【ITニュース解説】第867回 「後で読む」サービスのWallabagをUbuntuでセルフホストする
ITニュース概要
「後で読む」WebサービスWallabagを、Ubuntu 24.04 LTSサーバーに自分で導入・設定する方法を紹介。オープンソースで、記事保存やオフライン閲覧ができる個人用サービスを構築する手順を学べる。
ITニュース解説
インターネットの海には日々膨大な情報が流れ、気になる記事を見つけても、仕事や学業、あるいは別の作業に追われて、すぐにじっくりと読む時間が取れないことは珍しくない。そのような時、ブラウザのブックマーク機能だけでは物足りないと感じることがある。ブックマークはあくまでウェブサイトのアドレスを保存するだけであり、元の記事が削除されたり、デザインが変わったりすると、期待した情報が得られない可能性があるからだ。これに対し、「後で読む」サービスは、記事の内容そのものを保存し、広告や余計な装飾を取り除いて、集中して読みやすい形に整えてくれる便利なツールである。 世の中には様々な「後で読む」サービスが存在するが、その多くは企業が提供するクラウドサービスとして運用されており、ユーザーは月額料金を支払うか、広告表示を受け入れる形で利用する。しかし、今回取り上げる「Wallabag(ワラバッグ)」は、そのような既存サービスとは一線を画す、オープンソースの「後で読む」サービスである。オープンソースであることの最大の利点は、ソフトウェアのソースコードが公開されており、誰でも自由に利用、改良、再配布できる点にある。これにより、特定の企業に依存せず、自分のデータを自分で管理することが可能となる。 そして、Wallabagを「セルフホスト」するということは、自分自身のサーバーを用意し、そこにWallabagをインストールして運用することを意味する。一般的にクラウドサービスを利用する場合、データはサービス提供者のサーバーに保存されるため、データのプライバシーやセキュリティについて、サービス提供者を信頼する必要がある。しかし、Wallabagをセルフホストすれば、すべてのデータは自分の管理下にあるサーバーに保存されるため、情報のプライバシーを完全にコントロールできるという大きなメリットがある。また、サービスによっては機能の制限があったり、カスタマイズができなかったりするが、セルフホストであれば自分の好きなように設定を変更したり、機能を拡張したりする自由度が高い。さらに、月額利用料も発生しないため、長期的に見れば運用コストを抑えられる可能性もある。 ただし、セルフホストには、その分の責任と知識が求められる。サーバーのセットアップ、運用、メンテナンス、セキュリティ対策、データのバックアップといった管理業務はすべて自分で行う必要があるからだ。システムエンジニアを目指す初心者にとって、これらの作業はサーバー運用の基礎を実践的に学ぶ絶好の機会となる。 Wallabagをセルフホストするための基盤となるのが、サーバーのオペレーティングシステム(OS)である。今回利用されるのは「Ubuntu 24.04 LTS」のサーバー版だ。UbuntuはLinuxベースの非常に人気のあるOSで、安定性と広範なサポートが特徴である。「LTS」はLong Term Support(長期サポート)の略で、セキュリティアップデートなどが長期間にわたって提供されることを意味しており、サーバーのように一度構築したら安定して長く運用したい用途には非常に適している。また、「サーバー版」は、グラフィカルなユーザーインターフェースを持たず、コマンドライン(文字による指示)での操作が中心となるため、余計なリソースを消費せず、サーバー用途に特化して効率的に動作する。 実際にWallabagをUbuntuサーバー上に構築するには、いくつかの主要なソフトウェアが必要となる。WallabagはWebアプリケーションであるため、まずユーザーからのアクセスを処理するための「Webサーバー」が必要だ。これは、インターネットからの「このWallabagのページを見せてほしい」というリクエストを受け取り、Wallabagのプログラムに渡す役割を担う。次に、Wallabagのプログラムが書かれているプログラミング言語「PHP」の実行環境が必要となる。そして、保存された記事の本文、タイトル、タグ、ユーザー情報といった重要なデータは、「データベース」と呼ばれる専門のソフトウェアで効率的に管理される。データベースは、膨大な情報を整理し、高速に検索したり更新したりするための「情報の倉庫」のようなものだと考えると良い。 これらのソフトウェア(Webサーバー、PHP、データベース)をUbuntuサーバーにインストールし、適切に設定することで、Wallabagが動作する環境が整う。この一連の作業を通して、システムエンジニアを目指す初心者は、OSの基本的な操作方法、ネットワークの設定、各種ソフトウェアのインストールと設定、そしてそれらが連携してWebアプリケーションを動かす仕組みといった、実践的なスキルと知識を身につけることができる。これは単に一つのサービスを構築するだけでなく、将来的に様々なシステム開発や運用に携わる上で不可欠な基礎力となる。課題に直面し、それを解決していく過程で得られる経験は、技術者としての成長に大きく貢献するだろう。