IRM(アイアールエム)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説
IRM(アイアールエム)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。
読み方
日本語表記
情報権利管理 (ジョウホウケンリモミチ)
英語表記
IRM (アイアールエム)
用語解説
IRMはInformation Rights Managementの略称であり、日本語では「情報権限管理」と訳される。これは、企業や組織が保有する文書ファイルや電子メールといったデジタル情報資産を、不正なアクセスや意図しない情報漏洩から保護するためのセキュリティ技術である。従来のセキュリティ対策として、ファイルサーバーのフォルダごとにアクセスできるユーザーを制限するアクセス制御が一般的であった。しかし、この方法では、一度ファイルがダウンロードされたり、メールに添付されて外部に送信されたりすると、その先の管理が不可能になるという課題があった。IRMは、この課題を解決するために開発された技術であり、ファイルそのものにアクセス権限や操作制限といった保護設定を埋め込む点が最大の特徴である。これにより、ファイルがどこに移動しても、例えばUSBメモリで持ち出されたり、クラウドストレージにアップロードされたりしても、設定された保護が継続的に機能する。具体的には、「誰が」「どのファイルに対して」「どのような操作(閲覧、編集、印刷、コピーなど)を」「いつまで」行えるかといった非常に細かい制御を実現し、機密情報の漏洩リスクを大幅に低減させることが可能となる。
IRMの根幹をなす技術は暗号化である。IRMによって保護されたファイルは、強力な暗号化アルゴリズムによって内容が秘匿されている。このファイルを扱うためには、復号するための鍵と、操作を許可する権利情報が必要になる。これらの鍵や権利情報を管理し、正規のユーザーにのみ提供するのがIRMサーバーの役割である。ユーザーが保護されたファイルを開こうとすると、まずクライアントPCにインストールされたIRM対応ソフトウェアがIRMサーバーに問い合わせを行う。サーバーは、アクセスしてきたユーザーを認証し、そのユーザーがあらかじめ設定されたポリシーに基づいてファイルへのアクセス権を持っているかを確認する。権限が認められると、サーバーは復号鍵と操作権限を定義した「ライセンス」を発行する。クライアントソフトウェアはこのライセンスを受け取り、記載された権限の範囲内でのみファイルの復号と操作をユーザーに許可する。例えば、ライセンスに「閲覧のみ許可、印刷は禁止」と記載されていれば、ユーザーはファイルの内容を見ることはできるが、印刷ボタンを押すことはできない。この一連の仕組みにより、ファイルが手元を離れた後でも、権限の集中管理が可能となる。
IRMが提供する具体的な機能は多岐にわたる。最も基本的な機能は、ユーザーやグループ単位でのアクセス制御である。特定の部署のメンバーにしか閲覧を許可しない、といった設定が可能だ。さらに、ファイルに対する操作を細かく制御できる点が特徴的である。閲覧、編集、保存、コピー&ペースト、印刷といった基本的な操作はもちろん、画面キャプチャ(スクリーンショット)の取得を禁止する機能も備わっていることが多い。これにより、内容の不正な複製を多角的に防ぐことができる。また、ファイルに有効期限を設定する機能も重要である。プロジェクト期間中のみ関係者にアクセスを許可し、期間が終了すると自動的にファイルが開けなくなるように設定できるため、情報管理の負担を軽減する。その他にも、ファイルを開いた際にユーザー名や日時などの「透かし(ウォーターマーク)」を強制的に表示させ、印刷物やスクリーンショットからの情報漏洩に対する心理的な抑止力として機能させることや、誰がいつどのファイルにアクセスし、どのような操作を行ったかを記録する監査ログ機能も提供される。このログは、万が一情報漏洩が発生した際の原因追跡や、内部統制の証明資料として活用される。
IRMと類似した技術にDRM(Digital Rights Management)があるが、両者は目的と対象が異なる。DRMは主に音楽、映像、電子書籍といったデジタルコンテンツの著作権を保護し、不特定多数の消費者による不正コピーや海賊版の流通を防ぐことを目的としている。一方、IRMはDRMの技術を応用し、企業や組織内の機密情報や知的財産を保護することを主目的とする。対象ユーザーが限定的であり、そのユーザーごとに詳細な権限を設定するという点で、DRMよりも法人利用に特化した技術であると言える。
IRMの導入は、企業のセキュリティレベルを飛躍的に向上させる。内部関係者による意図的、あるいは過失による情報漏洩のリスクを低減し、社外の取引先との安全なファイル共有を実現する。しかし、導入にあたっては考慮すべき点も存在する。強力な保護は、時として正規ユーザーの業務効率を低下させる可能性があるため、保護対象とする情報の重要度に応じて、適切なセキュリティポリシーを設計することが不可欠である。また、IRMを機能させるには、Microsoft Office製品をはじめとする対応アプリケーションが必要であり、システム全体の互換性を確認する必要がある。このように、IRMはファイル自体に永続的な保護を施すことで、情報がどこにあってもそのライフサイクル全体を通じて管理・保護を可能にする、現代の企業活動に不可欠なセキュリティソリューションの一つである。