ICP(アイシーピー)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

ICP(アイシーピー)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

作成日: 更新日:

読み方

日本語表記

インターネット・コンテンツ・プロバイダ (インターネットコンテンツプロバイダ)

英語表記

ICP (アイシーピー)

用語解説

ICPは、ITの分野において文脈に応じて複数の異なる意味で用いられる略語である。システムエンジニアが業務で遭遇する可能性が高いものとして、主に二つの意味が存在する。一つは、ネットワーク技術における「Internet Cache Protocol」であり、プロキシサーバー間でのキャッシュ情報の効率的な交換を目的としたプロトコルである。もう一つは、特に中国におけるインターネットビジネスに関連する「Internet Content Provider」の略語で、これは中国国内でウェブサイトを運営するために必要なライセンス制度を指す。これらは全く異なる概念であるため、どちらの意味で使われているかを文脈から正しく判断する必要がある。本稿では、これら二つのICPについて、それぞれの概要と詳細を解説する。

まず、Internet Cache Protocolについて詳述する。このプロトコルは、Webアクセスの高速化とネットワーク帯域の節約を目的として設計された。インターネット上のコンテンツは、ユーザーがアクセスするたびに元のサーバー、すなわちオリジンサーバーからデータを取得すると、応答に時間がかかり、ネットワークにも大きな負荷がかかる。この問題を解決するために、ユーザーの近くに設置されたプロキシサーバーが一度取得したコンテンツを一時的に保存(キャッシュ)しておく仕組みが広く利用されている。ICPは、このプロキシサーバーが複数存在し、階層的または連携して動作する環境で特に重要な役割を担う。具体的には、あるプロキシサーバーがユーザーから特定コンテンツへのリクエストを受け取った際に、まず自身のキャッシュ内にデータが存在するかを確認する。もし存在しない場合、そのリクエストを直接オリジンサーバーへ送るのではなく、近隣で連携している他のプロキシサーバー群に対して、「そのコンテンツのキャッシュを持っているか」と問い合わせを行う。この問い合わせに使われるのがICPである。ICPによる問い合わせは「ICPクエリ」と呼ばれ、問い合わせを受けた側のプロキシサーバーは、キャッシュを持っていれば「ICPヒット」、持っていなければ「ICPミス」という応答を返す。もしICPヒットの応答があれば、リクエスト元のプロキシは、その応答を返したプロキシからコンテンツを取得する。これにより、地理的により近く、ネットワーク的に高速な経路でデータを取得できるため、ユーザーへの応答時間を短縮できる。すべての近隣プロキシがICPミスを返した場合に初めて、より上位のプロキシやオリジンサーバーへリクエストを転送することになる。このように、ICPはプロキシサーバー群が協調して最適なキャッシュ源を見つけ出すための通信規約であり、ネットワーク全体のトラフィックを最適化し、ユーザーの体感速度を向上させるための基盤技術の一つである。近年では、より高度で大規模なキャッシュ配信技術であるCDN(Content Delivery Network)が主流となっているが、分散環境におけるキャッシュ連携というICPの基本的な考え方は、現代のネットワーク技術を理解する上でも依然として重要である。

次に、Internet Content ProviderとしてのICPについて解説する。これは特定の技術プロトコルを指すのではなく、中華人民共和国におけるインターネット上の情報提供に関する許可制度、通称「ICPライセンス」を指す場合がほとんどである。中国政府は、国内のインターネット環境を独自の法律に基づいて管理・監督しており、中国本土内にサーバーを設置してウェブサイトやオンラインアプリケーションを公開・運営するためには、このICPライセンスの取得が法律で義務付けられている。この制度は、中国国内のインターネットコンテンツを政府の管理下に置くことを目的としている。ICPライセンスには、大きく分けて二つの種類が存在する。一つは「ICP備案(ICP Beian)」と呼ばれるもので、非営利目的のウェブサイトに適用される登録・届出制度である。企業の公式情報サイトや個人ブログなど、直接的な収益を発生させないサイトが対象となる。もう一つは「ICP経営許可証(ICP Zheng)」であり、Eコマースサイトや有料コンテンツ配信、オンラインゲームなど、営利目的の活動を行うウェブサイトやサービスに必要となる、より取得難易度の高い許可証である。これらのライセンスを取得するためには、中国国内で登記された法人であることや、中国国内のデータセンターでホスティングされたサーバーを利用することなど、厳しい要件が課せられている。システムエンジニアにとってこのICPライセンスが重要となるのは、中国市場をターゲットとしたシステム開発やインフラ構築に携わる場合である。プロジェクトの計画段階でICPライセンスの取得が前提条件となり、サーバーの設置場所やドメインの選定、さらにはアプリケーションの仕様にも影響を及ぼす。ライセンスを取得せずにウェブサイトを公開すると、中国国内からのアクセスが遮断されるペナルティが科されるため、中国向けのビジネス展開を考える上で、この制度の理解は不可欠である。技術的な問題だけでなく、こうした法規制に関する知識も、グローバルな案件に対応するシステムエンジニアには求められる重要なスキルの一つと言える。

関連コンテンツ

ICP(アイシーピー)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説 | いっしー@Webエンジニア