LTE-Advanced(エルティーイーアドバンスド)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説
LTE-Advanced(エルティーイーアドバンスド)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。
読み方
日本語表記
LTE-Advanced (エルティーイーアドバンスト)
英語表記
LTE-Advanced (エルティーイーアドバンスト)
用語解説
LTE-Advancedは、第3.9世代移動通信システムであるLTE (Long Term Evolution) をさらに高度化させた無線通信規格である。国際電気通信連合 (ITU) が定める第4世代移動通信システム (4G) の要求仕様「IMT-Advanced」を完全に満たす技術として、標準化団体3GPP (3rd Generation Partnership Project) によって規格が策定された。LTEが「3.9G」と通称されることがあるのは、当初の仕様がIMT-Advancedの要求する通信速度などの条件を完全には満たしていなかったためであり、LTE-Advancedこそが「真の4G」と位置づけられる規格である。この規格の最大の特徴は、LTEとの後方互換性を維持している点にある。これにより、通信事業者は既存のLTEのインフラ設備を有効活用しながら、段階的にネットワークを高度化することが可能となり、利用者もLTE端末とLTE-Advanced対応端末を同一のネットワーク上でシームレスに利用できる。その目的は、LTEを基盤としながら、さらなる通信速度の高速化、周波数利用効率の向上、そして通信が不安定になりやすい基地局の境界エリアにおける通信品質の改善を実現することにある。
LTE-Advancedが高速・大容量通信を実現するために導入した主要な技術として、まずキャリアアグリゲーション (Carrier Aggregation, CA) が挙げられる。これは、複数の異なる周波数帯(キャリア)を束ねて、あたかも一つの広い周波数帯であるかのように利用する技術である。例えば、通信事業者が保有する15MHz幅の周波数帯と10MHz幅の周波数帯を束ねることで、合計25MHzの広い帯域幅を確保し、通信速度を大幅に向上させることが可能となる。これにより、事業者は連続していない断片的な周波数帯を有効活用し、より高速なサービスを提供できるようになった。
次に、MIMO (Multiple-Input Multiple-Output) 技術の拡張がある。MIMOは、送信側と受信側の双方で複数のアンテナを用いてデータを同時に送受信することで、通信速度を向上させる空間多重技術である。LTEでも採用されていたが、LTE-Advancedではその規模が拡張され、下り方向で最大8本、上り方向で最大8本のアンテナ(8x8 MIMO)までサポートされるようになった。アンテナの本数を増やすことで、同じ周波数帯域幅でも一度に送受信できるデータ量を増やし、伝送効率を飛躍的に高めることができる。
また、セルエッジ問題、すなわち基地局の電波が届きにくくなる境界エリアでの通信品質低下を改善する技術として、CoMP (Coordinated Multi-Point transmission/reception) が導入された。これは、隣接する複数の基地局が協調して一つの端末と通信を行う技術である。従来は、セルエッジにいる端末は複数の基地局からの電波が干渉し合い、通信品質が劣化する原因となっていた。CoMPでは、これらの基地局が連携し、端末にとって最適な信号を送信したり、干渉を打ち消すように制御したりすることで、セルエッジにおけるスループットを安定させ、通信品質を向上させる。
さらに、エリアカバレッジを効率的に改善する手段として、リレーノード (Relay Node) の活用が規定された。リレーノードは、親となる基地局(eNodeB)からの電波を受信し、それを増幅して再度送信する小型の無線中継局である。これにより、ビル陰や山間部などの電波が届きにくい不感地帯を解消したり、通信が集中する特定の場所の通信容量を補強したりすることが、大規模な基地局を新たに建設するよりも低コストで実現できる。
これらの技術革新により、LTE-AdvancedはLTEと比較して通信性能が大幅に向上した。理論上の最大通信速度は、下り方向で1Gbps以上、上り方向で500Mbps以上と規定され、これはLTEの数倍に達する。LTE-Advancedは、単なる速度向上だけでなく、ネットワーク全体の効率性と安定性を高めるための多様な技術的要素を統合した、包括的な無線通信システムである。5G (第5世代移動通信システム) が普及した現在でも、LTE-Advancedで培われたキャリアアグリゲーションや高度化MIMOなどの基盤技術は、5Gネットワークにおいても重要な要素として引き継がれ、発展を続けている。