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TCPオフロードエンジン(ティーシーピーオフロードエンジン)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

TCPオフロードエンジン(ティーシーピーオフロードエンジン)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

作成日: 更新日:

読み方

日本語表記

TCPオフロードエンジン (ティーシーピーオフロードエンジン)

英語表記

TCP Offload Engine (ティーシーピーオフロードエンジン)

用語解説

TCPオフロードエンジンは、ネットワーク通信におけるTCP/IPプロトコル処理の一部を、サーバーのメインCPUからネットワークインターフェースカード(NIC)に肩代わりさせる技術である。一般的にTOE(TCP Offload Engine)と略される。これにより、サーバーのCPU負荷を軽減し、ネットワークのデータ転送性能を向上させることを主な目的とする。特に、大量のデータ通信を伴うサーバー環境や高速なネットワーク環境において、その効果を最大限に発揮する。従来のネットワーク通信では、データが送受信される際に、OS内部のソフトウェアで様々なプロトコル処理が実行される。このソフトウェアによる処理は、特に高速なギガビットイーサネットや10ギガビットイーサネットなどの通信速度においては、CPUに大きな負担をかける要因となっていた。

TCP/IPプロトコルは、アプリケーションが利用するデータを確実に相手に届けるための複雑な手順を定めている。データ送信時には、アプリケーションから受け取った大きなデータをTCPプロトコルが小さな塊(セグメント)に分割し、それぞれにシーケンス番号を付与する。また、データの整合性を確認するためのチェックサムを計算し、送信先のポート番号などの情報をTCPヘッダに加えてパケットを生成する。さらに、そのTCPパケットをIPパケットとしてカプセル化し、最終的に物理的なネットワークに送信可能なイーサネットフレームに変換する。受信時には、これらの逆の処理が求められる。つまり、受信したイーサネットフレームからIPパケットとTCPパケットを取り出し、TCPヘッダのチェックサムを検証してデータの破損がないかを確認し、シーケンス番号に基づいてセグメントの順序を検証する。もし欠損があれば再送要求を出し、最終的にアプリケーションが利用できる形にデータを再構築するといった一連の処理が実行される。これらの処理は、OSのカーネル内でソフトウェア的に実行されるため、データ量が増加し、通信速度が高速になるほどCPUの多くの処理能力とメモリ帯域を消費する。これにより、CPUは本来実行すべきアプリケーションの処理や他のOSタスクに十分なリソースを割けなくなり、サーバー全体のパフォーマンスが低下するボトルネックとなることがあった。

TCPオフロードエンジンは、このようなTCPプロトコルスタックの特定の処理を、NIC上に搭載された専用のハードウェア回路やファームウェアで実行する。具体的には、以下のような処理がオフロードされる対象となる。

第一に、TCPセグメンテーションオフロード(TSO)は、アプリケーションから受け取った大きなデータを、NICがTCPの最大セグメントサイズ(MSS)に分割する処理を肩代わりする。これにより、OSのCPUはデータを分割する手間が省ける。

第二に、TCPチェックサムオフロードは、TCPヘッダのチェックサムの計算(送信時)と検証(受信時)をNICが行う。チェックサムの計算はデータのすべてのバイトを対象とするため、特に高速通信ではCPUにとって大きな負担となる。

第三に、TCPオフロードエンジンは、受信確認応答(ACK)の生成と送信、データの再送管理、フロー制御におけるウィンドウ制御といった、信頼性のあるデータ転送を実現するための複雑な処理の一部をNICのハードウェアで行う。これらの処理は、大量のデータ転送中に頻繁に発生するため、CPUが解放されるメリットは大きい。

これらのオフロード機能により、CPUはネットワークプロトコル処理から解放され、より重要なアプリケーションの実行やOSの管理タスクにリソースを集中できるようになる。結果として、サーバー全体の処理能力が向上し、特にWebサーバー、データベースサーバー、ファイルサーバー、仮想化ホストなど、ネットワークI/O(入出力)がボトルネックになりやすいシステムにおいて、スループットの大幅な向上が期待できる。CPUの利用率が低下することで、アイドル状態の時間が長くなり、消費電力の削減にも寄与する可能性もある。また、仮想化環境においては、ホストOSのCPU負荷が軽減されることで、より多くの仮想マシンを効率的に稼働させることが可能となり、物理リソースの有効活用に繋がる。

ただし、TCPオフロードエンジンを利用するには、対応するNICと、それを適切に制御するOSのドライバーソフトウェアが必要となる。また、すべてのプロトコル処理がオフロードされるわけではなく、例えばSSL/TLSなどの暗号化処理は、通常は専用の暗号化アクセラレータがない限りCPUで行われる。そのため、導入の際には、自身のシステムがTOEの恩恵を最大限に受けられる通信パターンを持っているか、またNICやOSが対応しているかを十分に確認することが重要である。この技術は、CPUがネットワーク通信処理に費やす時間を減らし、システム全体のパフォーマンスと効率を高めるための重要な要素となっている。

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