファイルに書き込み、障害発生時にも回復可能な状態)にし、その準備が完了したことをコーディネーターに通知する。この「準備完了」状態こそが、リソースの事前予約の実態であり、万が一コーディネーターがコミットを指示した場合でも、確実に変更を確定できることを保証する。

GARPの理念は、主に分散トランザクションプロトコルとして広く知られる二相コミット(2PC)や三相コミット(3PC)などの実装によって具現化される。特に2PCは、以下の二つのフェーズで構成され、GARPの事前予約の考え方を明確に示している。

第一フェーズは「準備フェーズ(Prepare Phase)」である。このフェーズでは、トランザクションのコーディネーターが、トランザクションに参加するすべてのリソースマネージャーに対して、トランザクションの準備を要求するメッセージを送信する。これを受け取った各リソースマネージャーは、自身のリソースに対するトランザクションの変更内容を一時的に適用し、その変更がコミット可能であるか(制約違反がないか、必要なリソースが確保できるかなど)を検証する。検証が成功し、いつでもコミットまたはアボートができる状態になった場合、リソースマネージャーはディスクなど永続的なストレージに、そのトランザクションに関する準備完了の情報を記録し、「Yes」(準備完了)の応答をコーディネーターに返す。もし何らかの理由で準備ができない場合は、「No」(準備失敗)を応答する。この「Yes」を返す状態が、GARPにおけるリソースの事前予約が完了した状態に相当する。リソースマネージャーはこの時点で、もはやトランザクションを自身でアボートすることはできず、コーディネーターからの最終指示を待つ「インダウト(in-doubt)」状態となる。

第二フェーズは「コミットフェーズ(Commit Phase)」である。コーディネーターは、準備フェーズで受け取ったすべての応答を評価する。もしすべてのリソースマネージャーから「Yes」の応答を受け取った場合、コーディネーターはトランザクションのコミットを決定し、各リソースマネージャーにコミットを指示するメッセージを送信する。これを受け取ったリソースマネージャーは、事前に予約していた変更内容を正式に確定させ、リソースを永続的に更新する。その後、コミット完了の応答をコーディネーターに返す。一方、もし一つでも「No」の応答があった場合、または準備フェーズ中にいずれかのリソースマネージャーからの応答がタイムアウトした場合、コーディネーターはトランザクションのアボートを決定する。そして、すべてのリソースマネージャーにアボートを指示するメッセージを送信する。リソースマネージャーは、仮適用していた変更を破棄し、トランザクション開始前の状態にロールバックする。これにより、分散システム全体として、トランザクションが完全に成功するか、完全に失敗するかのどちらかの状態に収束し、データの一貫性が保たれる。

GARPの概念をさらに発展させたものに三相コミット(3PC)がある。これは2PCが持つ、コーディネーターが障害を起こした場合にトランザクションが宙に浮き、リソースマネージャーが永遠にブロックされる可能性があるという課題(ブロッキング問題)を軽減するために考案されたプロトコルである。3PCでは、準備フェーズとコミットフェーズの間に「プリコミットフェーズ」と呼ばれる中間フェーズを設けることで、より多くの状況でシステムが進行できるように設計されている。GARPは、これらのプロトコルを通じて、分散システムにおける複雑なデータ整合性の問題を解決しようとする基盤的な思想であり、その理解は分散システムの設計や運用において不可欠である。

GARPに基づく分散トランザクションプロトコルは、アトミック性を保証するという大きな利点を持つ一方で、いくつかの課題も抱えている。まず、複数のシステム間での通信と同期が必要となるため、単一システムでのトランザクションに比べて処理のオーバーヘッドが大きく、パフォーマンスの低下を招く可能性がある。また、プロトコルが複雑であるため、実装やデバッグが難しく、システムの複雑性を増大させる。特に、分散システム全体でのコミットまたはアボートを調整するコーディネーターの信頼性が重要となり、コーディネーターが障害を起こした場合の対応策も考慮する必要がある。これらの課題があるため、すべての分散トランザクションにGARPに基づく厳密なプロトコルを適用するのではなく、システムの要件に応じて、最終的な整合性(Eventual Consistency)などの異なる整合性モデルを選択する場合もある。しかし、金融取引のように厳密なアトミック性が要求される領域では、GARPの思想に基づいたトランザクションプロトコルが不可欠となる。システムエンジニアは、これらの利点と課題を理解し、適切な場面でGARPの考え方を適用できる能力が求められる。

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