【ITニュース解説】「データはどう流れるのか」――OSI参照モデルで“通信の仕組み”を解説
2025年09月06日に「TechTargetジャパン」が公開したITニュース「「データはどう流れるのか」――OSI参照モデルで“通信の仕組み”を解説」について初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。
ITニュース概要
OSI参照モデルは、ネットワーク通信の仕組みを階層構造で表したもの。システム運用に不可欠な知識であり、データが各レイヤーをどう通過するかを理解することが重要。各層の役割と連携を把握することで、通信における問題解決や効率的なシステム構築に役立つ。
ITニュース解説
OSI参照モデルは、ネットワークにおける通信の仕組みを理解するための重要な概念だ。これは、通信機能を7つの階層に分割し、各階層が特定の役割を担うことで、複雑な通信プロセスを整理し、理解しやすくするためのフレームワークとして機能する。
まず、OSI参照モデルの一番下にあるのが「物理層」だ。ここは、電気信号や光信号といった物理的な信号を送受信する役割を担う。例えば、LANケーブルや無線LANなどのハードウェアや、電圧、周波数などがこの層に関わってくる。物理層は、データを0と1のビット列に変換し、実際にネットワーク媒体を通じて送信する。
次に、「データリンク層」は、物理層で送受信されるデータをまとめて「フレーム」と呼ばれる単位にする役割を持つ。そして、フレームにMACアドレスという識別情報を付与し、ネットワーク上でどの機器にデータを送るかを特定する。データリンク層は、エラー検出や再送制御などの機能も持ち、物理的な接続における信頼性を高める。
3番目の層は「ネットワーク層」だ。ここでは、IPアドレスという論理的なアドレスを使って、異なるネットワーク間での通信を実現する。ルーターなどのネットワーク機器は、この層で動作し、最適な経路を選択してデータを転送する役割を担う。データは「パケット」という単位で扱われ、送信元IPアドレスと宛先IPアドレスが付与される。
「トランスポート層」は、データの信頼性のある送受信を保証する。TCP(Transmission Control Protocol)とUDP(User Datagram Protocol)という2つの主要なプロトコルがこの層で動作する。TCPは、コネクションを確立し、データの順序制御や再送制御を行うことで、信頼性の高い通信を提供する。一方、UDPは、コネクションを確立せずにデータを送受信するため、高速だが信頼性は低い。
5番目の層は「セッション層」だ。ここでは、アプリケーション間の通信セッションの確立、維持、終了を管理する。認証や許可、セッションの復旧などの機能を提供する。セッション層は、アプリケーションが安全かつ効率的に通信できるようにサポートする。
「プレゼンテーション層」は、データの形式を変換する役割を担う。例えば、文字コードの変換や、データの暗号化・復号化などを行う。これにより、異なるシステム間でデータをやり取りする際に、データの互換性を確保することができる。
そして、一番上の層が「アプリケーション層」だ。ここは、ユーザーが直接利用するアプリケーションが動作する層であり、HTTP(ウェブブラウザ)、SMTP(メール)、FTP(ファイル転送)などのプロトコルが利用される。アプリケーション層は、ユーザーからの要求を受け付け、他の層と連携して、必要なデータやサービスを提供する。
OSI参照モデルの各層は、独立して機能するわけではなく、互いに連携して動作する。例えば、ウェブブラウザ(アプリケーション層)がウェブサーバーにアクセスする際には、HTTPプロトコルを使って要求を送信し、その要求はプレゼンテーション層で適切な形式に変換され、セッション層で通信セッションが確立される。そして、トランスポート層でTCPを使ってデータが分割され、ネットワーク層でIPアドレスが付与されたパケットとしてルーティングされ、データリンク層でフレームにまとめられ、物理層を通じて電気信号として送信される。
このように、データはOSI参照モデルの各層を順番に通過しながら、変換、処理、転送され、最終的に相手側のシステムに到達する。相手側のシステムでは、この逆の手順でデータが処理され、アプリケーション層でユーザーが利用できる情報として表示される。
OSI参照モデルを理解することは、ネットワークやシステムのトラブルシューティングを行う上でも非常に役立つ。例えば、ウェブサイトが表示されないという問題が発生した場合、どの層で問題が発生しているかを特定することで、原因を特定しやすくなる。物理層に問題がある場合は、LANケーブルの断線や無線LANの接続不良などが考えられるし、ネットワーク層に問題がある場合は、ルーターの設定ミスやIPアドレスの競合などが考えられる。
OSI参照モデルは、ネットワーク技術者にとって必須の知識であり、システムエンジニアを目指す上で、基礎的な知識として習得しておくことが重要だ。各層の役割と連携を理解することで、より高度なネットワーク技術やシステム設計の理解につながる。