第2層 (ダイニソウ) とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説
第2層 (ダイニソウ) の読み方
日本語表記
レイヤー2 (レイヤーツー)
英語表記
Layer 2 (レイヤー ツー)
第2層 (ダイニソウ) の意味や用語解説
「第2層」とは、OSI参照モデルにおける「データリンク層」を指す。OSI参照モデルは、コンピュータネットワークにおける通信機能を7つの階層(レイヤ)に分割し、それぞれの階層が特定の役割を果たすように定義したものである。第2層であるデータリンク層は、物理層の上位、ネットワーク層の下位に位置し、主に物理的なネットワーク上で、隣接する機器間での信頼性のあるデータ転送を実現する役割を担っている。 データリンク層の最も基本的な役割は、物理層が担当する単なる電気信号や光信号といったビット列の送受信を、より意味のある「フレーム」という単位にまとめ、エラーを検出しながら、確実に隣接するノードへデータを届けることにある。これにより、物理層の持つ潜在的なエラーや物理的な媒体の制約から、上位層をある程度独立させ、より信頼性の高い通信基盤を提供する。 データリンク層の機能は多岐にわたるが、主に以下の点が挙げられる。一つは「フレーミング」である。これは、物理層から受け取った生のビット列や、上位層から送られてきたデータを、データリンク層で扱うための論理的な単位である「フレーム」に区切る機能である。フレームには、データの開始と終了を示す区切り、送信元と宛先の物理アドレス、エラー検出用の情報などが付加される。 次に「物理アドレス(MACアドレス)」の管理と利用がある。MACアドレスは、Network Interface Card(NIC)などのネットワーク機器に製造時に割り当てられる世界中で一意の識別子である。データリンク層では、このMACアドレスを用いて、同一のローカルネットワークセグメント内に存在する複数の機器の中から、データを送るべき特定の宛先を識別し、フレームを正確に転送する。IPアドレスのような論理アドレスとは異なり、物理的な機器を直接指し示すアドレスである。 「エラー制御」もデータリンク層の重要な機能である。データ伝送中にノイズなどによってビットが反転し、データが破損する可能性がある。データリンク層は、フレームに付加されたエラー検出コード(例えば巡回冗長検査:CRC)を用いて、受信したフレームに破損がないかをチェックする。もしエラーが検出された場合、そのフレームを破棄し、送信側に再送を要求するなどの方法で、データの信頼性を確保しようと試みる。 さらに「フロー制御」も行われる。これは、送信側が受信側の処理能力を超過する速度でデータを送信してしまうことを防ぐ機能である。受信側のバッファが溢れてデータが失われることを避けるため、受信側が「一時停止」の信号を送ったり、処理が追いついたことを通知したりすることで、データ送信の速度を調整する。 また「媒体アクセス制御(MAC: Media Access Control)」もデータリンク層の主要なサブ機能である。これは、複数の機器が共有する物理的な伝送媒体(例えばイーサネットケーブルや無線チャネル)を、どのようなルールで利用するかを決定する仕組みである。衝突を避けるための方法が採用され、有線LANで広く使われるイーサネットではCSMA/CD(Carrier Sense Multiple Access with Collision Detection)という方式が、無線LANで広く使われるWi-Fi(IEEE 802.11)ではCSMA/CA(Carrier Sense Multiple Access with Collision Avoidance)という方式が用いられる。CSMA/CDは、送信前に媒体が利用中かを確認し、衝突が発生したら検知して再送する方式であり、CSMA/CAは、衝突を未然に防ぐために、送信前に予約などの手順を踏む方式である。 データリンク層を代表する技術として最も普及しているのが「イーサネット」である。イーサネットは有線LANのデファクトスタンダードであり、前述のMACアドレスによるフレーミングやCSMA/CDによる媒体アクセス制御を実装している。また「Wi-Fi」(IEEE 802.11)は無線LANの標準技術であり、イーサネットと同様にMACアドレスとフレームを利用するが、無線媒体の特性上、CSMA/CA方式を採用している。この他にも、過去にはATM(Asynchronous Transfer Mode)やFrame Relay、PPP(Point-to-Point Protocol)などもデータリンク層のプロトコルとして利用されてきた。 ネットワーク機器の中では、L2スイッチ(レイヤ2スイッチ)がデータリンク層で動作する代表的なデバイスである。L2スイッチは、受信したフレームのMACアドレスを学習し、そのMACアドレスを持つデバイスが接続されているポートを記憶する「MACアドレステーブル」を構築する。これにより、受信したフレームを、宛先MACアドレスに対応する特定のポートにのみ転送することで、不必要なトラフィックの拡散を防ぎ、効率的な通信を実現する。ブリッジも同様にデータリンク層で動作するデバイスである。 システムエンジニアを目指す初心者にとって、データリンク層の理解はネットワークの基本的な仕組みを把握する上で極めて重要である。例えば、ネットワークのトラブルシューティングを行う際、IPアドレスが見えない状況でもMACアドレスを確認することで、隣接する機器との物理的な接続状態や通信可否を判断できる場合がある。また、L2スイッチの動作原理を理解することは、ローカルネットワークの設計や、VLAN(Virtual LAN)などの技術を学ぶ上での土台となる。上位層で動作するIPなどのプロトコルが、実際にどのように物理的なネットワーク上でデータを運んでいるのかを理解するためにも、データリンク層の知識は不可欠である。データリンク層は、ネットワークの信頼性と効率性を支える基盤であり、その機能を把握することは、現代の複雑なネットワークシステムを理解し、構築し、運用する上で欠かせない。