【ITニュース解説】削る前に可視化--チケット分析で見極める「人の仕事」と「自動化できる仕事」
2026年09月24日に「ZDNet Japan」が公開したITニュース「削る前に可視化--チケット分析で見極める「人の仕事」と「自動化できる仕事」」について初心者にもわかりやすく解説しています。
ITニュース概要
情報システム部門がITコスト削減に直面する際、チケット分析が有効な解決策となる。この分析により、人の手で行うべき仕事と自動化できる仕事を明確に見極める。これにより、無駄な作業を排除し、効率的なシステム運用を実現するための具体的な方法と、その本質を解説する。
ITニュース解説
企業がITシステムを運用する上で、情報システム部門は非常に重要な役割を担っている。システムが問題なく安定して稼働していることは、ビジネスを進める上で不可欠だ。しかし、システムがスムーズに動いているように見えても、経営層からは常に「コストをもっと削減できないか」という要求が突きつけられることがある。これは、情報システム部門が直面する、非常に根深く、困難な課題の一つだ。
なぜこのような状況が生まれるのか。それは、多くの企業において、ITコストが具体的に「何に」「どれだけ」かかっているのかが、経営層にも情報システム部門の担当者にも明確に見えていないことが多いからだ。漠然と「人件費が高い」「システムの維持費が高い」といった認識はあっても、どの業務が人手に依存し、どの作業が実は無駄になっているのか、あるいはもっと効率化できる部分なのかが、曖昧なままになっているのだ。この「見えないコスト」が、ITコスト削減を難しくしている本質なのだ。
このような状況を打開し、賢くITコストを削減するためには、まず「可視化」が最も重要になる。可視化とは、目に見えないもの、曖昧なものを、誰にでもわかる具体的な形で見えるようにすることだ。情報システム部門が行っている日々の業務や、そこに費やされている時間、発生しているコストを、詳細かつ正確に把握することから始める必要がある。
そのための有効な手段の一つが「チケット分析」だ。情報システム部門では、ユーザーからのシステムに関する問い合わせ、トラブル報告、新しい機能の追加依頼、定期的なメンテナンス作業など、さまざまな「仕事」が発生する。これらの仕事一つ一つを、多くの企業では「チケット」という形で管理している。チケットとは、具体的にどのような依頼があったのか、誰がいつ対応したのか、どれくらいの時間がかかったのか、どのような結果になったのか、といった情報を記録するためのシステム上の項目やタスクのようなものだ。
このチケットのデータを集め、詳しく分析することで、これまで見えなかった「仕事の実態」が明らかになる。例えば、特定の種類の問い合わせが異常に多いことがわかったり、特定のシステム障害対応に毎回莫大な時間がかかっていることが判明したりする。また、複数の担当者が同じような手作業を繰り返している状況も見えてくるかもしれない。
チケット分析によって可視化された業務内容を、次に二つのカテゴリーに分類する。「人の仕事」と「自動化できる仕事」だ。
「人の仕事」とは、その名の通り、人間にしかできない、あるいは人間が行うことでより高い価値が生まれる仕事のことだ。これには、複雑な状況判断が必要な業務、創造的な発想が求められる業務、人とのコミュニケーションや感情的な配慮が必要な業務などが含まれる。例えば、ユーザーのニーズを深く理解し、新しいシステムを企画・設計する仕事や、トラブル発生時に予期せぬ状況に対応し、最善の解決策を導き出す判断などがこれに当たる。これらは、システムの運用における「要」となる部分であり、情報システム部門のメンバーが本来集中すべき、付加価値の高い業務だ。
一方で、「自動化できる仕事」とは、繰り返し発生する定型的な作業、特定のルールに従って処理できる作業、大量のデータを正確に処理する作業など、人間が行うよりもコンピューターやソフトウェアに任せた方が効率的で、ミスも少ない仕事のことだ。例えば、システムの状態を定期的にチェックする監視作業、ログファイルから特定の情報を抽出する作業、バックアップの実行、シンプルな問い合わせへの自動応答などがこれに該当する。これらの仕事は、たとえ人手で行われていても、そこに人間の高度な判断や創造性はほとんど必要ない場合が多い。
この二つのカテゴリーに仕事を明確に分類できれば、コスト削減の具体的な方策が見えてくる。自動化できる仕事から優先的に、自動化ツールやRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)などの技術を導入することで、これまで人手に頼っていた作業を機械に任せることができる。これにより、情報システム部門のメンバーは、繰り返し行われる単純作業から解放され、より「人の仕事」である、企業の成長に直結するような企画や高度な問題解決、新しい技術の導入検討といった、付加価値の高い業務に時間を割くことができるようになる。
結果として、同じ人数でもより多くの、あるいはより質の高い仕事ができるようになり、組織全体の生産性が向上する。これが、人件費という形で現れるITコストの削減にもつながる。また、自動化によって作業の正確性が向上し、ヒューマンエラーによるトラブルが減少すれば、その対応にかかる時間やコストも削減できる。
このように、単に「コストを削れ」という漠然とした要求に直面した時、闇雲に人件費を削減したり、必要なシステム投資をストップしたりするのではなく、まずは現状の業務を「可視化」し、「チケット分析」を通じて「人の仕事」と「自動化できる仕事」を明確に見極めることが、ITコスト削減における根深い課題を解決するための賢明なアプローチとなるのだ。このアプローチによって、情報システム部門は、ただコストを消費する部門ではなく、積極的に経営に貢献し、企業の成長を支える戦略的な部門としての役割をより強く発揮できるようになる。システムエンジニアを目指す皆さんにとって、このような視点は、将来のキャリアにおいて非常に重要な考え方となるだろう。