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【ITニュース解説】Microsoft avoids EU fine after Slack complained about Teams bundling

2025年09月12日に「The Verge」が公開したITニュース「Microsoft avoids EU fine after Slack complained about Teams bundling」について初心者にもわかりやすく解説しています。

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ITニュース概要

Microsoftは、TeamsをOffice 365などと抱き合わせ販売した件で、EUの独占禁止法違反の疑いをかけられた。Slackからの苦情が発端だ。Microsoftが競争上の懸念を解消する改善策を提示したことで、EUからの罰金支払いを回避した。

ITニュース解説

今回のニュースは、Microsoftが提供するコミュニケーションツール「Teams」を、ビジネス向けの生産性向上スイート「Office 365」や「Microsoft 365」に抱き合わせ販売していたことが、欧州連合(EU)の独占禁止法に違反する疑いがあるとされた問題についてだ。この件で欧州委員会から調査を受けていたMicrosoftは、最終的に制裁金を回避した。競合サービスであるSlackからの苦情をきっかけに始まったこの問題は、Microsoftが競争上の懸念に対処するための改善策、いわゆる「コミットメント」を提示し、それが欧州委員会に受け入れられたことで解決に至ったのだ。

まず、ニュースに出てくる主要な製品について理解を深めよう。Office 365やMicrosoft 365は、Word、Excel、PowerPointといった広く使われるオフィスアプリケーションに加え、クラウドストレージ、メールサービス、そしてTeamsのようなコミュニケーションツールなどを包括的に提供するサブスクリプションサービスだ。多くの企業や組織で日々の業務に不可欠なツールとして、世界中で利用されている。一方、Teamsは、チャット、ビデオ会議、音声通話、ファイル共有、共同編集など、チームでの協業を円滑にするための多機能なプラットフォームで、特にリモートワークの普及に伴い、その利用が急速に拡大した。

問題の核心は、このTeamsがOffice 365やMicrosoft 365の契約に「バンドル」されていた点にある。バンドルとは、複数の製品やサービスを一つにまとめて提供する、いわゆる抱き合わせ販売のことだ。消費者に利便性をもたらす場合もあるが、市場における競争の公正性を歪める可能性もあるため、独占禁止法の観点から問題視されることがある。

なぜ、このようなバンドルが問題になるのだろうか。ここで重要になるのが「独占禁止法」という考え方だ。独占禁止法は、企業が不当に市場を独占したり、競争を阻害したりする行為を禁じ、健全な市場競争を促進し、消費者の利益を保護するための法律である。公正な競争があれば、企業はより良い製品やサービスをより安い価格で提供しようと努力し、それがイノベーションを生み出し、最終的に消費者全体の利益につながる。

Microsoftは、OSのWindowsやOfficeスイートにおいて、長年にわたり圧倒的な市場シェアを誇ってきた巨大企業だ。このような市場支配力を持つ企業が、その力を利用して特定の製品(この場合はTeams)を普及させようとすると、公平な競争が妨げられる可能性がある。具体的には、多くの企業が既に利用しているOffice 365/Microsoft 365という強力なプラットフォームにTeamsを無料でバンドルすることで、他の競合するコミュニケーションツール(例えばSlackなど)は、最初から不利な立場に置かれてしまう。企業は、既に支払い済みのサービスの一部としてTeamsが提供されているため、あえて別の有料サービスを導入する経済的・運用上のメリットが少なくなる。これにより、消費者の選択肢が実質的に制限され、競合他社が市場で成長する機会が奪われることになりかねないのだ。

この問題に最初に異議を唱えたのが、Teamsの主要な競合サービスの一つであるSlackだった。Slackは2020年に欧州委員会に対し、MicrosoftがTeamsをOffice 365にバンドルしているのは反競争的行為であるとして正式に苦情を申し立てた。Slack側は、MicrosoftがOfficeの優位性を不公正に利用し、競合製品を排除しようとしていると主張したのだ。

