【ITニュース解説】モノリスを“なんちゃってマイクロサービス化”した4ステップ
2025年09月30日に「Qiita」が公開したITニュース「モノリスを“なんちゃってマイクロサービス化”した4ステップ」について初心者にもわかりやすく解説しています。
ITニュース概要
複雑化したモノリスシステムをマイクロサービスに分割したいが、技術的負債や工数不足で困難なケースは多い。この記事では、そのような課題に対し、完全な移行ではなく、段階的に"なんちゃってマイクロサービス化"した4つの手順を紹介する。現実的な改善策として役立つだろう。
ITニュース解説
システム開発の世界では、ソフトウェアの設計方法として大きく「モノリス」と「マイクロサービス」という二つの考え方がある。モノリスとは、システム全体が一つの巨大なプログラムとして作られている状態を指す。例えば、オンラインストアであれば、商品の表示、購入処理、在庫管理、顧客情報管理など、あらゆる機能が一つの塊として動いているイメージだ。このモノリス型システムは、開発初期にはシンプルで扱いやすいというメリットがある。しかし、システムが成長し機能が増えていくと、一つの変更が全体に影響を与えやすくなり、バグのリスクが高まる。さらに、一部の機能をスケールさせたい場合でも、システム全体をスケールさせる必要があり、リソースの無駄が生じやすいという問題がある。また、長年の運用により、古い設計や急場しのぎの改修が積み重なり、システムの変更や拡張を困難にしている状態を「技術的負債」と呼ぶが、モノリスはその負債を抱えやすい傾向にある。
これに対し、マイクロサービスは、システムを小さな独立した機能の集まりとして分割して構築する考え方である。オンラインストアの例で言えば、商品の表示サービス、購入処理サービス、在庫管理サービス、顧客情報管理サービスといった具合に、それぞれが独立して動き、互いに連携し合う。この方式では、各サービスを独立して開発・デプロイ・スケールできるため、柔軟性が高く、一部の変更が全体に与える影響も小さくなる。
多くの開発チームは、モノリスの課題を解決するため、マイクロサービスへの移行を理想と考える。しかし、長年運用されてきたモノリスは、その内部が複雑に絡み合い、技術的な負債を多く抱えている場合が少なくない。全容を把握できるエンジニアが減り、全体を一度に作り直すには莫大な時間とコストがかかるのが現実だ。そこで、理想的なマイクロサービス化は難しいと認識し、現実的なアプローチとして「なんちゃってマイクロサービス化」という手法が提案されている。これは、完璧なマイクロサービスを目指すのではなく、モノリスに大きな変更を加えることなく、段階的にシステムを改善していくための実用的な戦略である。
この「なんちゃってマイクロサービス化」の最初のステップは、「ロードバランサーによるルーティング」だ。既存のモノリスシステムはそのままに、その手前に「ロードバランサー」という装置を設置する。ロードバランサーは、外部からのリクエストを受け取り、どのサーバーにそのリクエストを送るかを判断する役割を担う。ここで重要なのは、特定のURLパスへのリクエストだけを、新しく作ったマイクロサービスへと振り分ける設定をすることだ。例えば、これまで「/api/old_feature」というパスで提供されていた機能はモノリスが処理し、「/api/new_feature」というパスで提供される新しい機能は、ロードバランサーが新サービスへとリクエストを転送する。これにより、モノリスの内部コードに一切手を加えることなく、新しい技術スタックやよりモダンなアーキテクチャを持つサービスを、モノリスと並行して動かし始めることが可能になる。
次のステップは「ドメインモデルの独立」である。新しく開発するマイクロサービスは、モノリスとは異なる独自のデータベースを持つように設計する。ここでいうドメインモデルとは、システムの中心となるデータ構造やビジネスロジックを指す。モノリスが利用している既存のデータベースとは直接接続せず、完全に独立したデータ構造を持つことで、将来的にそのサービスがさらに発展したり、他のサービスと連携したりする際の柔軟性が格段に向上する。モノリスのデータベースは長年の運用で複雑化しており、その構造に縛られることなく、新サービスに最適なデータモデルを採用できるメリットは大きい。この独立性が、真のマイクロサービス化への重要な第一歩となる。
三つ目のステップは「モノリスからの機能移譲」だ。新しいマイクロサービスが十分に安定し、モノリスが持っていた機能の一部を代替できるようになれば、その機能をモノリスから新しいサービスへと完全に移行させる。具体的には、モノリス側で該当する機能へのリクエストを受け付けないように変更したり、受け取ったリクエストを新しいサービスへと転送する処理をモノリス内に一時的に追加したりする。これにより、徐々にモノリスの機能を縮小させ、新サービスがその役割を完全に引き継ぐ形となる。この際も、モノリスのコードを大幅に修正するのではなく、設定変更やシンプルなリダイレクトのような形で移行を進めるのがポイントだ。
最後のステップは「ドメインモデルの疎結合化」である。ステップ2で新サービスが独自のデータベースを持つことの重要性を述べたが、現実には新サービスがモノリスのデータにアクセスする必要がある場面も出てくる。しかし、ここでモノリスのデータベースに直接接続してしまうと、新サービスがモノリスのデータ構造に強く依存することになり、せっかく独立させた意味が薄れてしまう。そこで、モノリスが提供するAPI(アプリケーションプログラミングインターフェース)を通じてデータにアクセスするように変更する。モノリスが特定のデータを取得・更新するためのインターフェースを外部に公開し、新サービスはそのAPIを呼び出すことで必要な情報を得るようにするのだ。これにより、モノリスのデータベース内部構造が変更されても、APIのインターフェースが変わらなければ新サービスへの影響を最小限に抑えることができる。この方法は、システム間の結合度を低く保ち、「疎結合」な関係を構築するために非常に重要である。
これらの四つのステップを通じて、「なんちゃってマイクロサービス化」は、古いモノリスシステムに存在する技術的負債や複雑さに直接手を加えることなく、少しずつ新しい技術やアーキテクチャを取り入れ、システム全体を改善していく現実的な道筋を示す。完璧なマイクロサービス化は理想的だが、それを一気に実現するのは困難な場合が多い。このアプローチは、リスクを最小限に抑えながら、段階的にシステムの現代化を進め、開発チームが新しい技術に習熟する機会も提供する。結果として、モノリスの肥大化を防ぎつつ、システムの柔軟性や保守性を向上させ、将来的な完全なマイクロサービス化への足がかりを築くことができるのである。