【ITニュース解説】How Embedded Finance Is Quietly Eating the World Economy
2025年09月15日に「Medium」が公開したITニュース「How Embedded Finance Is Quietly Eating the World Economy」について初心者にもわかりやすく解説しています。
ITニュース概要
お気に入りのアプリが、決済やローンなど銀行のような金融サービスを提供する「組み込み型金融」が、世界経済に静かに浸透し、大きな影響を与えている。
ITニュース解説
今日のデジタル社会において、私たちの生活はスマートフォンアプリと切っても切り離せないものとなっている。そのアプリが、気づかないうちに「銀行」のような役割を果たすようになってきている。この現象を「組み込み型金融(Embedded Finance)」と呼ぶ。これは、これまで金融機関が提供してきた銀行口座、支払い、融資、保険といった金融サービスが、金融とは直接関係のない他のアプリケーションやサービスの中に自然な形で組み込まれて提供されることを指す。
従来の金融サービスは、銀行の店舗に足を運んだり、銀行の専用アプリを開いたりして利用するのが一般的だった。しかし、組み込み型金融では、例えばオンラインショッピングをしている最中に支払い方法として分割払いや後払いを選択したり、配車サービスを利用した際にアプリ内で自動的に運賃が支払われたりする。これらは、ユーザーが意識することなく、必要な金融サービスがその場その瞬間に提供されている典型的な例だ。
なぜこのような変化が起きているのか。その中心にあるのは、API(Application Programming Interface)という技術だ。APIは、異なるソフトウェアやサービス間で情報をやり取りするための約束事や仕組みのことで、これを介して金融機関は自社の金融機能を外部のアプリケーションに提供できるようになる。例えば、あるEコマースサイトが顧客に後払いオプションを提供したい場合、個別に後払いシステムを構築する代わりに、外部の金融サービスプロバイダーが提供するAPIを利用して、その機能を自社のサイトに組み込むことができる。これにより、Eコマースサイトは金融サービスの専門知識がなくても、顧客に魅力的な支払い方法を提供できるようになるのだ。
この動きは、様々な業界で進んでいる。小売業界では、ECサイトで商品を購入する際に、その場ですぐにローンを組んだり、後払いの選択肢が表示されたりする。これにより、顧客は商品の購入を決断しやすくなり、販売者は売上を向上させることができる。SaaS(Software as a Service)企業、例えば会計ソフトウェアを提供する企業が、中小企業に対してその会計データを基にした運転資金の融資を提案するケースもある。これは、企業の財務状況を最もよく把握しているソフトウェア提供者が、最も適切なタイミングで金融サービスを提供できるという利点がある。配車アプリやデリバリーアプリでは、乗車や注文が完了した瞬間に登録されたカードから自動的に決済が行われ、利用者は現金のやり取りやカード情報の入力といった手間から解放される。
組み込み型金融を支える技術はAPIだけではない。クラウドコンピューティングも重要な役割を果たしている。クラウド上に金融サービスが構築されることで、高いスケーラビリティ(利用者増加に対応できる能力)と柔軟性が確保され、かつ初期投資を抑えることが可能になる。また、大量の顧客データや取引データを分析するビッグデータ技術や、それを活用して個々の顧客に最適な金融商品を提案するAI(人工知能)も、この分野の進化を加速させている。例えば、過去の購買履歴や行動パターンに基づいて、最も適切なローン金利や保険商品をリアルタイムで提示するといったことが可能になる。
もちろん、金融サービスを扱う上で最も重要な要素の一つがセキュリティだ。ユーザーの個人情報や金融資産を保護するためには、強固なデータ暗号化、不正アクセス防止、認証システムなどが不可欠となる。システムエンジニアは、これらのセキュリティ対策を設計し、実装する上で中心的な役割を果たすことになる。また、各国の金融規制(FinTech規制など)も複雑であり、システム開発においてはこれらを遵守するための法務知識や、コンプライアンスに関する配慮も求められる。
システムエンジニアを目指す皆さんにとって、この組み込み型金融のトレンドは非常に大きな意味を持つ。まず、新しいシステム開発の機会が爆発的に増えることが予想される。金融機関と非金融企業、あるいは複数の非金融企業間のAPI連携を設計・開発するスキルは今後ますます需要が高まるだろう。また、ユーザーが直感的に利用できるUI(ユーザーインターフェース)やUX(ユーザーエクスペリエンス)を設計する能力も重要だ。金融サービスはしばしば複雑に感じられるが、組み込み型金融ではそれをいかにシンプルかつスムーズに提供するかが成功の鍵となるからだ。
さらに、この分野で働くシステムエンジニアは、単にコードを書くだけでなく、金融の基本的な知識や、ビジネスロジックを理解する能力も求められるようになる。例えば、融資の審査プロセス、決済システムの仕組み、リスク管理の考え方などをIT技術と結びつけて考える必要がある。これは、技術的なスキルだけでなく、ビジネス理解力や問題解決能力を向上させる良い機会となる。
組み込み型金融は、世界経済に大きな影響を与えている。消費者にとっては、金融サービスがより身近で、より便利になる。これまで銀行口座を持てなかった人々や、従来の金融サービスから取り残されていた人々(アンダーバンクト、アンバンクト)が、スマートフォンアプリを通じて金融サービスにアクセスできるようになる「金融包摂」の促進にも貢献している。企業にとっては、新たな収益源を確保し、顧客ロイヤルティを高めるチャンスとなる。これにより、金融業界と非金融業界の境界線は曖昧になり、競争は激化し、新たなビジネスモデルが次々と生まれるだろう。この大きな変化の波の中で、システムエンジニアは重要な役割を担い、未来の金融システムを形作っていくことになる。