IBM HTTP Server(アイビーエム エイチティーティーピー サーバー)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

IBM HTTP Server(アイビーエム エイチティーティーピー サーバー)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

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読み方

日本語表記

アイビーエム エイチティーティーピー サーバー (アイビーエム エイチティーティーピー サーバー)

英語表記

IBM HTTP Server (アイビーエム エイチティーティーピー サーバー)

用語解説

IBM HTTP Serverは、IBM社が提供するWebサーバーソフトウェアである。一般的にIHSと略される。その基盤となっているのは、世界で最も広く利用されているオープンソースのWebサーバーソフトウェアであるApache HTTP Serverだ。IHSは、Apache HTTP Serverの安定性や豊富な機能を継承しつつ、IBMの他のミドルウェア製品、特にWebSphere Application Serverとの連携を強力にサポートするために最適化されている。システムエンジニアを目指す上で、特に大規模なエンタープライズシステムの構築に関わる場合、このIHSの役割を理解することは非常に重要となる。

まず、Webサーバーの基本的な役割から説明する。Webサーバーは、ユーザーが使用するWebブラウザからのリクエストを受け取り、それに応じてHTMLファイル、CSSファイル、画像ファイルといった静的なコンテンツを返すことが主な仕事である。IHSもこの基本的な機能をすべて備えており、単体のWebサーバーとして静的なWebサイトを公開することも可能だ。しかし、IHSがその真価を発揮するのは、アプリケーションサーバーと連携する場面である。

IHSの最大の特徴は、IBM WebSphere Application Server(WAS)との親和性の高さにある。WASは、Javaで開発されたビジネスロジックなどを実行し、動的なコンテンツを生成するアプリケーションサーバーである。一般的なWebシステムでは、静的コンテンツを配信するWebサーバーと、動的な処理を行うアプリケーションサーバーを分離して配置する構成が採られる。この構成において、IHSはWebシステムの「顔」として、外部からのすべてのリクエストを最初に受け付ける役割を担う。そして、そのリクエストが静的コンテンツの要求であればIHS自身が応答し、動的な処理が必要なリクエストであれば背後にあるWASへ転送する。この役割分担により、静的コンテンツは高速なIHSが処理し、WASは本来の役目である動的コンテンツの生成に専念できるため、システム全体のパフォーマンスとスケーラビリティが向上する。

このIHSとWASの連携を実現するために不可欠なコンポーネントが「WebSphere Plug-in」である。このプラグインはIHSにインストールされ、IHSとWAS間の通信を賢く制御する。例えば、複数のWASサーバーで構成されるクラスター環境において、このプラグインはリクエストを各WASサーバーに適切に振り分ける負荷分散(ロードバランシング)の機能を提供する。これにより、一台のサーバーに処理が集中することを防ぎ、システム全体の処理能力を高めることができる。また、いずれかのWASサーバーに障害が発生した際には、プラグインがそれを自動的に検知し、正常に稼働している別のWASサーバーへリクエストを振り向けるフェイルオーバー機能も備えている。この機能により、システムの一部に障害が発生してもサービスを継続させることが可能となり、システムの可用性が大幅に向上する。さらに、特定のユーザーからの一連のリクエストを常に同じWASサーバーに転送するセッション維持(セッションアフィニティ)機能も持っており、ログイン状態などを維持する必要があるアプリケーションの安定稼働を支える。

Apache HTTP Serverをベースとしながらも、IHSは商用製品ならではのメリットを提供する。その一つが、IBMによる公式な技術サポートである。ミッションクリティカルなシステムで問題が発生した場合、ベンダーからの専門的なサポートを受けられることは、迅速な問題解決と安定運用を実現する上で大きな安心材料となる。また、IBMは独自のセキュリティ修正や機能強化を施しており、高いセキュリティレベルが求められる金融機関や官公庁などのシステムでも安心して利用できる。製品のインストールやパッチ適用は、IBM Installation Managerという専用のツールを通じて一元的に管理できるため、導入や保守の作業負荷が軽減される点も管理者にとっては利点である。

総括すると、IBM HTTP Serverは、Apache HTTP Serverの堅牢な基盤の上に、IBM WebSphere Application Serverとのシームレスな連携機能と、商用製品としての手厚いサポート、そして強化されたセキュリティを加えたWebサーバーである。単にWebページを公開するだけでなく、負荷分散や障害対策といった高度な機能を通じて、大規模で信頼性の高いエンタープライズWebシステムの安定稼働を支える、極めて重要なコンポーネントと言えるだろう。