LCM(エルシーエム)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

LCM(エルシーエム)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

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読み方

日本語表記

最小公倍数 (サイショウコウバイシュウ)

英語表記

Least Common Multiple (りーすと こもん もるちぷる)

用語解説

LCMはLife Cycle Managementの略称であり、企業が保有するPCやサーバー、ソフトウェアといったIT資産について、導入計画の策定から調達、利用環境の構築、日々の運用、そして最終的な廃棄に至るまでの一連のサイクル、すなわち「一生」を体系的に管理する手法や考え方のことである。この管理の主な目的は、IT資産に関わる総所有コストを最適化し、セキュリティを強化すること、さらには運用管理業務の効率化やコンプライアンスの遵守を実現することにある。システムエンジニアを目指す者にとって、個別の技術スキルを磨くだけでなく、企業全体のIT資産を俯瞰し、その価値を最大化するためのマネジメント手法であるLCMを理解することは非常に重要である。

LCMのプロセスは、大きく分けて複数のフェーズで構成される。最初のフェーズは「企画・調達」である。ここでは、事業計画や業務内容に基づき、どのようなIT資産が、どれだけの数量、いつまでに必要かを計画する。例えば、新入社員向けのPCを準備する場合、担当する業務に適した性能や形態の機種を選定する必要がある。性能が過剰であれば無駄なコストが発生し、逆に不足していれば従業員の生産性を損なうことになるため、慎重な要件定義が求められる。また、機器を直接購入するのか、あるいは一定期間借り受けるリース契約にするのかといった調達方法も、予算や資産管理方針に応じて決定する。複数のベンダーから見積もりを取得し、価格、納期、サポート内容などを総合的に比較検討した上で、最適な調達先を決定する。

次のフェーズは「導入・展開」である。調達したIT資産を、利用者がすぐに業務で使える状態に設定する作業が中心となる。この作業は「キッティング」とも呼ばれる。具体的には、OSや業務で必須となるアプリケーションのインストール、ウイルス対策ソフトをはじめとするセキュリティ設定、社内ネットワークへの接続設定など、企業で標準化された環境を構築する。数百台、数千台規模の機器を導入する際には、一台ずつ手作業で設定するのは現実的ではないため、マスターイメージを作成して複製するクローニング技術や、設定を自動化する構成管理ツールなどが活用される。キッティングが完了した機器は利用者に配布され、設置される。同時に、個々の機器のシリアル番号、使用者、設置部署といった詳細情報を資産管理台帳に正確に登録し、IT資産として正式に管理を開始する。

IT資産が利用され始めてから廃棄されるまでの最も長い期間を占めるのが「運用・保守」フェーズである。この段階では、IT資産が安定して稼働し続けるための様々な活動が行われる。利用者からの操作方法に関する問い合わせや、「PCが起動しない」「アプリケーションが異常終了する」といったトラブルに対応するヘルプデスク業務は代表的なものである。また、ハードウェアの故障時には修理を手配したり、代替機を提供したりして業務の停止を最小限に抑える。セキュリティを維持するため、OSやソフトウェアの脆弱性を修正するセキュリティパッチを定期的に適用することも欠かせない。さらに、資産管理台帳の情報が実態と合っているかを確認するための棚卸しを定期的に実施し、ソフトウェアがライセンス契約に違反することなく適正に利用されているかを監視するライセンス管理も、コンプライアンス上、極めて重要な業務となる。

そして、IT資産は技術の陳腐化や物理的な劣化により、いずれその役目を終える。これが「更新・更改」および「廃棄・処分」のフェーズである。PCは一般的に3年から5年程度のリース期間や耐用年数が設定されており、その時期が近づくと後継機種への入れ替えが計画される。新しい機器への移行に伴い、利用者のデータを安全かつ完全に移管する作業も発生する。役目を終えた古い機器は、情報漏洩のリスクをなくすために、内部ストレージのデータを完全に消去する必要がある。データ消去には専用のソフトウェアを用いる方法や、物理的に破壊する方法がとられる。データ消去が完了した機器は、関連法規を遵守して専門業者に引き渡され、リサイクルまたは適正に処分される。最後に、資産管理台帳から廃棄した資産の情報を削除することで、そのIT資産の一連のライフサイクルは完了する。このように、LCMはIT資産の導入から廃棄までの全工程を網羅的に管理することで、企業のIT環境を健全かつ効率的に維持するための不可欠な管理手法なのである。

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