【ITニュース解説】Data modeling guide for real-time analytics with ClickHouse

2025年09月05日に「Hacker News」が公開したITニュース「Data modeling guide for real-time analytics with ClickHouse」について初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

作成日: 更新日:

ITニュース概要

ClickHouseを使ったリアルタイム分析において、データを効率的に扱うための設計(データモデリング)方法を解説する記事。高速なデータ処理と分析を実現するために、データ構造をどのように構築すべきか、具体的なアプローチを説明している。

ITニュース解説

システムエンジニアを目指すあなたが、これから情報システムを設計・構築していく上で「データモデリング」という言葉に触れる機会は多いだろう。データモデリングとは、システムで扱うデータをどのように整理し、どのような形で保存するかを設計する作業のことだ。これは、アプリケーションがデータを効率的に利用し、ユーザーが求める情報を素早く提供するために非常に重要なプロセスとなる。特に、大量のデータをリアルタイムで分析するようなシステムでは、このデータモデリングの良し悪しがシステムの性能を大きく左右する。

今回解説する記事では、リアルタイム分析に特化したデータベースである「ClickHouse」を使ったデータモデリングについて詳しく解説している。ClickHouseは、オンライン分析処理(OLAP)に最適化されたオープンソースのデータベースで、膨大なデータを高速に集計・分析できることが最大の特徴だ。例えば、Webサイトのアクセスログをリアルタイムで分析して、今、どのページにどれくらいのユーザーがいるかを瞬時に把握したり、IoTデバイスから送られてくるセンサーデータを分析して異常を即座に検知したりするような用途で活躍する。

ClickHouseが高速な理由の一つに、その「列指向(カラムナー)」というデータ格納方式がある。一般的なデータベース(行指向)は、データを1行ずつまとめて保存するが、ClickHouseのような列指向データベースは、同じ種類のデータを列ごとにまとめて保存する。これにより、特定の列だけを読み込む際に、必要なデータだけを効率的に取り出すことができ、集計処理などが非常に速くなるのだ。しかし、このClickHouseの特性を最大限に活かすためには、適切なデータモデリングが不可欠となる。

記事では、いくつかの代表的なデータモデリング手法とそのClickHouseでの適用方法を紹介している。

まず紹介されているのは「フラットテーブル」という手法だ。これは、分析に必要なすべてのデータを一つの大きなテーブルにまとめてしまう方法である。例えば、ECサイトの注文データであれば、注文ID、商品名、顧客名、購入日時、価格など、関連する情報を全て一つのテーブルのカラムとして保持する。この手法の大きな利点は、データを取り出す際に複数のテーブルを結合する手間が不要になるため、非常にシンプルで高速なクエリ(データ取得命令)が実行できることだ。ClickHouseは列指向データベースであるため、フラットテーブルのように幅広なテーブルでも特定のカラムだけを効率的に読み込めるため、この手法と非常に相性が良い。しかし、データの重複が発生しやすく、更新処理には向かないという欠点もある。例えば、同じ商品名が何度も登場する場合、その都度同じ文字列が保存されるため、ストレージの無駄が生じる可能性がある。

次に紹介されているのが、伝統的なデータモデリング手法である「スター(星型)スキーマ」と「スノーフレーク(雪片型)スキーマ」だ。これらのスキーマは、データの冗長性(重複)を排除し、データの整合性を保つ「正規化」という考え方に基づいている。スター/スノーフレークスキーマでは、事実を表す「ファクトテーブル」と、その事実の詳細情報を提供する「ディメンションテーブル」という二種類のテーブルを組み合わせる。例えば、ファクトテーブルには注文IDや商品ID、顧客IDのようなキー情報と数値データ(数量、価格など)を格納し、商品IDから商品名やカテゴリ情報を、顧客IDから顧客名や住所情報を取得するためにディメンションテーブルを参照する。ディメンションテーブルは、同じ情報が何度も使われる場合に、その情報を一箇所に集約しておくことでデータの重複を減らし、変更があった際の更新も容易にする。スノーフレークスキーマは、さらにディメンションテーブルを細分化して正規化を進めたものだ。これらのスキーマは、データの整合性や柔軟性が高い反面、分析のために複数のテーブルを「結合(JOIN)」する必要があり、ClickHouseのようなリアルタイム分析データベースでは、この結合処理がパフォーマンスのボトルネックになる可能性がある。そのため、ClickHouseでスター/スノーフレークスキーマを採用する際には、結合処理が高速に行われるような設計(例えば、ディメンションテーブルが比較的小さく、頻繁に変わらない場合に有効)や、後述のマテリアライズドビューの活用が重要になる。

「マテリアライズドビュー」は、事前に計算・集計された結果をテーブルとして保存しておく仕組みだ。例えば、毎日の売上合計や月ごとのユーザー数を頻繁に分析する場合、その集計処理は毎回行うのではなく、マテリアライズドビューとして一度計算しておき、その結果を直接参照することで、クエリの実行時間を大幅に短縮できる。新しいデータが元のテーブルに追加されると、マテリアライズドビューも自動的に更新されるように設定できるため、常に最新の集計結果を利用できる点がメリットだ。しかし、マテリアライズドビューが増えすぎると、データの格納量が増えたり、更新処理のオーバーヘッドが発生したりする可能性があるため、本当に必要な集計に絞って利用することが推奨される。

他にも、ClickHouseのパフォーマンスを最大限に引き出すための考慮点として、いくつかの技術的な要素が紹介されている。 「プライマリキー」の選択は非常に重要だ。プライマリキーはテーブル内の各行を一意に識別するためのもので、ClickHouseではデータを物理的にソートし、効率的に検索するために使われる。クエリでよく使われるカラムや、データを絞り込むためのカラムをプライマリキーに含めることで、検索速度が向上する。 カラムの「データ型」もパフォーマンスに影響を与える。例えば、数値であれば適切なサイズの整数型や浮動小数点型を選ぶ、日付時刻であれば専用の型を使うなど、データに合わせた最適な型を選択することで、ストレージ容量の節約と処理速度の向上が期待できる。 「パーティショニング」は、データを特定の日付やID範囲などで分割し、物理的に異なる場所に保存する仕組みだ。これにより、クエリが特定の期間のデータのみを対象とする場合、不要なパーティションを読み飛ばせるため、処理が高速化される。 また、大規模なシステムでは複数のClickHouseサーバーを連携させて「分散テーブル」を構築することがある。これは、データを複数のサーバーに分散して保存し、クエリ処理も並行して行うことで、さらに高い処理能力と可用性を実現する手法だ。

このように、データモデリングは単にテーブルの構造を考えるだけでなく、データベースの特性やシステムの要件を深く理解し、さまざまな手法や技術を組み合わせて最適な設計を導き出す作業だ。フラットテーブル、スター/スノーフレークスキーマ、マテリアライズドビューといった手法にはそれぞれメリットとデメリットがあり、データの量、更新頻度、クエリの種類、リアルタイム性の要件などに応じて最適な選択が変わってくる。データモデリングは一度行ったら終わりではなく、システムの成長とともに見直しや改善が必要になることもある。常にデータの使われ方を意識し、パフォーマンスと柔軟性のバランスを取りながら、最適なデータ構造を追求していくことが、システムエンジニアとしての腕の見せ所となるだろう。

関連コンテンツ

関連ITニュース

【ITニュース解説】Data modeling guide for real-time analytics with ClickHouse | いっしー@Webエンジニア