Jakarta EE(ジャカルタ イーイー)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説
Jakarta EE(ジャカルタ イーイー)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。
読み方
日本語表記
ジャカルタEE (ジャカルタ イーイー)
英語表記
Jakarta EE (ジャカルタ イーイー)
用語解説
Jakarta EEは、Java言語を用いて大規模で信頼性の高い企業向けアプリケーションを開発するための技術仕様の集合体である。正式名称はJakarta Enterprise Editionであり、かつてはJava EE (Java Platform, Enterprise Edition) という名称で知られていた。主に、多数のユーザーが同時にアクセスするWebアプリケーションや、企業内の複数のシステムが連携して動作する分散システムなど、複雑な要件を持つサーバーサイドのシステム構築に利用される。Jakarta EEは特定のソフトウェア製品ではなく、様々な機能を実現するためのルールや約束事を定めた「仕様」の集まりである点が重要である。この標準化された仕様があることで、異なるベンダーが提供する製品であっても互換性を保つことができ、開発者は特定の製品に依存することなくアプリケーションを開発することが可能となる。
Jakarta EEの詳細を理解するためには、その構成要素と歴史的背景を知ることが不可欠である。まず、Jakarta EEは多数のAPI(Application Programming Interface)仕様から成り立っている。これらのAPIは、エンタープライズアプリケーションで頻繁に必要とされる機能を標準化したものである。例えば、Webブラウザからのリクエストを受け取り、動的なWebページを生成するための「Jakarta Servlet」や「Jakarta Pages」、Web APIを開発するための「Jakarta RESTful Web Services」、データベースとのデータ操作をオブジェクト指向で記述できるようにする「Jakarta Persistence」、ビジネスロジックを部品化しトランザクション管理などを自動化する「Jakarta Enterprise Beans」、そしてコンポーネント間の依存関係を管理しコードの結合度を低く保つ「Jakarta Contexts and Dependency Injection」などが代表的な仕様として挙げられる。開発者はこれらの標準APIを利用することで、車輪の再発明を避け、アプリケーションのビジネスロジックそのものの開発に集中できる。
次に、Jakarta EEは「仕様」であり、その仕様を実際に動作するように実装したソフトウェアが「アプリケーションサーバー」である。代表的なアプリケーションサーバーには、WildFly, GlassFish, Open Liberty, Payara Serverなどがある。開発者がJakarta EEの仕様に準拠して作成したアプリケーションは、理論上、これらのどのアプリケーションサーバー上でも動作する。この「一度書けば、どこでも動く」という思想はJavaの大きな特徴であり、Jakarta EEもその思想をエンタープライズ領域で実現している。
歴史的に見ると、この技術はSun Microsystems社によってJ2EEとして生まれ、その後Oracle社に引き継がれJava EEへと発展した。しかし、開発の停滞が懸念される中、さらなるオープン化とコミュニティ主導の開発を促進するため、2017年にプロジェクトが非営利団体であるEclipse Foundationへ移管されることが決定した。この移管に伴い、名称がJakarta EEへと変更された。この変更は単なる名前の変更だけでなく、開発プロセスがよりオープンで迅速になったことを意味する。技術的な観点からの最も大きな変更点は、Javaのパッケージ名である。Java EE 8まではjavax.*というパッケージ名が使われていたが、商標権の問題から、Jakarta EE 9以降ではjakarta.*という新しいパッケージ名が採用された。このため、既存のJava EEアプリケーションを新しいJakarta EE環境へ移行する際には、パッケージ名の変更作業が必要となる。
システムエンジニアを目指す初心者にとって、Jakarta EEを学ぶことは、大規模で堅牢なサーバーサイドアプリケーションがどのように構築されているかを理解する上で非常に有益である。多くの企業システムがJava EEやJakarta EEを基盤として長年稼働しており、その技術的な知識は現場で直接役立つ場面が多い。また、標準仕様を学ぶことで、特定の製品知識に偏ることなく、アプリケーションサーバーのアーキテクチャやエンタープライズ開発の普遍的な概念を体系的に習得することができる。Jakarta EEは、Javaによるエンタープライズシステム開発の歴史と実績を背負い、オープンなコミュニティの力で進化を続ける、現代のシステム開発においても重要な基盤技術の一つである。