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【ITニュース解説】Browser Fingerprint Detector

2025年09月09日に「Hacker News」が公開したITニュース「Browser Fingerprint Detector」について初心者にもわかりやすく解説しています。

作成日: 更新日:

ITニュース概要

ブラウザの言語や画面解像度といった設定情報を組み合わせ、ユーザーを識別する技術が「ブラウザフィンガープリント」である。この「指紋」は極めてユニークで、Cookieなしでのユーザー追跡を可能にし、広告技術などに活用されている。(116文字)

出典: Browser Fingerprint Detector | Hacker News公開日:

ITニュース解説

ウェブサイトを閲覧する際、私たちの行動が「Cookie」という仕組みによって記録されていることは広く知られている。しかし、Cookieに依存せずにユーザーを識別し、追跡するための技術が存在する。それが「ブラウザフィンガープリンティング」と呼ばれる手法である。これは、私たちが使っているウェブブラウザやコンピュータが持つ様々な情報を収集し、それらを組み合わせることで、まるで人間の指紋のように一人一人に固有の識別子(フィンガープリント)を作成する技術だ。このフィンガープリントは非常に精度が高く、たとえCookieを削除したり、プライベートブラウジングモードを使用したりしても、ユーザーを特定できてしまう可能性がある。

ブラウザフィンガープリントは、単一の情報ではなく、多種多様な情報の集合体から生成される。まず、基本的な情報として、OSの種類とバージョン(例:Windows 11, macOS Sonoma)、使用しているブラウザの種類とバージョン(例:Google Chrome 125)、画面の解像度、ブラウザで設定している言語、タイムゾーンなどが収集される。これだけでもかなりの組み合わせが考えられるが、フィンガープリンティングの精度を飛躍的に高めているのは、より高度な技術によって取得される情報である。その代表例が「Canvasフィンガープリンティング」だ。これは、ブラウザの描画機能であるHTML5 Canvas APIを利用する。ウェブサイトは、ユーザーには見えない領域で特定の文字列や図形を描画するようにブラウザに命令する。このとき、描画結果のピクセルデータは、使用しているコンピュータのグラフィックカード(GPU)、グラフィックドライバ、OSのフォントレンダリング処理などの微妙な違いによって、ユーザーごとにわずかに異なるものとなる。この微細な差異を含む描画結果をデータ化し、ハッシュ値と呼ばれる一意の文字列に変換することで、極めて強力な識別子として利用するのである。同様の手法として、3Dグラフィックスを描画するWebGL APIを利用した「WebGLフィンガープリント」や、コンピュータの音声処理能力の違いを利用する「Audioフィンガープリント」も存在する。これらもCanvasと同様に、ハードウェアやドライバの個体差を識別情報として活用する技術だ。さらに、コンピュータにインストールされているフォントのリスト、ブラウザに導入されているプラグインの一覧、CPUのコア数といったハードウェア情報までもが収集の対象となりうる。

これら一つ一つの情報は、それ単体で見れば決して珍しいものではないかもしれない。「Windows 11を使っている」「Google Chromeを利用している」というユーザーは世界中に数多く存在する。しかし、これらの情報を数十、数百と組み合わせることで、そのパターンは指数関数的に絞り込まれ、結果として極めてユニークなものになる。例えば、「Windows 11で、特定のバージョンのChromeを使い、画面解像度が1920x1080で、タイムゾーンが日本標準時で、特定のフォント群がインストールされており、Canvasフィンガープリントのハッシュ値が特定の値である」という条件をすべて満たすユーザーは、世界中でただ一人である可能性が非常に高くなる。このように、個々ではありふれた情報の組み合わせによって個人を特定するというのが、ブラウザフィンガープリンティングの基本原理である。

この技術が利用される主な目的は二つある。一つは、セキュリティの向上だ。例えば、オンラインバンキングなどのサービスで、登録されているいつもの環境とは異なるフィンガープリントを持つデバイスからのログインが試みられた場合、システムはそれを不審なアクセスと判断し、追加の認証を要求したり、アクセスをブロックしたりすることができる。これにより、アカウントの乗っ取りなどの不正利用を未然に防ぐ効果が期待できる。もう一つの主要な目的は、ウェブ広告やマーケティングにおけるユーザー追跡である。近年、AppleのITP(Intelligent Tracking Prevention)やGoogleのサードパーティCookie廃止の動きなど、プライバシー保護の観点からCookieの利用が厳しく制限されるようになってきた。広告業界では、このCookieに代わるユーザー追跡技術として、ブラウザフィンガープリンティングへの関心が高まっている。ユーザーの閲覧履歴や興味関心をサイト横断で追跡し、パーソナライズされた広告を配信するために、この技術が利用されるケースがある。

一方で、ブラウザフィンガープリンティングは深刻なプライバシー上の課題をはらんでいる。ユーザーが意識しないうちに、また明示的な同意なく、ウェブサイトを横断して行動が追跡される可能性があるからだ。匿名でインターネットを利用しているつもりでも、実際にはフィンガープリントによって個人が識別されているという状況は、多くのユーザーにとって望ましいものではないだろう。こうした問題に対処するため、プライバシー保護を重視するブラウザは対策機能を導入している。例えば、Tor Browserは、多くの情報を標準化し、すべてのユーザーが似通ったフィンガープリントを持つように見せかけることで、個人の特定を困難にしている。また、BraveやFirefoxといったブラウザも、フィンガープリンティングを試みる既知のスクリプトを検知し、ブロックする機能を標準で搭載している。ユーザーができる対策としては、これらのプライバシー保護機能が強力なブラウザを選択することや、トラッキングを防止するブラウザ拡張機能を利用することが挙げられる。ただし、ブラウザの設定を過度にカスタマイズすることは、かえって自身のフィンガープリントをユニークなものにしてしまい、追跡されやすくなるというジレンマも存在する。ブラウザフィンガープリンティングは、ウェブの利便性や安全性を支える技術であると同時に、常にプライバシーとのトレードオフの関係にある。システム開発に携わる者として、このようなユーザー識別の仕組みと、それを取り巻く技術的・倫理的な動向を理解しておくことは不可欠である。

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