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M/M/1モデル(エムエムワンモデル)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

M/M/1モデル(エムエムワンモデル)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

作成日: 更新日:

読み方

日本語表記

エムエムワンモデル (エムエムワンモデル)

英語表記

M/M/1 model (エムエムイチモデル)

用語解説

M/M/1モデルは、待ち行列理論において最も基礎的かつ重要なモデルの一つである。システムエンジニアがシステムの性能を評価し、設計を最適化する上で、このモデルの理解は不可欠となる。M/M/1モデルは、あるサービス窓口に客が到着し、サービスを受け、システムを去るまでの一連のプロセスを数学的に記述し、そのシステムの平均的な待ち時間、サービス窓口の利用率、システム内に滞在する客の平均数などを予測するために用いられる。

このモデルの名称「M/M/1」は、それぞれ特定の特性を指し示している。最初の「M」は、客の到着プロセスがマルコフ的であること、具体的には到着間隔が指数分布に従うことを意味する。指数分布は、次にいつイベントが発生するかについて「記憶を持たない(メモリレス特性)」という特徴を持つ。これは、前の客がいつ到着したかに関わらず、次の客がいつ到着するかは常に同じ確率で決定される、非常にランダムな到着パターンを仮定していることを意味する。実際のシステムでは、ウェブサイトへのアクセス、サーバへのリクエスト、コールセンターへの電話など、多くのランダムなイベントがこのポアソン過程(到着間隔が指数分布に従う場合)によって近似できるため、この仮定は非常に有用である。

二番目の「M」も同様に、サービスの時間が指数分布に従うことを意味する。つまり、サービス窓口での処理に要する時間もまた、過去のサービス時間に依存せず、非常にランダムに変動することを仮定している。例えば、単一のCPUがタスクを処理する時間、レジの店員が顧客を処理する時間などがこれに該当する。サービス時間の指数分布は、サービスの完了が予測不可能で、処理時間が短いこともあれば非常に長いこともある、という現実世界の複雑さを単純化して表現するのに役立つ。

そして、「1」は、サービスを提供する窓口(サーバ)が一つだけ存在することを表す。これは、例えば一つのレジ、一つのCPUコア、一つのウェブサーバプロセスなど、一度に一人の客(または一つのタスク)しか処理できないシステムを想定している。

M/M/1モデルは、これらの仮定に加えて、いくつか追加の条件を置く。一つは、待ち行列の長さが無限であることである。これは、システムには常に客が待つための十分なスペースがあり、客がシステムから追い出されることはないという理想的な状況を仮定している。また、サービス規律は通常FIFO(First-In, First-Out、先着順)であると仮定される。これは、先に到着した客から順番にサービスを受けるという、最も一般的な処理順序を意味する。さらに、システムは定常状態にあると仮定される。これは、システムが十分に長い時間稼働しており、その統計的特性(到着率やサービス率など)が時間によって大きく変化しない状態を指す。

このモデルを用いることで、システムエンジニアは以下のような重要な性能指標を算出できる。 まず「利用率(ρ)」は、サービス窓口が稼働している時間の割合を示す。これは、客の平均到着率(λ)をサービス窓口が客を処理できる平均サービス率(μ)で割ることで計算され、ρ = λ/μ と表される。システムの安定稼働のためには、利用率は常に1未満である必要がある(ρ < 1)。もし利用率が1以上になると、到着する客をサービス窓口が処理しきれなくなり、待ち行列は無限に長くなってしまうためである。

次に、「平均待ち時間(Wq)」は、客がサービスを受けるために待ち行列で待つ平均時間を示す。また、「平均システム滞在時間(Ws)」は、客がシステムに到着してからサービスが完了するまでの平均時間であり、平均待ち時間に平均サービス時間を加えたものである。これらは、システムのレスポンスタイムや顧客満足度を評価する上で非常に重要な指標となる。

さらに、「平均待ち行列長(Lq)」は、待ち行列に並んでいる客の平均数を示し、「平均システム内客数(Ls)」は、待ち行列にいる客とサービス中の客を合わせた平均数を示す。これらの指標は、必要なバッファ容量の見積もりや、システム内のリソース消費量を把握するために役立つ。

M/M/1モデルの仮定は、現実世界のシステムを完全に再現できるわけではないが、そのシンプルさゆえに、複雑なシステムの挙動を直感的に理解し、概算的な性能評価を行うための強力なツールとなる。例えば、新しいウェブサーバを導入する際の処理能力の見積もりや、コールセンターのオペレータ数の検討、シングルスレッドで動作するアプリケーションの性能予測など、多岐にわたるITシステムの設計や運用において基礎的な洞察を提供する。このモデルは、待ち行列理論を学ぶ上での出発点であり、より複雑なM/M/c(複数の窓口を持つモデル)やM/G/1(サービス時間が一般分布に従うモデル)といった派生モデルを理解するための基盤となる。したがって、システムエンジニアを目指す者にとって、M/M/1モデルの原理と適用範囲をしっかりと把握しておくことは、実践的な問題解決能力を高める上で非常に価値がある。