【ITニュース解説】Running Machine Learning Models in the Browser Using onnxruntime-web
2025年09月06日に「Dev.to」が公開したITニュース「Running Machine Learning Models in the Browser Using onnxruntime-web」について初心者にもわかりやすく解説しています。
ITニュース概要
onnxruntime-webライブラリを使い、ブラウザで直接AIモデルを動かす方法を解説。ONNX形式のモデルをロードし、サーバーを介さず高速に推論を実行できる。これにより、応答速度の向上やユーザーのプライバシー保護が実現可能となる。(111文字)
ITニュース解説
従来の機械学習モデルは、その多くがサーバー上で動作している。ユーザーがWebアプリケーションを通じて何かを予測したい場合、入力データをサーバーに送信し、サーバー上のモデルが計算した結果を受け取るという通信が毎回発生する。しかし、この方式には通信遅延やプライバシーに関する懸念、サーバーインフラの維持コストといった課題があった。こうした課題を解決するアプローチとして、機械学習モデルをユーザーのWebブラウザ上で直接実行する技術が注目されている。この技術を使えば、サーバーとの通信を介さずに高速な予測が可能となり、ユーザーデータもデバイスの外部に出ることがないためプライバシーが保護される。今回紹介する「onnxruntime-web」は、まさにこのブラウザ上での機械学習モデル実行を可能にするためのJavaScriptライブラリである。
この技術の中核をなすのが、ONNX(Open Neural Network Exchange)というフォーマットである。機械学習モデルは、TensorFlowやPyTorchといった様々なフレームワークを使って開発されるが、通常はそれぞれのフレームワーク固有の形式で保存されるため、互換性がない。ONNXは、これらの異なるフレームワークで作成されたモデルを、共通の標準形式に変換するための仕組みである。これにより、特定のフレームワークに依存することなく、学習済みのモデルを様々な環境で利用できるようになる。そして「onnxruntime-web」は、このONNX形式で保存されたモデルをWebブラウザで実行するために特化したライブラリだ。内部ではWebAssembly(WASM)やWebGLといった技術を利用して、ブラウザ上でネイティブアプリケーションに近い高速な計算処理を実現している。これにより、従来はサーバーサイドでしか扱えなかったような複雑なモデルでも、フロントエンドのJavaScriptだけで推論処理を実行できるようになった。
実際にブラウザでモデルを動かすプロセスは、いくつかのステップに分かれる。まず、前提としてPythonなどで学習させ、ONNX形式でエクスポートしたモデルファイルを用意しておく。次に、このONNXファイルをWebアプリケーションのプロジェクト内に配置し、npmコマンドで「onnxruntime-web」ライブラリをインストールする。ここからが実装の重要な部分となる。第一に、ユーザーがフォームなどから入力した新しいデータを、モデルが学習した時と全く同じ形式の数値データに変換する必要がある。この処理をエンコーディングと呼ぶ。例えば、モデルが「性別」という特徴を「男性=1, その他=0」と「女性」という特徴を「女性=1, その他=0」のような数値(ワンホットエンコーディング)で学習した場合、ブラウザ側でもユーザーの選択に応じて同じ形式の数値を生成するJavaScriptコードを記述する。特徴の数や並び順も学習時と完全に一致させる必要があり、この前処理が推論の精度を左右する極めて重要な工程である。
データが正しくエンコードできたら、次に「onnxruntime-web」ライブラリを使ってモデルを読み込み、推論を実行する。まず、ライブラリの機能を使ってプロジェクト内に配置したONNXファイルを非同期で読み込み、推論セッションを作成する。そして、先ほどエンコードした入力データを「テンソル」という、モデルが計算に使える多次元配列の形式に変換する。このテンソルをモデルの入力として与え、推論実行の命令を出すと、モデルは予測結果を返す。例えば、メンタルヘルスの治療が必要かどうかを予測するモデルであれば、結果として「治療が必要」というラベルと、その予測に対する信頼度(確率)が出力される。最後に、この得られた予測結果をWebアプリケーションの画面上に表示すれば、一連の処理は完了となる。
このように、onnxruntime-webを活用することで、AIや機械学習の機能をサーバーインフラに依存することなく、フロントエンドに直接組み込むことが可能になる。これにより、ユーザーはより速く、そして安全に高度な機能を利用できるようになる。リアルタイムの画像認識や音声処理、パーソナライズされた推薦など、これまでサーバーサイドで行われてきた多くの処理が、ユーザーのデバイス内で完結する可能性を秘めている。システムエンジニアを目指す者にとって、こうしたクライアントサイドで完結するAI技術の動向を理解しておくことは、今後のアプリケーション開発において大きな強みとなるだろう。