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【ITニュース解説】Hackers left empty-handed after massive NPM supply-chain attack

2025年09月11日に「BleepingComputer」が公開したITニュース「Hackers left empty-handed after massive NPM supply-chain attack」について初心者にもわかりやすく解説しています。

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ITニュース概要

NPMのプログラム部品を狙った史上最大のサイバー攻撃が、多くのクラウド環境に影響を与えた。しかし、攻撃者はほとんど収益を得られず、結果として失敗に終わった。

ITニュース解説

ソフトウェア開発の世界では、様々な便利な「部品」を組み合わせて新しいシステムを作るのが一般的だ。NPM(Node Package Manager)は、JavaScriptというプログラミング言語でシステムを作る開発者たちが、そうした便利な部品(これを「パッケージ」と呼ぶ)を共有したり、自分のプロジェクトで利用したりするための仕組みだ。世界中の開発者が作ったパッケージがNPMを通じて公開され、数え切れないほどのプロジェクトで利用されている。今回のニュースは、このNPMという、いわばソフトウェア部品の巨大な流通システムを狙った大規模な攻撃について解説する。

今回の攻撃は「サプライチェーン攻撃」と呼ばれるものだった。サプライチェーンとは、製品が作られ、消費者に届くまでの全ての工程や流通経路のことだ。例えば、スマートフォンを作る場合、ディスプレイやバッテリー、半導体など、様々な部品を複数の企業から調達して組み立てる。ソフトウェア開発でも同じで、NPMから提供されるパッケージは、まるでスマートフォンの部品のように、別の開発者が作った「部品」としてシステムに組み込まれる。サプライチェーン攻撃とは、この部品を調達する過程や、部品そのものに悪意のあるコードを仕込み、最終的な製品やシステムに不正な影響を与えようとする攻撃手法を指す。部品が汚染されれば、それを使った全てのシステムが危険にさらされるため、非常に悪質で広範囲な被害を生む可能性がある。

このサプライチェーン攻撃は、NPMエコシステム史上最大規模のもので、およそ10%ものクラウド環境に影響を与えたと推定されている。クラウド環境とは、インターネットを通じて利用できるサーバーやデータベースなどのITインフラのことだ。多くの企業やサービスが、自社で物理的なサーバーを持たずに、クラウド上にシステムを構築・運用している。そのため、クラウド環境が狙われると、非常に多くのユーザーや企業が間接的に被害を受ける可能性がある。

攻撃者たちの狙いは、主にクラウド環境の「認証情報」や「秘密鍵」を盗み出すことだった。認証情報とは、システムにログインするためのユーザー名やパスワードのようなものだ。秘密鍵は、データを暗号化したり、本人確認を行ったりするための重要な電子情報で、これが盗まれると、攻撃者は正当なユーザーになりすましてシステムに侵入したり、重要なデータを盗み出したり、改ざんしたりする危険がある。

具体的な攻撃の手口は、人気のあるNPMパッケージに巧妙に悪意のあるコードを紛れ込ませることだった。開発者がプロジェクトでそのパッケージを利用しようとすると、知らず知らずのうちに不正なコードも一緒にインストールされてしまう。そして、その不正なコードが、システムにアクセスするための認証情報や秘密鍵を探し出し、攻撃者のサーバーへ送信しようと試みる仕組みだった。多くの開発者が日常的に利用しているパッケージを狙うことで、広範囲にわたるシステムへの侵入を試みたわけだ。

しかし、この大規模な攻撃にもかかわらず、ニュース記事によると、攻撃者たちはほとんど利益を得られなかったという。これは、いくつかの要因が重なった結果だ。まず、セキュリティ研究者や開発者コミュニティの迅速な対応が挙げられる。不正なコードが発見されると、すぐに警告が発せられ、影響を受けたパッケージの利用停止や修正が促された。オープンソースの世界では、多くの目があるため、このような不審な動きは比較的早く見つけ出されることが多い。

次に、クラウド環境自体のセキュリティ対策が進んでいたことも大きい。多くのクラウドサービスプロバイダーは、利用者のセキュリティを守るために、様々な対策を講じている。例えば、「最小権限の原則」というものがある。これは、システムやユーザーに、その業務を遂行するために必要最小限の権限のみを与えるという考え方だ。もし、盗まれた認証情報が悪用されても、その認証情報が持つ権限が限定されていれば、攻撃者ができることも限られる。また、クラウド環境では、システムの異常な振る舞いを監視する仕組みも導入されており、不正な通信やデータアクセスが検知されやすくなっている。

今回の事件は、システムエンジニアを目指す初心者にとっても重要な教訓となる。私たちが普段利用するオープンソースソフトウェアやパッケージは、非常に便利だが、それがどのような経路で開発され、どのようなコードが含まれているかを完全に把握することは難しい場合がある。そのため、常にセキュリティ意識を持って開発に取り組むことが求められる。

具体的には、利用するパッケージの信頼性を確認すること、定期的にセキュリティ情報をチェックし、脆弱性が発見されたパッケージは速やかにアップデートすること、そして、開発環境や本番環境で不審な動きがないか監視することが重要になる。また、クラウド環境を利用する際には、提供されるセキュリティ機能を適切に設定し、最小限の権限で運用することを心がけるべきだ。

今回のNPMサプライチェーン攻撃は、その規模の大きさから見れば非常に危険なものであったが、開発コミュニティ、セキュリティ研究者、そしてクラウドサービスのセキュリティ対策が連携して機能したことで、最悪の事態は避けられた。しかし、これは単なる成功事例として終わらせてはならない。ソフトウェアのサプライチェーンを狙った攻撃は今後も続くだろう。システムエンジニアとして、常に最新の脅威に目を向け、セキュアなシステム開発と運用を追求していく姿勢が、これからのIT社会を支える上で不可欠となる。

このニュースは、オープンソースソフトウェアの利用が拡大する中で、セキュリティがいかに重要であるかを改めて示している。便利さの裏には常にリスクが潜んでおり、それを理解し、適切に対処する能力が、現代のシステムエンジニアには強く求められていると言えるだろう。

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