第4世代移動通信システム (ダイヨンセダイイドウツウシンシステム) とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

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第4世代移動通信システム (ダイヨンセダイイドウツウシンシステム) の読み方

日本語表記

第四世代移動通信システム (ダイヨンセダイイドウツウシンシステム)

英語表記

Fourth Generation mobile communication system (フォースジェネレーションモバイルコミュニケーションシステム)

第4世代移動通信システム (ダイヨンセダイイドウツウシンシステム) の意味や用語解説

第4世代移動通信システムは、3G(第3世代移動通信システム)からさらなる高速化、大容量化、低遅延化を実現し、現代のモバイル通信の基盤を築いた技術群の総称である。主に「LTE (Long Term Evolution)」と、その発展形である「LTE-Advanced」がこのカテゴリに含まれる。2010年代以降、スマートフォンやタブレット端末の爆発的な普及を支え、高画質な動画ストリーミング、高速ウェブブラウジング、オンラインゲームなど、多様なモバイルインターネットサービスを快適に利用できる環境を提供した。国際電気通信連合 (ITU) が定めるIMT-Advancedの要件を満たすことで、真の4Gとして認定されたのはLTE-Advancedである。しかし、広義にはLTEも4Gと認識されることが一般的であり、両者は密接な関係にある。この世代の通信システムは、モバイルネットワークを従来の回線交換方式から、インターネットの基盤であるIP(Internet Protocol)ベースのパケット交換方式へと完全に移行させた点も大きな特徴である。 第4世代移動通信システムの核となる技術的特徴は多岐にわたるが、特に重要な要素として、OFDM(直交周波数分割多重方式)とMIMO(Multiple-Input Multiple-Output)が挙げられる。OFDMは、利用可能な周波数帯域を多数の狭い帯域に分割し、それぞれにデータを乗せて同時に送信する方式である。これにより、高速伝送時に発生しやすい周波数選択性フェージングによる信号の劣化を効果的に抑制し、高速かつ安定したデータ通信を可能にする。例えば、異なる周波数帯域がそれぞれ異なる通信状況(電波の反射や干渉など)にさらされても、一部の帯域が影響を受けても全体の通信品質が大きく損なわれるのを防ぐことができる。 一方、MIMOは、送信側と受信側の双方に複数のアンテナを配置し、それぞれ異なるデータを同時に送受信することで、通信容量を飛躍的に増大させる技術である。これは、同じ周波数帯域を使って複数の独立したデータストリームを並行して伝送する空間多重という概念に基づいており、あたかも複数の通信路があるかのように機能する。また、ビームフォーミングといった技術と組み合わせることで、特定の方向へ電波を集中的に放射し、通信品質の向上や干渉の低減にも貢献する。これらの技術は、限られた周波数資源の中で、より多くのユーザーに、より高速な通信を提供するための鍵となった。 具体的な規格としては、まずLTEが挙げられる。これは3.9Gとも称され、国際的に4Gへの移行期における主要な技術として普及した。LTEは下り最大数百Mbps程度の速度を実現し、IPベースのパケット交換ネットワークへの移行を加速させた。音声通話においても、VoLTE(Voice over LTE)と呼ばれる技術により、従来の回線交換方式からIPベースのパケット交換方式での音声通話が可能になった。これにより、データ通信と音声通話が同じネットワーク上で統合され、より高品質で低遅延な音声サービスが提供されるようになった。 次に、LTE-Advancedは、真の4Gとしての要件を満たすためにLTEをさらに高度化した技術である。LTE-Advancedでは、キャリアアグリゲーション、HetNet(Heterogeneous Network)、CoMP(Coordinated Multi-Point)などの新技術が導入された。キャリアアグリゲーションは、複数の異なる周波数帯域を束ねて一体的に利用することで、通信速度を向上させる技術である。これにより、より広い周波数帯域を仮想的に確保し、ギガビット級の高速通信を実現する基盤が構築された。HetNetは、マクロセル(広範囲をカバーする大きな基地局)とスモールセル(特定エリアをカバーする小さな基地局)を組み合わせて効率的なネットワークを構築する概念であり、通信容量の増大とカバーエリアの最適化を図る。CoMPは、複数の基地局が連携してユーザー端末との通信を行うことで、セル境界での通信品質を向上させ、ネットワーク全体の容量を増やす技術である。これらの技術革新により、LTE-Advancedは理論上、下り最大1Gbpsの通信速度を達成することを目標とした。 ネットワークアーキテクチャの面では、第4世代移動通信システムではEPC(Evolved Packet Core)と呼ばれるオールIPのコアネットワークが採用された。これは、従来の複雑な回線交換網とパケット交換網が混在する構造から脱却し、データ通信、音声通信、制御信号の全てをIPパケットとして扱う統合されたネットワークである。EPCは、ユーザーの認証、モビリティ管理、課金、品質制御など、ネットワーク全体の制御と管理を行う役割を担う。基地局(LTEの場合はeNodeB)はユーザー端末からの無線信号を処理し、EPCと連携してデータの中継や経路制御を行う。制御プレーン(ユーザーの通信を確立・維持するための信号制御)とユーザプレーン(実際のユーザーデータ)が論理的に分離されたアーキテクチャも特徴であり、これにより、ネットワークの柔軟性や効率性が向上し、新しいサービスの導入が容易になった。 第4世代移動通信システムの登場は、社会に大きな影響を与えた。スマートフォンが高機能化し、動画コンテンツの視聴、クラウドサービスの利用、モバイル決済、IoT(モノのインターネット)デバイスの普及といった新たなアプリケーションやサービスの基盤を提供した。また、モバイルブロードバンドの概念を確立し、いつでもどこでも高速なインターネット接続が可能になったことで、人々の生活様式やビジネスモデルを大きく変革させた。しかし、さらなる通信速度の向上、超低遅延化、多数のデバイス接続の要求が高まる中で、第5世代移動通信システム(5G)への進化へと繋がる道筋が形成されていった。4Gで培われた技術と経験は、5Gの設計と開発において重要な基盤となっている。

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