JIS2000(ジェイアイエスにせん)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説
JIS2000(ジェイアイエスにせん)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。
読み方
日本語表記
JIS2000 (ジェイアイエスニセン)
英語表記
JIS2000 (ジェイアイエスにせん)
用語解説
JIS2000とは、コンピュータで日本語を扱うために定められた文字コードの国家規格である。正式名称は「JIS X 0213:2000」であり、2000年に制定されたことから一般にJIS2000と呼ばれる。この規格の最も重要な特徴は、それまで広く使われていたJIS X 0208(JIS第1・第2水準漢字)を大幅に拡張した点にある。JIS X 0208では約6,800字の漢字や記号が定められていたが、人名や地名などで使用される特殊な漢字を表現できないという課題があった。JIS2000は、この問題を解決するために、新たにJIS第3水準漢字およびJIS第4水準漢字として約4,300字を追加し、合計で11,233字の文字を規定した。これにより、日本の公的機関や企業で必要とされる、より広範な日本語文字の電子的な処理が可能となった。
JIS2000は、先行するJIS X 0208を完全に包含する上位集合として設計されている。JIS X 0208は1978年に制定されて以来、日本のコンピュータシステムにおける日本語文字の標準として長らく利用されてきた。しかし、収録文字数が限られていたため、戸籍システムや図書館の書誌情報など、正確な漢字表記が求められる場面で、規格外の文字、いわゆる外字を作成・利用する必要があった。JIS2000は、こうした外字として扱われてきた文字の多くを標準規格に取り込むことを目的の一つとしていた。追加された文字の内訳は、JIS第3水準漢字が1,259字、JIS第4水準漢字が2,436字となっており、これらが追加文字の中心を占めている。その他にも、学術論文などで使用される記号や、アイヌ語表記に使われる片仮名、ラテン文字の拡張セットなども含まれており、日本語の表現能力を大きく向上させた。
ここで理解しておくべき重要な点は、JIS2000が「符号化文字集合(Character Set)」の規格であるということだ。これは、どの文字にどの番号(区点コード)を割り当てるかを定めた対応表のようなものであり、実際にコンピュータがデータを保存する際のバイト列の形式(符号化方式、Encoding)を直接規定するものではない。JIS2000で定義された文字を利用するためには、それに対応した符号化方式が必要となる。代表的なものとして、Shift_JISを拡張したShift_JIS-2004、EUC-JPを拡張したEUC-JIS-2004などがある。また、国際的な文字コード規格であるUnicodeとの関係は特に重要で、JIS2000で追加された文字の多くは、既にUnicodeに収録されていた文字をJISの体系に改めてマッピングしたものである。このため、JIS2000の普及は、Unicodeをベースとするシステムとのデータ交換を円滑にする効果ももたらした。
システムエンジニアがJIS2000を扱う上で最も注意すべきは、2004年に行われた改訂版「JIS X 0213:2004」(通称JIS2004)で生じた字形の変更問題である。JIS2000(2000年版)の時点では、JIS X 0208で定められていた文字の字形は変更されなかった。しかし、JIS2004では、国語審議会の答申などに基づき、168字の例示字形が変更された。これは、印刷標準字体と康熙字典体との間で揺れのあった字体を、より伝統的な康熙字典体に近い形に統一するなどの目的があった。例えば、「葛飾区」の「葛」という字は、JIS X 0208(JIS90)では下部が「曷」であったが、JIS2004では下部が変更された。同様に「辻」のしんにょうの点が一つから二つに、「祇園」の「祇」のへんが「示」から「ネ」の形に変更されるなど、見た目に明らかな違いが生じた。この変更により、同じ文字コードを扱っていても、OSやインストールされているフォントによって表示される字形が異なるという互換性の問題が発生した。旧来の字形を「JIS90字形」、新しい字形を「JIS2004字形」と呼び分けることがある。システム開発においては、顧客から特定の字形での表示を求められたり、旧システムで作成されたデータと新システムでの表示に差異が生じて問題となったりするケースがあるため、この字形の違いを正確に理解しておくことが不可欠である。
現代のIT環境において、JIS2000の直接的な役割は変化している。Windows VistaやmacOS X 10.5以降の主要なオペレーティングシステムは、標準でJIS2004で規定された字形を採用しており、一般ユーザーが利用する環境ではJIS2004字形が標準となっている。また、Webサイトや新規のアプリケーション開発では、文字コードとしてUnicodeの一種であるUTF-8を採用することが世界的な標準となっている。UTF-8はJIS2000で定義されている全ての文字を扱うことができるため、開発者が直接JISの区点コードを意識する場面は減少した。しかし、レガシーシステムのマイグレーションや、金融機関、官公庁といった厳密な文字管理が求められる業務システムの開発・保守に携わる場合、文字コードの歴史的経緯や規格間の差異、特にJIS90とJIS2004の字形の違いに関する知識は依然として重要である。データの文字化けや表示の不整合といったトラブルの原因を究明し、適切に対処するためには、JIS2000という規格が果たした役割とその影響を理解しておくことが、システムエンジニアにとって必須の知識と言える。