LTE(エルティーイー)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説
LTE(エルティーイー)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。
読み方
日本語表記
エルティーイー (エルティーイー)
英語表記
LTE (エルティーイー)
用語解説
LTEはLong Term Evolutionの略称であり、スマートフォンやタブレット端末などで利用される高速な無線通信規格である。日本語では「長期的な進化」と訳され、第3世代移動通信システム(3G)から第4世代移動通信システム(4G)へと移行する過程で、長期的に技術を進化させていくという意図を込めて名付けられた。その主な目的は、増大し続けるデータ通信需要に応えるため、3Gよりも高速で遅延の少ない通信環境を実現することにあった。スマートフォンの普及に伴い、高画質な動画のストリーミング再生や大容量アプリケーションのダウンロードが一般化し、従来の3Gの通信速度では快適な利用が困難になりつつあった。LTEは、こうした課題を解決するために開発された技術であり、通信速度の理論値は3Gの数十倍に達し、通信の応答時間を示す遅延も大幅に短縮されている。これにより、ユーザーはより快適なモバイルデータ通信を享受できるようになった。
技術的な位置づけとして、LTEはしばしば「3.9G」と表現されることがある。これは、国際電気通信連合(ITU)が定義する厳密な4Gの要件を、初期のLTE規格が完全には満たしていなかったためである。ITUが定める4Gの要件には、静止時や低速移動時で1Gbps程度、高速移動時で100Mbps程度の超高速通信などが含まれていた。初期のLTEはこれらの基準に達していなかったため、3Gを大きく進化させた世代として3.9Gと位置づけられた。その後、LTEをさらに高度化させたLTE-Advancedという規格が登場し、これがITUの4G要件を満たしたことから、LTEおよびLTE-Advancedは総称して「4G」として広く認知されるようになった。
LTEの高速通信を実現している中心的な技術要素には、OFDMA、SC-FDMA、MIMOなどがある。OFDMAはOrthogonal Frequency Division Multiple Accessの略で、下り通信(基地局から端末への通信)に用いられる多重化方式である。この技術は、利用可能な周波数帯域を多数の非常に狭い帯域幅を持つ搬送波(サブキャリア)に分割し、それぞれのサブキャリアにデータを乗せて送信する。複数のユーザーに対して、これらのサブキャリア群を動的に割り当てることで、多くのユーザーが同時に効率よく通信を行うことを可能にする。また、都市部などで発生しやすい、電波が建物などに反射して複数の経路で受信されることによる干渉(マルチパス干渉)に強いという特長も持つ。
一方、上り通信(端末から基地局への通信)にはSC-FDMA(Single Carrier - Frequency Division Multiple Access)が採用されている。SC-FDMAはOFDMAと類似した技術だが、送信電力のピーク値と平均値の比率であるPAPR(Peak-to-Average Power Ratio)を低く抑えられるという重要な特性を持つ。PAPRが低いと、送信機のアンプの効率が向上し、消費電力を削減できる。スマートフォンなどのバッテリー駆動時間が限られる端末にとって、消費電力の抑制は極めて重要であり、SC-FDMAの採用は端末のバッテリー持続時間向上に貢献している。
MIMO(Multiple Input Multiple Output)もまた、LTEの通信速度向上に不可欠な技術である。これは、送信側と受信側の双方に複数のアンテナを搭載し、同じ周波数を用いて同時に複数の異なるデータストリームを送受信する技術である。これにより、利用する周波数帯域を増やすことなく、通信容量をアンテナの数に応じて増大させることができる。例えば、送信側と受信側がそれぞれ2本のアンテナを使用すれば、理論的には通信速度を最大で2倍に高めることが可能となる。
ネットワークの構造においても、LTEは3Gから大きな変革を遂げている。LTEのネットワークは「オールIPネットワーク」と呼ばれる構成を基本とする。3Gまでは、音声通話のための「回線交換網」とデータ通信のための「パケット交換網」という2種類のネットワークが併存していた。これに対し、LTEでは音声通話を含むすべての通信を、インターネットと同じIP(Internet Protocol)技術を用いたパケット交換に統一した。これにより、ネットワーク構成が簡素化され、データ通信の効率が大幅に向上した。当初、LTEネットワーク上で音声通話を実現する際は、一時的に3Gの回線交換網に切り替えるCSフォールバックという方式が用いられたが、後にIPネットワーク上で高品質な音声通話を実現するVoLTE(Voice over LTE)技術が導入され、オールIPの利点を最大限に活用できるようになった。これらの技術的進化により、LTEは現代のモバイル通信の基盤を築き、その後の第5世代移動通信システム(5G)への発展の礎ともなっている。