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【ITニュース解説】Google admits the open web is in ‘rapid decline’

2025年09月09日に「The Verge」が公開したITニュース「Google admits the open web is in ‘rapid decline’」について初心者にもわかりやすく解説しています。

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ITニュース概要

Googleは、これまで「ウェブは繁栄している」と主張してきたが、裁判資料で一転、「オープンウェブは急速に衰退している」と認めた。検索エンジンを取り巻く環境の大きな変化を示唆している。(89字)

ITニュース解説

インターネットの世界を牽引してきたGoogleが、法廷に提出した文書の中で「オープンなウェブは急速に衰退している」と認めたことが明らかになり、IT業界に大きな波紋を広げている。これは、Googleがこれまで公の場で「ウェブは繁栄している」と主張してきた内容とは正反対であり、インターネットが大きな転換期を迎えていることを示唆している。

まず、「オープンなウェブ」とは何かを理解する必要がある。これは、特定の企業や組織に支配されることなく、誰もが自由に情報を発信し、アクセスできるインターネットの理想的な姿を指す言葉である。世界中の無数のウェブサイトが互いにリンクで結ばれ、情報が自由に行き来することで、知識の共有や新しいサービスの創出が促されてきた。Google検索も、このオープンなウェブに存在する膨大な情報を整理し、ユーザーが目的のサイトにたどり着くための「案内役」として機能することで成長してきた。

今回Googleがこのような発言をした背景には、アメリカの司法省から起こされている独占禁止法に関する裁判がある。Googleは、AppleのiPhoneやSafariブラウザなどで自社の検索エンジンを標準設定にしてもらうために、年間で巨額の費用を支払っている。この契約が、競合他社の参入を妨げ、不公正な独占状態を生んでいるのではないかと問題視されているのだ。この裁判においてGoogleは、自社の契約の正当性を主張するために「オープンなウェブの衰退」論を展開した。具体的には、Microsoftのような競合他社がAIを搭載した検索エンジン(Bingなど)を使って、ユーザーを自社のサービス内に留まらせようとしていると指摘。もしGoogleが標準の検索エンジンでなくなれば、競合によるユーザーの囲い込みが加速し、様々なウェブサイトへ人々が訪れる機会が失われ、オープンなウェブはさらに衰退してしまうと主張したのである。つまり、自社の独占的な地位こそが、オープンなウェブを守るために必要だという論法である。

では、なぜウェブは衰退しているのだろうか。その最大の要因は、生成AIとソーシャルメディアの台頭にある。ChatGPTに代表されるAIチャットボットは、ユーザーの質問に対して、複数のウェブサイトから情報を集約・要約し、直接的な答えを提示する。Google自身も「AI Overview」という同様の機能を検索結果に導入している。これにより、ユーザーは情報源である個々のウェブサイトを訪れることなく、検索結果ページだけで満足してしまうケースが増加した。これは、ウェブサイト運営者から見れば、サイトへのアクセス数が減少し、広告収入やサービスの利用機会が失われることを意味する。

また、TikTokやInstagramといったソーシャルメディアプラットフォームも、この流れを加速させている。これらのサービスは、ユーザーを可能な限り自社のアプリ内に留めるように設計されており、外部のウェブサイトへのリンクは敬遠される傾向にある。若者を中心に、情報を探す際にGoogle検索ではなく、ソーシャルメディアのアプリ内検索機能を利用する人も増えている。これらのプラットフォームは、それぞれが独立した閉鎖的な生態系を形成しており、これは「walled garden(壁に囲まれた庭)」とも呼ばれる。ユーザーがこの庭の中で全ての活動を完結させてしまうため、庭の外にあるオープンなウェブへの関心が薄れていく。

この大きな変化は、これからシステムエンジニアを目指す人々にとっても無関係ではない。従来、ウェブサイトやウェブアプリケーションを開発する上で、Google検索からの集客を最大化するための技術、いわゆるSEO(検索エンジン最適化)は極めて重要だった。しかし、検索エンジンからウェブサイトへのアクセス自体が減少していくのであれば、ウェブサイトの役割やビジネスモデルそのものを見直す必要が出てくる。これからは、単に検索で上位表示されるウェブサイトを作るだけでなく、AIやソーシャルメディアといった新しいプラットフォーム上で、いかに情報やサービスを届け、価値を提供できるかが重要になる。例えば、AIが参照しやすいように構造化されたデータを提供したり、各種ソーシャルメディアのAPI(ソフトウェア同士が情報をやり取りするための仕組み)と連携したシステムを構築したりする技術の需要が高まる可能性がある。

インターネットの情報流通の構造が、多様なウェブサイトを巡る「回遊型」から、特定のプラットフォーム内で完結する「滞在型」へとシフトしつつある。Googleの発言は、この不可逆的な変化を自ら認めたものと言える。システムエンジニアには、こうしたインターネット全体のアーキテクチャの変化を深く理解し、新しい技術トレンドに柔軟に対応しながら、未来のシステムを設計・構築していく能力がこれまで以上に求められることになるだろう。

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