EoMPLS(イーオーエムピーエルエス)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説
EoMPLS(イーオーエムピーエルエス)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。
読み方
日本語表記
イーオーエムプラス (イーオーエムプラス)
英語表記
EoMPLS (イーオーエムプラス)
用語解説
EoMPLSは「Ethernet over MPLS」の略称であり、MPLS(Multiprotocol Label Switching)ネットワーク上でイーサネットフレームを伝送するための技術である。この技術の主な目的は、地理的に離れた複数の拠点を、あたかも一本のイーサネットケーブルで直接接続しているかのように見せることにある。システムエンジニアを目指す上で、ネットワークの広域接続やVPN(Virtual Private Network)の概念を理解する上で非常に重要な技術の一つである。
従来のイーサネットは、物理的なケーブルの長さや配線の制約から、同一のLAN(Local Area Network)を構築できる範囲が限られていた。これに対し、EoMPLSは広域ネットワークの基盤技術であるMPLSを活用することで、これらの制約を克服し、離れた場所にあるネットワークセグメント間でもイーサネットによる接続を可能にする。これは、企業が複数の支社を持ち、それぞれの拠点のLANを一つの大きなネットワークのように扱いたい場合や、異なるデータセンター間をレイヤ2(データリンク層)で直接接続したい場合などに特に有用である。EoMPLSは、データリンク層の透過性を維持しつつ、広大な範囲での接続を実現する、いわゆるL2VPN(Layer 2 Virtual Private Network)を実現する技術の一つとして広く利用されている。
EoMPLSの動作原理は、イーサネットフレームをMPLSパケットの中に「カプセル化」して転送することにある。具体的には、送信側の拠点にあるルータ(これを「プロバイダエッジルータ」、略してPEルータと呼ぶ)が、イーサネットネットワークから受け取ったイーサネットフレームをそのまま取り込む。次に、このイーサネットフレーム全体をペイロードとして、MPLSの「ラベル」と呼ばれる短い識別子を付加する。MPLSのラベルは、通常のIPパケットにおけるIPアドレスのようなものではなく、あらかじめ定義された経路情報と関連付けられた識別子であり、高速なパケット転送を可能にする。
カプセル化されたイーサネットフレームは、MPLSラベルが付けられたMPLSパケットとして、MPLSネットワーク内部を転送される。MPLSネットワーク内のルータ(「ラベルスイッチングルータ」、略してLSRと呼ぶ)は、パケットの先頭に付与されたMPLSラベルだけを見て、あらかじめ決められた経路に従って次のLSRへとパケットを転送していく。この際、IPアドレスの検索のような複雑な処理は行われず、ラベルの付け替え(「ラベルスワップ」)と転送のみが行われるため、非常に高速な転送が可能となる。
パケットが目的地の拠点にある受信側のPEルータに到達すると、PEルータはMPLSラベルを剥がし、元のイーサネットフレームを取り出す。そして、このイーサネットフレームを受信側のイーサネットネットワークへと転送する。この一連のプロセスにより、イーサネットフレームの内容、例えばMACアドレスやVLANタグといった情報は、MPLSネットワークを通過しても一切変更されず、送信元から受信先まで透過的に伝送される。ユーザーのイーサネットデバイスから見れば、MPLSネットワークの存在は意識されず、あたかも物理的なイーサネットケーブルで直接繋がっているかのように振る舞うため、既存のイーサネット設定やプロトコルをそのまま利用できるという大きなメリットがある。
EoMPLSでは、このように特定の二つの拠点間を結ぶ論理的な接続を「擬似ワイヤ(Pseudowire)」と呼ぶ。この擬似ワイヤを通じて、イーサネットフレームが仮想的に転送される。一本の擬似ワイヤは、あたかも一本の仮想的なイーサネットケーブルのように機能し、異なる拠点間でのMACアドレス学習やVLAN(Virtual LAN)によるセグメンテーションも問題なく動作する。これにより、企業は地理的な制約にとらわれず、拠点を追加したり、ネットワーク構成を変更したりする際の柔軟性を大幅に向上させることができる。
EoMPLSの主な特徴と利点としては、まず「透過性」が挙げられる。前述の通り、イーサネットフレームがそのまま転送されるため、上位のプロトコルやアプリケーションはMPLS網の存在を意識することなく利用できる。次に「広域性」である。MPLS網は広範囲にわたるネットワークを構築できるため、地理的に離れた複数の拠点を効率的に接続することが可能である。また、「スケーラビリティ」も重要な要素である。MPLS網の設計により、多数の擬似ワイヤを効率的に管理し、多数の拠点間接続や、VLANを活用した複数の仮想イーサネット接続を同時に提供できる。さらに、MPLSが持つ「トラフィックエンジニアリング」機能を利用することで、特定の擬似ワイヤに対して帯域保証を行ったり、優先制御を適用したりすることが可能となり、ミッションクリティカルな通信の品質を確保することもできる。
このように、EoMPLSはイーサネットの利便性とMPLSの高速性・広域性を組み合わせることで、現代の多様なネットワーク要件に応える強力なソリューションを提供している。これは、拠点間のLAN接続、データセンター相互接続、あるいは通信事業者が顧客に提供するレイヤ2のVPNサービスなど、多岐にわたる場面で活用されている。より高度なL2VPN技術としてVPLS(Virtual Private LAN Service)やEVPN(Ethernet VPN)なども存在するが、EoMPLSはそれらの基礎となる概念であり、点と点をつなぐシンプルな仮想イーサネット接続を実現する上で今なお重要な役割を担っている。