アクセラレータ(アクセラレータ)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

アクセラレータ(アクセラレータ)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

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読み方

日本語表記

アクセラレータ (アクセラレータ)

英語表記

accelerator (アクセラレータ)

用語解説

アクセラレータとは、コンピュータシステムにおいて特定の処理を高速化するために利用されるハードウェアまたはソフトウェア、あるいはその両方を指す。汎用的な中央処理装置(CPU)だけでは処理能力に限界がある場合や、特定のタスクにおいて効率が悪い場合に、その処理を専門的に担当させることでシステム全体の性能を向上させる役割を担う。

コンピュータシステムにおいて、CPUは多様なタスクをこなすために設計された汎用性の高いプロセッサである。しかし、グラフィックス処理、科学技術計算、人工知能(AI)の学習といった特定の種類の計算は、非常に大量のデータを並列に処理する必要があるため、CPUだけでは時間がかかりすぎる、あるいは電力効率が悪いという課題がある。そこでアクセラレータが導入される。アクセラレータは、その専門性によってCPUの負荷を軽減し、システム全体の処理スループットを高め、応答速度を向上させる効果がある。これにより、ユーザー体験の向上、消費電力の削減、大規模なデータ処理の実現などが可能となる。

アクセラレータの種類は多岐にわたるが、代表的なものとしてグラフィックス処理装置(GPU)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、特定用途向け集積回路(ASIC)などが挙げられる。

GPUは元々、PCやワークステーションのディスプレイに画像を表示するためのグラフィックス処理に特化したプロセッサとして開発された。その特徴は、多数のシンプルな演算コアを並列に動作させることで、大量のデータを同時に処理できる点にある。この並列処理能力が、近年、グラフィックス以外の用途にも応用され、特にAIにおけるディープラーニングの学習、科学シミュレーション、ビッグデータ分析、高性能計算(HPC)といった分野で強力なアクセラレータとして利用されている。GPUは、CPUが苦手とする浮動小数点演算や行列演算などを効率的に実行することで、これらの処理を劇的に高速化できる。CUDAやOpenCLといった並列コンピューティングプラットフォームが提供され、プログラマはGPUの能力を最大限に活用するためのプログラムを記述できる。

FPGAは、半導体チップ上に配置された多数の論理回路ブロックと配線リソースを、ユーザーがプログラムによって自由に構成できる半導体デバイスである。汎用CPUのように様々な処理をこなす柔軟性と、特定用途に特化したASICに近い高速性を併せ持つ。FPGAの最大の特徴は、システムが稼働中でも、あるいは開発段階で、論理回路の構成を何度でも変更できる点にある。これにより、特定のアルゴリズムやプロトコルに最適化されたカスタムハードウェアを、比較的短期間かつ低コストで開発できる。金融取引の超高速処理、ネットワーク機器でのパケット処理、リアルタイム画像処理、データセンターにおける特定ワークロードの高速化など、低レイテンシ(低遅延)が求められる分野や、頻繁な機能変更が想定される用途で利用されることが多い。

ASICは、特定のアプリケーションや機能のためにカスタム設計された集積回路である。製品出荷後にその回路構成を変更することはできないが、特定用途に最適化されているため、消費電力あたりで最高の性能を発揮し、最も高い処理効率を実現できる。開発には多大な初期費用と長い開発期間が必要となるが、大量生産される製品や、極限まで性能や電力効率を追求するような用途で採用される。例えば、ビットコインのマイニング専用チップ、スマートフォンに搭載されるアプリケーションプロセッサ、データセンターで利用されるAI推論チップ(GoogleのTensor Processing Unit: TPUなど)などがASICの代表例である。ASICは、FPGAよりもさらに高性能・高効率だが、開発の柔軟性は低い。

近年では、データ処理装置(DPU: Data Processing Unit)やインテリジェント処理ユニット(IPU: Intelligent Processing Unit)、あるいはSmartNIC(スマートNIC)といった新しいタイプのアクセラレータも登場している。これらは主にデータセンターやクラウドコンピューティング環境において、ネットワーク、ストレージ、セキュリティといったインフラ関連の処理をCPUからオフロードし、専門的に処理することを目的としている。これにより、CPUはアプリケーションの実行に専念でき、システム全体のスループット向上やセキュリティ強化に貢献する。

アクセラレータの利用が拡大している背景には、データ量の爆発的な増加、AIや機械学習の急速な発展、そしてCPUの性能向上が物理的な限界に近づいているという要因がある。ムーアの法則が緩やかになり、CPUの単体性能向上がかつてほど期待できなくなった中で、特定の処理を専門のアクセラレータに分担させることで、システム全体の性能を高めるアプローチが主流となっている。システムエンジニアがこれらのアクセラレータ技術を理解することは、将来のシステム設計や最適化において不可欠な知識となる。アクセラレータを適切に活用することで、要求される性能や電力効率を満たし、コストを最適化することが可能となるからである。

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