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OpenCL(オープンシーエル)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

OpenCL(オープンシーエル)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

作成日: 更新日:

読み方

日本語表記

オープンシーエル (オープンシーエル)

英語表記

OpenCL (オープンシーエル)

用語解説

OpenCL(Open Computing Language)は、中央演算処理装置(CPU)だけでなく、グラフィックス処理装置(GPU)やその他の種類の並列処理ハードウェア(FPGA、DSPなど)を効率的に利用するための、オープンな標準フレームワークである。異なるベンダーの異なるハードウェアデバイス上で、共通のAPI(Application Programming Interface)を使って並列計算プログラムを実行できる環境を提供することを目的として、Khronos Groupによって策定された。これにより、特定のハードウェアに依存することなく、システムの計算能力を最大限に引き出すことが可能になる。科学技術計算、画像処理、機械学習、数値シミュレーションなど、大量のデータを並列に処理する必要がある幅広い分野で活用されている。

OpenCLのプログラミングモデルは、「ホスト」と「デバイス」という概念に基づいている。ホストは主にCPUを指し、OpenCLプログラムの全体的な制御を行う。デバイスは実際に並列計算を実行するハードウェアユニットであり、GPUやFPGAなどがこれに該当する。ホストプログラムはOpenCL APIを呼び出してデバイスの初期化、計算に必要なデータの転送、並列計算処理の実行指示、結果の取得などを行う。デバイス上で実行される並列計算のコードは「カーネル」と呼ばれ、C99をベースにしたOpenCL C言語で記述される。

カーネルは、多数の「ワークアイテム」と呼ばれる最小単位の計算タスクとして並列に実行される。これらのワークアイテムは、さらに「ワーキンググループ」という単位にまとめられる。一つのワーキンググループ内のワークアイテムは、高速な共有メモリ(ローカルメモリ)を介してデータを共有したり、同期を取りながら協調動作したりできる。カーネルが実行される総ワークアイテムの数とその配置、そしてワーキンググループのサイズは、「NDRange(N-Dimensional Range)」として定義される。NDRangeは1次元、2次元、あるいは3次元のインデックス空間として表現され、それぞれのワークアイテムが一意のグローバルIDとローカルIDを持つことで、自身の処理対象データを特定する。

OpenCLの実行環境はいくつかの要素で構成される。まず「プラットフォーム」は、特定のOpenCL実装が動作するハードウェアとソフトウェア(ドライバなど)の集合を指す。プラットフォーム上には一つ以上の「デバイス」が存在する。これらのデバイスや、それらに関連するリソース(メモリ、コマンドキューなど)を管理するのが「コンテキスト」である。ホストからデバイスへの命令(カーネルの実行要求やメモリ転送など)は「コマンドキュー」を通じて非同期的に発行される。

デバイス上のメモリは複数の種類に分かれる。最も容量が大きいがアクセス速度が比較的遅いのが「グローバルメモリ」であり、全てのワークアイテムからアクセス可能である。特定のワーキンググループ内のワークアイテムのみが共有し、高速にアクセスできるのが「ローカルメモリ」である。各ワークアイテムが専用で利用できる高速なメモリは「プライベートメモリ」と呼ばれる。また、ホストからデバイスへ一度転送され、カーネル実行中は読み取り専用として利用される「定数メモリ」も存在する。これらのメモリを適切に使い分けることで、カーネルの性能を最大限に引き出すことが重要となる。

OpenCLの大きな利点は、異なるハードウェアベンダーの多様な並列処理デバイスを抽象化し、共通のプログラミングモデルで利用できる点にある。これにより、特定のベンダーの技術に縛られることなく、高性能な並列計算システムを構築できる。また、プログラムの移植性が高く、一度記述したカーネルを異なるOpenCL対応デバイス上で実行できる可能性が高い。しかし、並列プログラミング自体が複雑であり、メモリ管理やスレッド間の同期、デバッグには高度な知識と経験が求められる。カーネルの性能を最適化するためには、利用するハードウェアのアーキテクチャやメモリ階層を深く理解する必要もある。

具体的な応用例としては、機械学習におけるニューラルネットワークの推論や学習、大規模な科学シミュレーションにおける物理現象の計算、画像や動画のフィルター処理やエンコーディング/デコーディング、さらにはビッグデータの解析など多岐にわたる。OpenCLは、高性能コンピューティング分野において、既存のCPUの限界を超える計算能力を引き出すための強力なツールとして、今後も重要な役割を担っていくことが期待される。

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