【ITニュース解説】お盆休みに作ったAI議事録ツールのレシピをいろいろアレンジしたらこうなった
2025年09月07日に「Qiita」が公開したITニュース「お盆休みに作ったAI議事録ツールのレシピをいろいろアレンジしたらこうなった」について初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。
ITニュース概要
個人開発者が、音声認識AI「Whisper」とChatGPTを活用した議事録作成ツールを正式リリース。音声ファイルから文字起こし、要約、タスク抽出までを自動化できる。以前公開したバージョンからUIを改善し、環境構築も簡略化され、より使いやすくなった。
ITニュース解説
会議の議事録作成は、多くのビジネスパーソンにとって時間のかかる作業である。この課題を解決するため、ある個人開発者が音声ファイルから自動で議事録を生成するAIツールを開発し、その詳細を公開した。このツールは、複数の先進的なAI技術を組み合わせることで、高精度な議事録作成を個人のコンピュータ上で実現するものである。システムエンジニアを目指す者にとって、既存の技術を組み合わせて実用的なアプリケーションを構築する好例と言える。
このAI議事録ツールの処理は、大きく分けて三つのステップで構成されている。第一のステップは、会議の音声データをテキストデータに変換する「音声認識」である。ここでは、OpenAIが開発した高精度な音声認識モデル「Whisper」が利用されている。Whisperは、大量の音声データで学習されており、多様なアクセントや専門用語、雑音環境下においても高い精度で文字起こしができるという特徴を持つ。ツールでは、ユーザーが処理速度と精度のバランスを考慮して、Whisperのモデルサイズを選択できるようになっている。例えば、より高い精度を求める場合は大規模なモデルを、迅速な処理を優先する場合は小規模なモデルを選ぶことができる。こうした処理は、特にGPUと呼ばれる高速な並列計算を得意とするハードウェアを搭載したコンピュータで行うと、処理時間を大幅に短縮することが可能だ。
第二のステップは、文字起こしされたテキストに「誰が話したか」という情報を付与する「話者分離」である。複数の参加者がいる会議では、単に発言内容をテキスト化するだけでは、誰の発言か分からず議事録として不十分である。この課題を解決するために、「pyannote.audio」というオープンソースのライブラリが活用されている。このライブラリは、音声の波形から話者の声の特徴を識別し、「話者A」「話者B」のように発言者を区別する。これにより、生成される議事録は、発言者ごとに整理された、非常に可読性の高い形式となる。
第三のステップは、生成されたテキストデータを要約し、重要な情報を抽出する工程である。長い会議の文字起こしテキストは膨大な量になるため、そのまますべてを読むのは非効率的だ。そこで、このツールでは「大規模言語モデル(LLM)」を活用して、テキストの要約、要点整理、ToDoリストの作成、決定事項の抽出といった高度な情報整理を行う。ユーザーは、OpenAIのGPTシリーズやGoogleのGeminiといった著名なLLMから、利用したいモデルを選択できる。これらのLLMに対して、「この会議の内容を要約してください」「やるべきことをリストアップしてください」といった自然言語での指示、すなわち「プロンプト」を与えることで、AIが文脈を理解し、人間が求める形式で情報を整理・抽出してくれる。出力の質はプロンプトの設計に大きく依存するため、いかに的確な指示を与えるかという「プロンプトエンジニアリング」の技術が重要となる。
このツールの大きな特徴は、専門的な知識がない人でも簡単に利用できるよう、グラフィカルな操作画面(GUI)が提供されている点である。プログラミングでよく用いられるPythonという言語の「Tkinter」というライブラリを使ってGUIが構築されており、ユーザーは音声ファイルを選択し、ボタンをクリックするだけで一連の処理を実行できる。また、もう一つの重要な特徴として、処理がユーザー自身のコンピュータ内で完結する点が挙げられる。機密性の高い会議の音声データを外部のサーバーにアップロードする必要がないため、情報漏洩のリスクを大幅に低減できる。これは、セキュリティを重視する企業にとって非常に大きな利点となる。LLMを利用する際には、APIキーと呼ばれるサービス利用のための認証情報が必要になるが、これもツール上で簡単に設定できるよう配慮されている。
このように、このAI議事録ツールは、Whisperによる高精度な音声認識、pyannote.audioによる話者分離、そしてGPTやGeminiといったLLMによる高度なテキスト生成という、それぞれ独立した強力な技術を巧みに組み合わせることで、議事録作成という具体的な課題を解決する実用的なアプリケーションとして成立している。オープンソースとして公開されている技術や、APIとして提供されているサービスを組み合わせることで、個人でも価値の高いソフトウェアを開発できることを示す優れた事例である。今後はリアルタイムでの文字起こし機能の追加なども検討されており、さらなる発展が期待される。