【ITニュース解説】Writing an operating system kernel from scratch – RISC-V/OpenSBI/Zig
2025年09月14日に「Hacker News」が公開したITニュース「Writing an operating system kernel from scratch – RISC-V/OpenSBI/Zig」について初心者にもわかりやすく解説しています。
ITニュース概要
OSカーネルをゼロから構築する過程を解説。RISC-VプロセッサとOpenSBI、Zig言語を使用し、システムの深層を探求する。システムエンジニア初心者がOSの仕組みを学ぶ上で参考になる。
ITニュース解説
オペレーティングシステム、略してOSは、私たちが普段コンピュータを使う上で欠かせない基盤ソフトウェアである。WindowsやmacOS、Linuxといった名前はよく耳にするが、それらのOSの心臓部にあたるのが「カーネル」と呼ばれる部分だ。今回紹介する記事は、このOSカーネルをゼロから構築するという、非常に専門的で挑戦的な取り組みについて解説している。システムエンジニアを目指す初心者にとって、OSの仕組みを深く理解することは、今後の学習やキャリアにおいて非常に重要な土台となる。
カーネルは、コンピュータのハードウェアと、その上で動作するアプリケーションソフトウェアの仲介役を務める中核的なプログラムである。具体的には、メモリの管理、CPU(中央演算処理装置)がどのプログラムを実行するかを決定するスケジューリング、キーボードやマウス、ディスプレイといった入出力デバイスの制御など、コンピュータの基本的な動作すべてを司っている。私たちがアプリケーションを起動したり、ファイルを保存したりするたびに、カーネルは裏側で様々な処理を実行し、それらの操作を実現しているのだ。通常、システムエンジニアがOSを開発することは稀で、既存のOSやその機能を利用することがほとんどである。しかし、OSカーネルをゼロから開発するという行為は、コンピュータがどのように動き、どのようにハードウェアとソフトウェアが連携しているのかという、その根本原理を深く理解するための究極的な学習方法と言える。
記事で中心的に扱われている技術の一つに「RISC-V(リスクファイブ)」がある。これは、近年注目を集めている新しい種類のCPUアーキテクチャだ。Intelのx86やARMといった既存の主要なアーキテクチャとは異なり、RISC-Vはオープンソースであり、誰でも自由に設計を利用し、改良することができるという大きな特徴がある。その命令セット(CPUが理解できる基本的な指示の集合)がシンプルで拡張性が高いため、スマートフォンやサーバー、組み込み機器など、多岐にわたる用途での利用が期待されている。オープンソースであることから、大学の研究機関やスタートアップ企業が独自のCPUを設計しやすくなり、半導体業界に大きな変革をもたらす可能性を秘めている。OSカーネルを開発する際、どのCPUアーキテクチャをターゲットにするかは非常に重要であり、RISC-Vは学習用途としても、そのシンプルさから適切な選択肢となる。
次に登場する「OpenSBI(オープンエスビーアイ)」は、RISC-Vプロセッサ上で動作するOSカーネルをブート(起動)させるための標準的なインターフェース実装である。RISC-Vアーキテクチャには「SBI(System Binary Interface)」という仕様があり、これはブートローダー(OSを読み込むプログラム)とOSカーネルの間で、ハードウェアの初期化や、特権レベルの切り替え、割り込み処理といった基本的なシステムサービスをやり取りするための約束事だ。OpenSBIは、このSBI仕様に準拠した具体的なソフトウェアであり、OSカーネルが安全かつ効率的に起動し、基本的なハードウェア操作を行えるようにするための土台を提供する。つまり、OpenSBIはOSカーネルがハードウェアを直接操作する前に、システムを安定した状態に整える重要な役割を担っている。
そして、カーネルを記述するためのプログラミング言語として「Zig(ジグ)」が使われている点も注目に値する。Zigは比較的新しい言語でありながら、C言語と同等かそれ以上に低レベルなハードウェア制御を可能にする設計が特徴だ。メモリの管理をプログラマが直接行えるなど、システムプログラミング、特にOS開発のような用途に非常に適している。しかし、C言語が抱える安全性に関する問題を解消するために、より厳格なエラーハンドリングや、未定義動作を防ぐための工夫が言語設計に盛り込まれている。また、C言語のコードとの高い相互運用性も持ち合わせており、既存のC言語ライブラリを容易に利用できるため、新しいOS開発においても実用性が高い。Zigを用いることで、より安全かつ効率的にOSカーネルの低レベルな処理を記述できるようになる。
この記事で紹介されているような、RISC-V上でOpenSBIとZigを使ってOSカーネルをゼロから作るという挑戦は、単にコードを書く以上の意味を持つ。これは、コンピュータの起動プロセスから、CPU、メモリ、入出力デバイスといったハードウェアがどのように連携し、その上でソフトウェアがどのように動作するのか、というコンピュータサイエンスの根源的な問いに対する実践的な探求である。初心者エンジニアがこのプロセスを理解することで、普段何気なく使っているOSやアプリケーションの背後でどのような複雑な処理が行われているのかを肌で感じることができる。これは、問題解決能力やデバッグスキル、そして何よりもコンピュータに対する深い洞察力を養う上で、かけがえのない経験となるだろう。
システムエンジニアとしてキャリアを積む上で、OSカーネル開発のような低レベルな知識は直接的な業務で使う機会は少ないかもしれない。しかし、アプリケーションがなぜ遅いのか、なぜクラッシュするのかといったトラブルシューティングを行う際や、より効率的なシステム設計を考える上で、OSの内部構造やハードウェアとの連携に関する深い理解は、問題の本質を見抜くための強力な武器となる。この記事が示すアプローチは、最新のオープンソース技術を活用しつつ、コンピュータの根本原理に立ち返るという点で、現代のシステムエンジニアリングにおける重要な学習パスの一つを示唆していると言える。この種の取り組みを通じて得られる知識と経験は、将来どのような技術分野に進むにしても、揺るぎない基礎となるはずだ。