inddファイル(インディデザインファイル)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

inddファイル(インディデザインファイル)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

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読み方

日本語表記

インデザインファイル (インデザインファイル)

英語表記

indd file (インディデザインファイル)

用語解説

inddファイルとは、アドビ株式会社が開発・販売するDTPソフトウェア「Adobe InDesign」で作成・保存される標準のファイル形式である。拡張子は「.indd」となる。このファイルは、書籍、雑誌、新聞、カタログ、パンフレットといった多ページにわたる印刷物のレイアウトデザインや、インタラクティブPDF、EPUB形式の電子書籍などのデジタルコンテンツの制作において、中心的な役割を果たす作業用ファイルとして位置づけられる。テキスト、画像、図形といった複数の要素をページ上に精密に配置し、それらの書式や相互関係を定義するためのすべての情報が記録されている。言い換えれば、最終的な印刷物やデジタルコンテンツを生成するための「設計図」や「マスターデータ」に相当するものであり、デザインの制作過程で編集や修正を行うためのファイルである。そのため、印刷会社への入稿データや、エンドユーザーが閲覧する最終成果物として直接配布されることは通常ない。最終成果物は、inddファイルからPDFやEPUBといった、環境に依存せず表示が固定される形式に書き出すことで生成される。

inddファイルの詳細な特徴として、最も重要な概念の一つに「リンク」がある。これは、ファイル内に配置される画像データの扱い方に関連する。InDesignでは、高解像度の画像ファイルをinddファイル内部に直接埋め込むのではなく、外部にある元画像ファイルへの参照情報(パス)を保持する方式を標準としている。このリンク方式には複数の利点が存在する。第一に、inddファイル自体のファイルサイズを比較的小さく保つことができる。数十、数百ページにわたるカタログなどでは大量の画像が使用されるため、すべてを埋め込むとファイルが非常に重くなり、ソフトウェアの動作が遅くなる原因となるが、リンク方式であればそれを回避できる。第二に、デザイン作業の効率化に寄与する。例えば、リンクされている元の画像ファイルをPhotoshopなどの画像編集ソフトで修正・保存すると、その変更はInDesign上のレイアウトに自動的に反映される。これにより、デザイナーと画像編集者が並行して作業を進めることが可能になる。システム開発における外部ライブラリやモジュールを参照する考え方に似ており、本体のファイルはあくまで全体の構成と参照情報を管理する役割に徹する。ただし、このリンク方式は、inddファイルと参照先の画像ファイルをセットで管理する必要があることを意味する。ファイルの受け渡しを行う際にinddファイルだけを渡してしまうと、画像が表示されない「リンク切れ」という問題が発生する。この問題を解決するため、InDesignには「パッケージ」という機能が備わっている。これは、使用されているinddファイル、リンクされているすべての画像ファイル、そして使用されたフォント情報を一つのフォルダに自動的に収集する機能であり、データの破損や欠落なく他者へ共有したり、プロジェクトを保管したりする際に不可欠なものである。

もう一つの重要な側面は、バージョン間の互換性である。inddファイルはバイナリ形式であり、InDesignのバージョンに強く依存する。原則として、新しいバージョンのInDesignで作成・保存されたinddファイルは、それより古いバージョンのInDesignで開くことはできない。この非互換性は、共同作業やクライアントとのデータ共有において問題となることがある。この課題を解決するために用意されているのが「IDML(InDesign Markup Language)」というファイル形式である。IDMLは、inddファイルが持つレイアウト、テキスト、オブジェクト、スタイルといったすべての構造情報をXMLベースのテキスト形式で記述した中間ファイルであり、拡張子は「.idml」となる。IDML形式で書き出すことにより、InDesignのバージョンに依存しないデータの交換が可能になる。古いバージョンのInDesignでもIDMLファイルを開くことができ、開く際にそのバージョンのinddファイル形式に変換される。IDMLはテキストベースであるため、構造を解析しやすく、プログラムによる自動処理にも適している。例えば、データベース上の製品情報を元に、プログラムでIDMLファイルを動的に生成し、それをInDesignで開いてカタログを自動生成する、といった「自動組版システム」の構築にも利用される。システムエンジニアが直接inddファイルを編集する機会は少ないかもしれないが、このようなコンテンツ管理システムとDTPワークフローを連携させるシステム開発においては、IDMLの構造を理解していることが求められる場面がある。inddファイルは単なるデザインファイルではなく、構造化されたコンテンツを保持し、外部リソースと連携する、高度な機能を持つプロジェクトファイルなのである。

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