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【ITニュース解説】What Happens If You Give a Fruit Fly Brain External Memory?

2026年09月16日に「Dev.to」が公開したITニュース「What Happens If You Give a Fruit Fly Brain External Memory?」について初心者にもわかりやすく解説しています。

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ITニュース概要

ショウジョウバエ脳の神経系シミュレーションをゲームと接続した実験を機に、筆者はAIの記憶システムに疑問を投げかける。現在のAI記憶は「検索型」だが、人間のように「検索なしに影響する」記憶を模索。脳シミュレーションに、状態を微妙に調整する外部記憶を与え、行動への影響や「個性」の発生を実験した。

ITニュース解説

近年、Googleの研究者たちとその共同研究者たちは、驚くべきプロジェクトを推進している。彼らはオスのショウジョウバエの神経系を詳細にマッピングし、その全貌を明らかにした。これは約16万6700個のニューロンと1億2500万個のシナプス結合からなる、小さな脳の複雑な配線図だ。この膨大なデータは、生物の脳がどのように情報を処理し、行動を生み出すのかを理解するための重要な一歩となる。

この生物学的配線図をもとに、DOOMFLYというプロジェクトが誕生した。これは、マッピングされたショウジョウバエの神経系のモデルをソフトウェア上で構築し、それを人気ゲーム「DOOM」に接続するという斬新な試みだ。ここで重要なのは、DOOMFLYが生きているハエでもなければ、意識を持つ存在でもないということだ。あくまで、現実の神経系の配線図をデジタルデータとして再現し、そのダイナミクス(振る舞い)やインターフェース(接続部分)をソフトウェアでシミュレーションしたものだ。このプロジェクトは、脳の仕組みを深く探求するためのユニークな実験として注目されている。

しかし、このDOOMFLYプロジェクトは、現在のAI(人工知能)が持つメモリシステムについて、ある根源的な疑問を投げかけている。私たちが構築しているAIのメモリシステムは、多くの場合、非常にツール的な性質を持っている。「何か出来事が起こったらそれを保存し、後で似たような出来事があったら検索して呼び出す」という仕組みだ。大規模言語モデル(LLM)のようなAIエージェントでは、この方式がうまく機能する。しかし、これは人間の記憶とは大きく異なるように感じられる。

人間は、「よし、あの記憶を思い出そう」と意識的に検索をかけるわけではない。例えば、ある匂いを嗅いだ瞬間に、20年前の特定の場所にタイムスリップしたような感覚に襲われたり、初めて入ったはずの部屋がなぜか懐かしく感じられたりする経験があるだろう。私たちの頭の中では、特定の検索関数が呼び出されているわけではない。同様に、ショウジョウバエが「SKILL.md」のようなファイルを参照して、「いつメモリを検索すべきか」を判断しているはずがないのだ。

現代の多くのAIエージェントは、LLMにシステムプロンプト、ツールの定義、SKILL.md(スキル定義ファイル)、ワークフロー、そして「memory.search()」や「memory.save()」といったメモリ操作関数を組み合わせたような構成になっている。しかし、ショウジョウバエの脳には、このような仕組みは存在しない。ハエはメモリを読み取ることも、JSON形式のデータを解析して「敵が現れたから右に曲がった」といった情報を処理することもできない。

もし外部メモリがシミュレートされたハエの行動を変えることができるとすれば、そのメモリはハエの「計算状態」の一部として完全に統合される必要がある。これは単にデータを保存して検索するよりもはるかに難しい問題であり、同時に脳の記憶の仕組みをより忠実に再現しようとする正直なアプローチでもある。

ショウジョウバエの脳がすでに実行している基本的な情報処理の流れは、次のようになっている。感覚入力(目や触覚からの情報)が神経系に入力され、それが現在の神経状態を変化させる。この変化がコネクトーム(神経回路網)のダイナミクス(動的な振る舞い)を通じて伝わり、最終的に運動活動(例えば、羽ばたく、歩くといった行動)に変換され、それが環境に影響を与える。

提案されている新しいメモリシステムは、この既存のループの「隣」に配置される。そして、ハエ自身がそのメモリシステムを明示的に呼び出すことは決してない。このメモリシステムは、ハエの現在の神経状態を常に「観察」する。そして、以前に似たような神経状態が起こったことを検出すると、単に結果を返すのではなく、「変調」として神経系にフィードバックする。これは、特定のニューロン集団が発火しやすくなったり、あるいは発火しにくくなったりするような、微妙な影響として現れる。残りの行動は、神経ネットワーク自体が解決する。

ここには、メモリを「検索する」という行為も、「何かを探し出す」という動作も存在しない。メモリはただ「関連性を持つ」ようになるのだ。このアプローチでは、問題の中心が「情報検索(retrieval)」から「共鳴(resonance)」へとシフトする。過去の経験が、現在の神経活動のパターンに共鳴し、そのパターンを変化させるという考え方だ。

筆者は、このようなシステムを安易に「意識」と呼ぶことはしない。意識とは何かを完全に理解している人はいないからだ。しかし、これを「個性(individuality)」と呼ぶ。個性とは、実際に測定できる部分だからだ。例えば、脳がリセットされたとしても、ある行動パターンがどれだけ維持されるかを数値化することで、その個性を測ることができるかもしれない。

この考え方を検証するため、筆者はショウジョウバエの全コネクトームを模倣するのではなく、すべての前提を自分で制御できるような、小さなリカレントネットワーク(再帰型ネットワーク。過去の情報を保持し、現在の入力に影響を与えることができるAIモデルの一種)を構築した。そして、その隣に「Mycelium」という名のメモリシステムを配置した。

この実験における重要なルールはただ一つだ。メモリシステムは神経状態を変えることができるが、行動そのものを「選択する」ことは決してできない。もしメモリシステムが「右に曲がれ」と直接指示するようなことがあれば、それは単に偽の脳が取り付けられたボット(自動プログラム)を作ったに過ぎない。そうではなく、メモリは、特定の神経状態に到達しやすくしたり、あるいは到達しにくくしたりするような、より巧妙な影響を与える。そして、実際の行動は、その影響を受けた神経ネットワーク自体が生成するようにするのだ。

筆者はこのシステムを実際に動かした。その後、脳の状態をリセットし、さらにそのメモリを新しい脳に移動させる実験を行った。そして、最も示唆に富んだのは、二つの全く同じシステム間でメモリを交換するという実験だった。この最後の実験こそが、筆者にとって、これが単なる楽しいメモリのデモ以上の意味を持つと感じさせたきっかけである。

この研究は、AIにおけるメモリの概念を根本から見直し、より生物学的で自然な記憶の仕組みに近づける可能性を秘めている。それは、現在のAIが抱える課題に対し、新たな視点と解決策をもたらすかもしれない。

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