As-Is(アズイズ)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説
As-Is(アズイズ)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。
読み方
日本語表記
現状 (ゲンジョウ)
英語表記
As-Is (アズイズ)
用語解説
「As-Is」はIT業界、特にシステム開発や業務改善の分野で頻繁に用いられる言葉で、現在の状況や現状を指す。直訳すると「ありのまま」となり、まさにその意味で使われる。システムを刷新したり、業務プロセスを改善したりする際に、まず「今、何がどうなっているのか」を正確に把握するために使われる。これに対し、「To-Be(トゥービー)」という言葉があり、これは「あるべき姿」や「将来の状態」を意味する。As-Isが現状を表すのに対し、To-Beは目指すべき理想の状態を表す対義語の関係にある。システム開発や業務改革プロジェクトでは、As-Isを分析して現状の課題を特定し、その課題を解決するためのTo-Be像を描く、というプロセスが基本となる。
なぜAs-Isの把握がそこまで重要なのか。それは、現状を正確に理解しない限り、本当に必要な改善策や適切なシステムを設計できないためである。例えば、既存のシステムを新しいものに置き換えるプロジェクトを考えてみよう。もし現行システムがどのような機能を持っていて、どのようなデータがどのように処理されているのか、そして誰がどのように利用しているのかを詳しく知らなければ、新しいシステムが何をすべきか、何を変えるべきかを判断することはできない。漠然とした情報に基づいて開発を進めると、後になって「実はこの機能が必要だった」「このデータ連携が抜けていた」といった重大な問題が発覚し、手戻りやプロジェクトの失敗につながるリスクが非常に高くなる。また、業務改善においても同様で、現状の業務プロセスがどこで滞り、どこに無駄があるのかを詳細に把握しないと、表面的な改善にとどまったり、かえって業務を複雑にしてしまったりすることもある。As-Is分析は、こうしたリスクを回避し、プロジェクトを成功に導くための出発点となる。
As-Is分析は、具体的なシステム開発や業務改革プロジェクトにおいて、要件定義フェーズで特に重要な役割を果たす。現行システムのリプレイス(置き換え)やパッケージ製品の導入などを行う場合、まず現状のシステムがどのような構成で、どのような業務を支えているのかを徹底的に調査する。この調査では、現場の利用者やシステム担当者へのヒアリング、既存のドキュメント(仕様書、操作マニュアルなど)のレビュー、実際のシステムやデータフローの確認など、多角的な情報収集が行われる。収集した情報は、業務フロー図(例えばBPMN: Business Process Model and Notationなど)、システム構成図、データモデル図といった形で可視化されることが多い。これにより、複雑な現状の業務やシステムを、関係者全員が共通認識として理解できる形に整理できる。
このAs-Isモデル(現状の業務やシステムを図や文書で表現したもの)が完成すると、次は現状の課題点の洗い出しに進む。可視化された業務フローを見て、「この工程は非効率ではないか」「データ連携が手作業でミスが多い」「システムが古くメンテナンスが困難」といった具体的な問題点を特定する。これらの課題点が、新しいシステムや改善された業務プロセス(To-Be)で解決すべき目標となる。例えば、ある業務で紙の帳票を複数部門で回覧している状況がAs-Is分析で判明すれば、それは情報共有の遅延や紛失のリスクといった課題として認識され、To-Beでは電子申請システムでの一元管理などが検討されることになる。
特にパッケージソフトウェアを導入するプロジェクトでは、As-Is分析の結果と、導入を検討しているパッケージソフトウェアの標準機能との間にどれくらいの「Fit & Gap(フィット&ギャップ)」があるかを分析するためにAs-Isモデルが不可欠となる。Fitは現状の業務がパッケージの標準機能で実現できる部分、Gapは現状の業務がパッケージの標準機能では実現できない部分を指す。このGapを埋めるために、業務の方をパッケージに合わせて変更する(業務改革)のか、それともパッケージにカスタマイズを加えるのか、といった重要な意思決定は、As-Isを正確に把握していなければ不可能である。
As-Is分析を進める上での留意点としては、まず客観性と正確性が挙げられる。分析は主観や推測ではなく、事実に基づいた情報で行う必要がある。また、網羅性も重要で、特定の部門や機能に偏らず、システムや業務全体を俯瞰的に捉える姿勢が求められる。さらに、実際に業務を行っている担当者からの意見や情報は非常に貴重であるため、積極的に関係者を巻き込み、認識のずれがないかを確認しながら進めることが成功の鍵となる。As-Is分析を通じて得られた現状の課題とそれを踏まえたTo-Be像の策定、そしてそのギャップを埋めるための具体的な計画立案という一連の流れは、システム開発や業務改善プロジェクトにおいて、無駄のない効率的な推進を実現し、最終的な成功へと導くための不可欠なプロセスであると言える。