IEEE 1284(アイ・トリプル・イー・ワン・ツー・エイト・フォー)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説
IEEE 1284(アイ・トリプル・イー・ワン・ツー・エイト・フォー)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。
読み方
日本語表記
アイ・イー・イー・イー・いちにーよん (アイ・イー・イー・イー・イチニーヨン)
英語表記
IEEE 1284 (アイ・イー・イー・イー・イチニ・ヨン・ハ)
用語解説
IEEE 1284は、コンピュータとプリンターなどの周辺機器を接続するためのパラレルポートに関する国際標準規格である。IEEE(米国電気電子学会)によって1994年に策定された。この規格が登場する以前、パラレルポートの接続仕様は「セントロニクス仕様」が事実上の標準であったが、メーカーごとに独自の拡張が加えられ、互換性の問題やデータ転送速度の限界が課題となっていた。IEEE 1284はこれらの問題を解決し、高速で信頼性の高い双方向通信を実現することを目的として標準化された。主にプリンターとの接続に用いられたが、スキャナーや外付けストレージデバイスなど、他の周辺機器にも利用範囲が拡大した。しかし、後発のUSB(Universal Serial Bus)が持つ利便性や高速性から、2000年代以降は急速にUSBに取って代わられ、現在ではほとんど使用されることのないレガシーインターフェースとなっている。
IEEE 1284規格の核心は、複数の通信モードを定義し、接続された機器同士が最適なモードを自動的に選択する仕組みを取り入れた点にある。この規格では、大きく分けて5つの通信モードが規定されている。第一に「コンパチビリティモード」であり、これは従来のセントロニクス仕様に準拠した基本的なデータ転送モードである。主にコンピュータから周辺機器への一方向のデータ送信に使われ、後方互換性を確保する役割を担う。SPP(Standard Parallel Port)とも呼ばれる。第二に「ニブルモード」で、これは周辺機器からコンピュータへ4ビット単位でデータを送り返すことを可能にする、簡易的な双方向通信モードである。プリンターがインク残量や紙切れといったステータス情報をコンピュータに伝えるために利用された。第三の「バイトモード」は、8ビット単位で周辺機器からコンピュータへデータを送信するモードで、ニブルモードよりも高速だが、対応するハードウェアが限られていた。
第四のモードは「EPP(Enhanced Parallel Port)」である。これは高速な双方向通信を実現するために設計されたモードで、CPUの介在を最小限に抑え、ハードウェアレベルでデータ転送の制御を行うことで、コンパチビリティモードに比べて大幅な速度向上を実現した。プリンターだけでなく、より高速なデータ転送を必要とするスキャナーや外付けCD-ROMドライブなどで活用された。そして第五のモードが「ECP(Extended Capabilities Port)」である。これはIEEE 1284で定義された中で最も高性能なモードであり、DMA(Direct Memory Access)転送をサポートする点が最大の特徴である。DMAを利用することで、CPUを介さずにメインメモリと周辺機器が直接データをやり取りできるため、CPUの負荷を大幅に軽減し、システムの全体的なパフォーマンスを向上させることが可能となる。さらに、データ圧縮機能も備えており、特に大量の印刷データを効率的に転送する際に効果を発揮した。
これらの多様なモードを円滑に利用するため、IEEE 1284は「ネゴシエーション」という手順を定めている。これは、コンピュータと周辺機器が接続された際に、互いがサポートしている通信モードを確認し合い、両者が対応可能な最も高速なモードを自動的に選択して通信を開始する仕組みである。このネゴシエーションにより、利用者は特別な設定をすることなく、機器の性能を最大限に引き出すことができた。
物理的な仕様に関しても、IEEE 1284はコネクタ形状とケーブルの品質を明確に規定した。コンピュータ側には「DB-25」と呼ばれる25ピンのコネクタ(Type Aコネクタ)が、周辺機器(主にプリンター)側には「セントロニクス36ピン」と呼ばれる大型のコネクタ(Type Bコネクタ)が一般的に使用された。また、高速通信時の信号劣化やノイズを防ぐため、ケーブルにはツイストペア構造や適切なシールド処理を施すことが定められ、信頼性の高いデータ転送が保証された。
このように、IEEE 1284はパラレルポートの性能と互換性を飛躍的に向上させた重要な規格であった。しかし、コネクタが大きく物理的なスペースを要すること、コンピュータの電源が入った状態での抜き差し(ホットプラグ)が推奨されないこと、そして何よりも後発のUSB規格が、より小型なコネクタ、ホットプラグ対応、電源供給機能、高い転送速度といった多くの利点を持っていたことから、次第にその役割を終えることになった。現代のシステム開発においてIEEE 1284を直接扱う機会は稀だが、コンピュータのインターフェース技術の進化を理解する上で重要な知識の一つである。