HDFS(エイチディーエフエス)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説
HDFS(エイチディーエフエス)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。
読み方
日本語表記
エイチディーエフエス (エイチディーエフエス)
英語表記
HDFS (エイチディーエフエス)
用語解説
HDFSは、Hadoop Distributed File Systemの略称であり、Apache Hadoopプロジェクトの中核をなす分散ファイルシステムである。その主な目的は、テラバイトやペタバイトといった極めて大規模なデータセットを、安価な汎用サーバーを多数連結させたクラスター上に、高い信頼性を保ちながら格納し、高速なアクセスを提供することにある。現代のビッグデータ処理における基盤技術として、極めて重要な役割を担っている。
HDFSは、マスター・スレーブ型のアーキテクチャを採用しており、主に「NameNode」と呼ばれるマスターサーバーと、多数の「DataNode」と呼ばれるスレーブサーバーによって構成される。NameNodeは、ファイルシステム全体の管理を司る司令塔の役割を持つ。具体的には、ファイルやディレクトリの階層構造、ファイル名、アクセス権限といったメタデータを管理する。さらに、どのファイルがどのようなブロックに分割され、その各ブロックがどのDataNodeに格納されているかという、データの物理的な配置情報を一元的に保持している。クライアントがファイルにアクセスしようとする際には、まずNameNodeに問い合わせを行い、目的のデータが格納されているDataNodeの情報を取得する。NameNodeはシステム全体で一つだけ存在するため、その可用性がシステム全体の稼働に直結する非常に重要なコンポーネントである。
一方、DataNodeは、実際のデータを格納する役割を担う。HDFSでは、一つの巨大なファイルは「ブロック」と呼ばれる固定サイズのデータ単位に分割されて格納される。このブロックのサイズは、デフォルトで128MBや256MBといった、一般的なOSのファイルシステムと比較して非常に大きいことが特徴である。これは、ディスクのシークタイムの影響を最小限に抑え、大規模なデータをシーケンシャルに読み出す際の転送速度を最大化するための設計思想に基づいている。各DataNodeは、自身に割り当てられたブロックをローカルのディスクに保存し、NameNodeからの指示やクライアントからの要求に応じて、データの読み書きを実行する。また、DataNodeは定期的にNameNodeに対して、自身の生存と保持しているブロックの情報を報告する。これをハートビートとブロックレポートと呼び、NameNodeはこれによってクラスター全体の健全性を監視する。
HDFSの最大の特徴の一つが、高い耐障害性である。これはデータの「レプリケーション」という仕組みによって実現される。HDFSは、一つのデータブロックを、デフォルトで3つ、それぞれ異なるDataNode上に複製して保存する。これにより、いずれか一つのDataNodeにハードウェア障害が発生してアクセス不能になったとしても、他のDataNodeに保存されている複製データを利用して、処理を中断することなく継続できる。NameNodeは常にレプリケーション数を監視しており、何らかの理由で複製が失われると、自動的に他の正常なDataNode上で新たな複製を作成し、規定のレプリケーション数を維持しようとする。
データの書き込み処理は、このレプリケーションを考慮して行われる。クライアントがファイルを書き込む際、まずNameNodeに書き込み要求を送り、ブロックを格納すべきDataNodeのリストを受け取る。クライアントはリストの最初のDataNodeにデータを書き込み、そのDataNodeは受け取ったデータを次のDataNodeへ、さらにその次のDataNodeへとパイプライン方式で転送する。すべての複製先で書き込みが完了したことが確認されて初めて、クライアントへの書き込み完了通知が返される。
また、HDFSは「Write-Once-Read-Many」(一度書き込み、多数回読み出す)というデータアクセスモデルに最適化されている。これは、一度書き込まれたファイルの内容は基本的に変更されず、主に分析などの目的で繰り返し読み出されるという、ビッグデータ処理の典型的なユースケースを想定した設計である。ファイルの末尾への追記はサポートされているが、ファイル内の任意の位置を書き換えるような更新処理は想定されていない。
さらに、HDFSは「データの局所性」という概念を重視する。これは、計算処理を、データが格納されている場所のできるだけ近くで行うという考え方である。大規模データをネットワーク経由で移動させるコストは非常に高いため、MapReduceやSparkといった分散処理フレームワークは、NameNodeからデータブロックの配置情報を取得し、各DataNode上で直接計算タスクを実行することで、ネットワーク帯域の消費を最小限に抑え、処理全体の効率を大幅に向上させる。このようにHDFSは、単なる大規模ストレージとしてだけでなく、分散処理フレームワークと密接に連携することで、その真価を発揮する。安価なハードウェアで構築できるスケーラビリティと、データ消失を防ぐ堅牢性を両立させたHDFSは、ビッグデータ技術を支える不可欠なファイルシステムである。