インターネット分離(インターネットブンリ)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

インターネット分離(インターネットブンリ)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

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読み方

日本語表記

インターネット分離 (インターネットブンリ)

英語表記

Internet Isolation (インターネットアイソレーション)

用語解説

インターネット分離とは、組織内の情報システムを、インターネットに接続するネットワークと、組織内部の重要な情報を取り扱うネットワークとに分けて運用するセキュリティ対策である。これは、サイバー攻撃の脅威から機密情報や基幹システムを保護することを主な目的としている。昨今の巧妙化するサイバー攻撃、特に標的型攻撃やランサムウェアなどの脅威から組織を守るために、官公庁、金融機関、重要インフラ事業者、そして一般企業においても導入が進められている。インターネットに接続する経路を限定し、重要なシステムから隔離することで、外部からの不正アクセスやマルウェア感染のリスクを大幅に低減させる効果が期待される。

インターネット分離の基本的な考え方は、外部からの脅威が内部ネットワークに侵入する経路を物理的または論理的に遮断することにある。これにより、たとえインターネット経由でマルウェアに感染したとしても、その影響を限定的な範囲に抑え込み、組織の中核をなすシステムやデータへの被害を防ぐことができる。

この対策には大きく分けて二つの方式が存在する。一つは「物理分離」であり、もう一つは「論理分離」である。

物理分離は、最も厳格なセキュリティレベルを実現する方式である。これは、インターネット接続用の端末とネットワーク、そして内部業務用の端末とネットワークを完全に別々に用意し、物理的に分離して運用する方法を指す。例えば、インターネット閲覧専用のパソコンと、社内システムにのみ接続する業務用のパソコンをそれぞれ別の机に置き、異なるネットワークケーブルに接続するといったイメージである。この方式の最大のメリットは、ネットワーク間の情報漏洩やマルウェアの横展開のリスクを極めて低く抑えられる点にある。しかし、利用者は二台のパソコンを使い分ける必要があり、操作の煩雑さや導入コスト、運用コストが増大するというデメリットも伴う。

一方、論理分離は、仮想化技術などを活用し、一台の端末上でインターネット接続環境と内部業務環境を分離して実現する方式である。物理分離に比べて利便性が高く、コストを抑えられる場合が多い。論理分離にはいくつかの具体的なアプローチがある。

まず、「デスクトップ仮想化(VDI: Virtual Desktop Infrastructure)」は、利用者が手元の端末から、サーバ上で稼働する仮想デスクトップ環境にアクセスして業務を行う方式である。インターネット接続が必要な作業はインターネット接続用の仮想デスクトップで行い、内部業務は内部ネットワーク接続用の仮想デスクトップで行うことで、それぞれの環境が論理的に分離される。これにより、利用者の端末自体にデータが残りにくく、セキュリティと管理性を高めることができる。

次に、「ブラウザ分離」も主要な論理分離の手法の一つである。これは、Webブラウザの実行環境をインターネットから隔離されたサーバ上で稼働させ、その画面情報だけを利用者の端末に転送する方式である。利用者の端末では、Webブラウザそのものが直接インターネットに接続するわけではないため、悪意のあるWebサイトからの攻撃やダウンロード型マルウェアのリスクを大幅に軽減できる。このブラウザ分離には、「リモートブラウザ分離」と「コンテナ型ブラウザ分離」といった方式がある。リモートブラウザ分離は、インターネット接続用のブラウザをデータセンターなどのサーバ上で実行し、その画面情報のみを端末に転送する方式である。コンテナ型ブラウザ分離は、利用者の端末上でWebブラウザを軽量な仮想環境(コンテナ)の中で実行し、そのコンテナを使い捨てにすることで、万が一マルウェアに感染しても、影響を局所化し、ブラウザを終了すれば元のクリーンな状態に戻すことができる。

また、インターネット分離環境下でのデータ連携は重要な課題となる。インターネット側でダウンロードしたファイルを業務側のネットワークに持ち込む必要がある場合、直接転送すると分離の意味がなくなるため、「ファイル無害化」の仕組みが利用される。これは、ファイルの危険な要素(マクロ、埋め込みオブジェクトなど)を除去し、安全な状態にしてから内部ネットワークに転送する技術である。さらに、データ受け渡し専用のシステムや、二重入力によってデータを転記するといった運用が行われることもある。

インターネット分離の導入は、利用者にとって操作の習熟が必要となる場合があり、初期のトレーニングや継続的なサポートが不可欠である。また、システム全体の設計変更や新たな機器の導入、既存システムとの連携など、複雑なプロジェクトとなることが多い。そのため、セキュリティレベルと利便性、そしてコストのバランスを慎重に検討し、組織のニーズに合った最適な方式を選択することが重要となる。

現代のサイバーセキュリティ対策において、インターネット分離は、情報資産を守るための基本的な防御策の一つとして位置付けられている。外部からの脅威を遮断するだけでなく、万が一の侵入を想定した多層防御の一環としてもその価値は高く、今後もその重要性は増していくと考えられる。