【ITニュース解説】OpenAI reportedly signs $300 billion Project Stargate cloud deal with Oracle
2025年09月11日に「The Verge」が公開したITニュース「OpenAI reportedly signs $300 billion Project Stargate cloud deal with Oracle」について初心者にもわかりやすく解説しています。
ITニュース概要
AI企業OpenAIはOracleと提携し、5年間で3000億ドル規模のクラウド契約を締結した。これは史上最大級の契約で、AI開発に必要な計算能力とデータセンターを確保するための「Project Stargate」の一環だ。
ITニュース解説
今回のニュースは、人工知能(AI)分野の最先端を走るOpenAIと、IT業界の老舗であるOracleが、史上最大級のクラウドコンピューティング契約を締結したというものだ。その規模は、OpenAIがOracleから約5年間で3000億ドル(日本円で約45兆円)相当のコンピューティングパワーを購入するという、途方もない金額に上る。これは単なる巨大な取引というだけでなく、これからのAI開発がどのような方向に進むのか、そしてそれを支えるインフラがどれほど重要になるのかを示唆する、極めて重要な出来事である。
まず、OpenAIについて説明する。OpenAIは、近年その名を世界中に轟かせているAI研究開発企業だ。特に、人間と自然な会話ができる大規模言語モデル(LLM)であるChatGPTシリーズの開発元として有名であり、生成AIと呼ばれる分野を牽引している。彼らは、より賢く、より高度なAIを開発するために、日々膨大な計算資源を必要としている。AIモデルの学習には、大量のデータとそれを処理するための高性能なコンピューターが不可欠であり、その規模は想像を絶するものだ。
次に、Oracleについて説明する。Oracleは、長年にわたりデータベース管理システムの世界で圧倒的なシェアを誇ってきたIT企業だが、近年はクラウドコンピューティングサービスにも注力している。Oracle Cloud Infrastructure(OCI)と呼ばれる彼らのクラウドサービスは、後発ながらもその性能とコスト効率の高さで注目を集めている。彼らは、AIワークロードのような高性能を要求される処理に強いという特徴を持っている。
今回の契約の核心は、「3000億ドルのコンピューティングパワーの購入」という点にある。コンピューティングパワーとは、具体的には、AIの学習や推論に必要な、高性能なサーバー、特にGPU(画像処理装置)と呼ばれる演算チップが多数搭載されたサーバー群、それらを接続する高速なネットワーク、そして膨大なデータを保管するストレージなどを組み合わせた、一連の計算資源を指す。これらの資源を自社で全て調達し、運用するには莫大な初期投資と維持費用がかかり、さらに必要な時に必要なだけ用意する柔軟性も低い。そこで重要になるのが、クラウドコンピューティングだ。
クラウドコンピューティングとは、インターネットを通じて、ITインフラやソフトウェアなどのコンピューティングリソースをサービスとして利用する形態のことである。ユーザーは、自社で物理的なサーバーを購入したり、データセンターを建設したりすることなく、必要な時に必要な分だけ、コンピューティングパワーを借りて利用できる。これにより、初期費用を抑え、運用管理の手間を省き、必要に応じてリソースを柔軟に拡張・縮小することが可能になる。OpenAIのようなAI企業は、AIモデルの学習フェーズで一時的に爆発的なコンピューティングパワーが必要となるため、クラウドコンピューティングの持つスケーラビリティ(拡張性)は極めて大きなメリットとなるのだ。
この巨大契約は、「Project Stargate(プロジェクト・スターゲイト)」と呼ばれる、より広範なプロジェクトの一部である。Project Stargateは、OpenAIとOracleが協力して、次世代のAI開発を支えるための大規模なデータセンターを建設する計画だ。ニュースでは、「4.5ギガワットの電力を必要とするデータセンター」という記述があるが、これは驚異的な規模を示す。一般的なデータセンターが数メガワット程度の電力を消費することと比較すると、4.5ギガワットは都市一つ分の電力に匹敵するレベルであり、いかに膨大な計算資源がそこに集積されるか、そしてそれらを冷却するためのインフラや電力供給がいかに重要であるかを物語っている。この規模のデータセンターを構築し、安定的に運用するには、高度な技術力と莫大な投資が必要となる。
ここで疑問に思う人もいるかもしれない。OpenAIはMicrosoftから多額の出資を受けており、Microsoft自身も強力なクラウドサービスであるAzureを提供している。なぜOpenAIはMicrosoft Azureだけでなく、Oracleのクラウドサービスを利用するのか。その理由の一つとして、マルチクラウド戦略が考えられる。これは、特定のクラウドベンダーに依存せず、複数のクラウドサービスを組み合わせて利用することで、リスクを分散したり、それぞれのクラウドが持つ強みを活用したりする戦略だ。OracleのOCIは、特に高性能コンピューティング(HPC)やAIワークロードにおいて、高い性能と優れたコスト効率を提供するとされている。OpenAIは、最も効率的で高性能なインフラを求めて、OCIを選択したのだろう。また、Microsoftとの提携が深化する中で、異なるベンダーと協力することで、技術的な選択肢を広げ、AI開発のボトルネックを解消しようとしている可能性もある。
今回のOpenAIとOracleの巨大契約は、今後のAI技術の発展と、それを支えるクラウドインフラの重要性を改めて浮き彫りにしている。AI開発は、単に優れたアルゴリズムやモデルを開発するだけでなく、それを動かすための物理的な基盤、つまりデータセンターやコンピューティングパワーが不可欠なのだ。そして、その基盤を効率的かつ大規模に提供できるクラウドコンピューティングプロバイダーの存在が、ますます重要になってくる。
システムエンジニアを目指す皆さんにとって、このニュースは多くの示唆を与えている。まず、AI技術が社会に与えるインパクトの大きさを理解すること。そして、そのAIを動かす「縁の下の力持ち」であるクラウドコンピューティングの知識が、今後ますます重要になるということだ。クラウドの仕組み、異なるクラウドプロバイダーの特性、大規模なインフラを構築・運用するための技術など、学ぶべきことは多い。AIとクラウドは、まさに現代のIT業界を牽引する二大潮流であり、これらを理解することは、将来のシステムエンジニアにとって不可欠なスキルとなるだろう。この巨大契約は、未来のITインフラがどのような姿になるのか、そしてそこでどのような技術が必要とされるのかを明確に示しているのである。