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STM(エスティーエム)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

STM(エスティーエム)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

作成日: 更新日:

読み方

日本語表記

ステレオクロマトグラフィー (ステレオクロマトグラフィー)

英語表記

STM (エスティーエム)

用語解説

STMとは、Software Transactional Memoryの略であり、複数のプログラムが同時に実行される並行プログラミングにおいて、共有メモリへのアクセスを安全かつ効率的に行うための仕組みを指す。現代のコンピュータシステムでは、処理能力向上のためマルチコアCPUが広く採用され、一つのアプリケーションが複数のスレッドやプロセスを同時に動かす並行処理が不可欠となっている。しかし、複数のスレッドが同じデータにアクセスしようとすると、データの整合性が失われるなどの問題が発生する可能性がある。STMは、この共有データの競合問題を、データベースシステムで用いられるトランザクションの概念を応用することで解決しようとする技術である。

並行プログラミングにおける共有データへのアクセスには、従来からロックやミューテックスといった同期機構が使われてきた。これらの機構は、あるスレッドが共有データにアクセスしている間、他のスレッドからのアクセスを一時的にブロックすることでデータの破壊を防ぐ。しかし、ロックベースの同期機構は、プログラムの記述を複雑にし、デッドロック(複数のスレッドが互いにロックを待ち合い、永久に処理が進まなくなる状態)やライブロック(スレッドが繰り返し処理を試みるが、常に競合して成功しない状態)、さらには特定の箇所にアクセスが集中することで性能のボトルネックとなるなど、多くの課題を抱えている。これらの問題は、大規模な並行システム開発において、設計、実装、デバッグの難易度を著しく高める要因となっていた。

Software Transactional Memoryは、これらの課題に対し、ロックフリーなアプローチを提供する。STMでは、共有データに対する一連の操作を一つの「トランザクション」として扱う。このトランザクションは、データベースのトランザクションが持つACID特性(原子性、一貫性、独立性、永続性)のうち、特に原子性(Atomic)、一貫性(Consistent)、独立性(Isolated)をソフトウェアレベルで保証しようとする。

STMの動作原理は以下のようになる。まず、あるスレッドが共有データに対する操作をトランザクションとして開始すると、そのトランザクション内で読み取られたデータや、書き込み予定のデータが一時的なログとして記録される。この時点では、実際の共有データは変更されない。複数のスレッドがそれぞれトランザクションを実行している間も、各トランザクションは独立して動作を試みる。

トランザクションが終了し、共有データへの変更を確定しようとする段階で、STMシステムは「検証(Validation)」を行う。この検証では、トランザクションが実行中に読み取ったデータが他のトランザクションによって変更されていないか、また、書き込もうとしているデータが他のトランザクションと競合しないかなどをチェックする。もし他のトランザクションとの競合が検出されなければ、そのトランザクションは「コミット」され、一時ログに記録された変更が実際の共有データにまとめて適用される。これにより、共有データの一貫性が保たれる。

一方、検証の結果、競合が検出された場合や、トランザクションの実行中に問題が発生した場合は、そのトランザクションは「アボート(中止)」される。アボートされたトランザクション内で行われた一時的な変更はすべて破棄され、共有データは元の状態に保たれる。その後、アボートされたトランザクションは自動的に再試行されることが一般的である。この再試行のメカニズムにより、開発者はデッドロックやライブロックといった問題を意識することなく、安全に並行処理を記述できるようになる。

STMの主な利点は、まずプログラミングの容易さにある。開発者は、共有データへのアクセスに対して明示的なロックの取得や解放といった煩雑なコードを記述する必要がなくなり、複数の操作を一つのまとまりとして宣言するだけで、STMシステムがその原子性や独立性を保証してくれる。これにより、コードの可読性が向上し、バグの発生リスクを低減できる。また、ロックベースの同期機構で問題となるデッドロックやライブロックといった状況も、STMの内部メカニズムによって自動的に管理されるため、開発者はそれらの問題に煩わされることがなくなる。さらに、競合が少ない状況下では、ロックの粒度を細かく設定する手間なく、高い並列度を実現し、性能向上につながる可能性がある。

しかし、STMにも課題は存在する。トランザクションの記録、検証、競合検出、そしてアボートと再試行といった内部処理には、一定のオーバーヘッドが伴う。特に、共有データへのアクセスが頻繁に発生し、競合が多発するような状況では、トランザクションのアボートと再試行が繰り返され、結果的に性能が低下する可能性がある。また、トランザクションの内部でファイルI/Oやネットワーク通信といった「副作用」を持つ操作を行う場合、トランザクションがアボートされた際にそれらの外部操作を取り消すことが困難であるという問題がある。このような場合、外部操作はトランザクションの範囲外で行うか、特別な設計上の配慮が必要となる。

STMは、Haskellのような特定のプログラミング言語では強力な機能として組み込まれている一方、JavaやC++のような主流言語ではライブラリとして提供されることが多い。まだ広く普及しているとは言えないが、マルチコア環境が当たり前となった現代において、並行プログラミングの複雑さを緩和し、より安全かつ効率的なソフトウェア開発を実現する可能性を秘めた重要な技術として、今後の発展が期待されている。システムエンジニアを目指す者にとって、並行処理の課題とそれに対するSTMのような先進的なアプローチを理解することは、現代のシステム開発において不可欠な知識であると言えるだろう。

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