欧州委員会はEUの行政機関であり、その重要な役割の一つがEU域内における競争法の執行だ。彼らは企業が市場で公正に競争しているかを監視し、独占禁止法違反の疑いがある場合には調査を行い、必要に応じて罰金を科したり、是正措置を命じたりする権限を持つ。欧州委員会はSlackの申し立てを受け、MicrosoftがTeamsのバンドルを通じて、競合他社に不当な競争上の不利を生じさせている可能性について正式な調査を開始した。彼らは、Microsoftの行為が市場における健全な競争を阻害し、最終的に消費者の選択肢を狭め、イノベーションを阻害する可能性があると懸念したのだ。

この状況に対し、Microsoftは欧州委員会との間で交渉を進め、競争上の懸念に対処するための「コミットメント」を提示した。コミットメントとは、企業が独占禁止法違反の疑いを解決するために自ら提案する具体的な改善策のことだ。今回のニュースでは、その具体的な内容が詳細には明記されていないが、一般的に考えられるのは以下のような措置だ。

一つは、TeamsをOffice 365やMicrosoft 365から切り離し、単独で販売するオプションを提供することだ。これにより、企業はTeamsが必要ない場合、Teamsが含まれないバンドル製品を選ぶことができ、その分コストを抑えられる可能性がある。また、Teamsが必要な企業も、競合製品と比較検討した上で、Teamsを単体で購入するという選択肢が生まれる。もう一つは、競合するコミュニケーションツールがMicrosoftの製品やサービスと連携しやすくするための技術的な障壁を取り除くことだ。例えば、Outlookなどのメールクライアントや他のOfficeアプリケーションから、Teams以外のチャットツールをよりスムーズに利用できるようなAPI(アプリケーションプログラミングインターフェース)の公開や、互換性の向上などが考えられる。これにより、ユーザーは自分の好みに応じて異なるベンダーのツールを組み合わせて使えるようになり、選択の自由度が向上する。

欧州委員会は、Microsoftが提示したこれらのコミットメントが、競争上の懸念を十分に解消し、市場の公正な競争環境を回復させるのに有効であると判断した。その結果、Microsoftは独占禁止法違反による巨額の制裁金を回避することになった。制裁金は企業の財務に大きな打撃を与えるだけでなく、ブランドイメージにも悪影響を及ぼすため、Microsoftにとって今回の回避は大きな成果と言える。

この一件は、システムエンジニアを目指す皆さんにとって、現代のIT業界で何が重要かを示唆している。第一に、Google、Apple、Meta、Amazon、Microsoftといった巨大IT企業の市場支配力に対する規制当局の監視が、世界中でますます厳しくなっているという現実だ。これらの企業のサービスは社会インフラとも言えるほどに普及しているため、そのビジネス慣行が公正であるかが常に問われる。企業は製品やサービスを開発・提供するだけでなく、そのビジネスモデルが法規制や市場競争の原則に適合しているかを常に意識する必要がある。

第二に、オープンなエコシステムと互換性の重要性だ。IT業界では、特定のベンダーの製品に縛られず、様々な製品やサービスを自由に組み合わせて利用できる「オープン性」が重視される傾向にある。今回のMicrosoftのコミットメントも、Teamsだけでなく、競合他社の製品も公平に利用できるような環境を作ることに主眼が置かれている。これは、ユーザーにとっても、より柔軟で最適なソリューションを選択できるメリットがある。最後に、公正な競争がイノベーションと消費者の利益につながるという原則の再確認だ。独占的な状況が続けば、企業は競争の必要性を感じにくくなり、製品やサービスの改善意欲が低下する可能性がある。しかし、複数の企業が切磋琢磨することで、技術革新が促進され、より高性能で使いやすい、あるいはより安価なサービスが次々と生まれてくる。

今回のMicrosoftとEUの合意は、競争法執行機関が、急速に進化するデジタル市場における新たな競争問題にどのように対処していくかを示す一例となった。IT業界でキャリアを築く上では、技術そのものだけでなく、それを取り巻く経済、法律、そして社会的な側面についても理解を深めることが、長期的な視点での成功に不可欠だと言えるだろう。

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