MPSA(エムピーエスエー)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

MPSA(エムピーエスエー)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

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読み方

日本語表記

マイクロソフトボリュームライセンス契約 (マイクロソフト ボリューム ライセンス ケイヤク)

英語表記

Microsoft Products and Services Agreement (マイクロソフト プロダクツ アンド サービシズ アグリーメント)

用語解説

マイクロソフト製品サービス契約(MPSA)は、Microsoft Products and Services Agreementの略であり、企業や組織がマイクロソフトのソフトウェアライセンスやクラウドサービスを効率的かつ柔軟に購入・管理するための契約形態の一つだ。従来の複雑なボリュームライセンスプログラムを統合し、よりシンプルで使いやすい形に再構築された点が大きな特徴である。これにより、オンプレミス環境で利用するソフトウェア製品と、Azure、Office 365などのクラウドサービスの両方を、単一の契約で一元的に調達・管理することが可能となる。システムエンジニアを目指す初心者にとっては、現代のIT環境におけるライセンス管理のあり方を理解する上で重要な概念と言えるだろう。

MPSAが登場した背景には、従来のマイクロソフトライセンスプログラムが抱えていたいくつかの課題と、IT環境の変化がある。かつてのOpen LicenseやSelect Plusといったプログラムは、それぞれ異なる契約条件や期間、購入要件を持ち、複数の製品やサービスを利用する組織にとっては管理が非常に複雑であった。また、近年急速に普及したクラウドサービスの台頭により、従来のソフトウェアライセンスの概念だけでは対応しきれない状況が生まれていた。企業はオンプレミスとクラウドを組み合わせたハイブリッド環境での運用が主流となり、これらすべてのITリソースをシンプルに管理し、必要な時に必要な分だけ調達したいというニーズが高まっていたのである。MPSAは、このような顧客の要望に応える形で開発され、ライセンス管理の負担を軽減し、ビジネスの変化に迅速に対応できる柔軟な調達モデルを提供することを目指している。

MPSAの具体的な特徴は多岐にわたる。まず最も重要なのはその「シンプルさ」だ。従来の複数あった契約をMPSA一つに集約することで、契約書自体が簡素化され、法務部門やIT部門の契約管理業務が大幅に効率化される。次に「柔軟性」も大きな利点だ。MPSAでは、企業は必要な製品やサービスを、必要なタイミングで、必要な数量だけ購入できる。これは従来のプログラムのように特定の期間内での一括購入や大規模なコミットメントを求められないことを意味する。例えば、新しいプロジェクトが立ち上がり一時的に追加のライセンスが必要になった場合でも、MPSAを通じて迅速に調達できる。また、オンプレミスのWindows ServerやSQL Serverといったソフトウェアだけでなく、Microsoft Azureの各種サービス、Office 365やDynamics 365といったSaaS(Software as a Service)も同じ契約の下で購入・利用できるため、クラウドとオンプレミスが混在する環境でも一貫したライセンス管理が可能となる。

さらに、MPSAでは「購入アカウント」という概念が導入されている。これは、組織内の特定の部署やグループが、それぞれ独立して製品やサービスを購入・管理できるようにするための仕組みだ。これにより、組織全体の契約を煩雑にすることなく、各部門が自律的にITリソースを調達しやすくなる。MPSAの管理は、専用のオンラインポータルサイトである「パーソナルボリュームライセンスサービス(PVLS)」を通じて行われる。PVLSでは、契約内容、これまでの購入履歴、保有ライセンスの一覧、ソフトウェアアシュアランス(SA)の有効期限、クラウドサービスの使用状況など、ライセンスに関するあらゆる情報を一元的に確認・管理できる。このポータルサイトは、ライセンス担当者にとって非常に強力なツールとなるだろう。

価格面においても、MPSAは柔軟性を提供している。購入数量に応じた価格レベルは存在するが、従来のSelect Plusのように組織全体での大規模な購入コミットメントを前提とするのではなく、購入アカウントごとの累積によって価格メリットを享受できる。また、ソフトウェアアシュアランス(SA)は、新しいバージョンへのアップグレード権やトレーニング特典などを含むオプションサービスだが、MPSAではこれを製品購入時に選択するか否かを柔軟に決定できる。これにより、組織は自社のニーズに合わせてコストを最適化することが可能となる。

MPSAは、中堅企業から大規模企業まで幅広い組織を対象としているが、特に複数部門でのITリソース調達が多い組織や、クラウドサービスの利用を積極的に進めている組織にとって大きなメリットがある。ただし、マイクロソフトのライセンスプログラムにはMPSAの他にも、中小企業向けのCSP(Cloud Solution Provider)プログラムや、非常に大規模な組織向けのEnterprise Agreement(EA)などが存在する。組織の規模やIT戦略、既存の契約状況によっては、MPSAが必ずしも最適な選択肢ではない場合もあるため、導入を検討する際には、自社の状況を十分に分析し、専門家と相談することが重要である。MPSAは、現代の複雑なIT環境におけるマイクロソフト製品・サービスのライセンス管理をよりシンプルに、より柔軟にするための強力なツールであり、システムエンジニアとしてライセンス管理に携わる際にはその基本的な仕組みを理解しておくことが求められる。