LGTM(エルジーティーエム)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

LGTMは「Looks Good To Me」の頭文字を取った略語である。直訳すると「私にとっては良く見える」となり、IT、特にソフトウェア開発の現場において、他者が作成した成果物に対して「内容を確認した結果、問題ない」という承認の意思を伝えるために使用されるコミュニケーション用語だ。主に、プログラムのソースコードをレビューする「コードレビュー」の文脈で頻繁に用いられる。開発チーム内での円滑な意思疎通を促進するためのスラングの一種であり、システムエンジニアを目指す上で知っておくべき基本的な用語の一つと言える。

LGTMという言葉の理解を深めるためには、まずソフトウェア開発における「コードレビュー」というプロセスを把握する必要がある。コードレビューとは、ある開発者が作成したプログラムのソースコードを、他の開発者がチェックする作業のことである。この目的は多岐にわたり、プログラムに潜むバグを早期に発見すること、設計上の問題点や改善点を指摘すること、コードの可読性や保守性を高めること、そしてチーム全体でコードに関する知識を共有し、スキルの平準化を図ることなどが挙げられる。現代のチーム開発において、コードレビューはソフトウェアの品質を担保するための不可欠な工程となっている。

このコードレビューのプロセスで、LGTMはレビュー担当者（レビュアー）がコード作成者（レビュイー）に対して、レビュー結果を伝える際の最終的な承認のサインとして使われる。具体的には、GitHubやGitLabといったバージョン管理システム上でコードレビューが行われることが多い。開発者は自身が変更・追加したコードを、元の主要なコード（メインブランチなどと呼ばれる）に統合してもらうために、「プルリクエスト」または「マージリクエスト」と呼ばれるリクエストを作成する。このリクエストを受け取ったレビュアーは、提示されたコードの変更箇所を精査し、問題がないか、より良い記述方法はないかなどを確認する。

レビュアーがコードを隅々まで確認し、設計思想を理解した上で、特に修正すべき点が見当たらないと判断した場合に、「LGTM」とコメントを残す。このコメントは、「あなたの書いたコードは、私が確認した限りでは品質基準を満たしており、メインブランチに統合して問題ないと判断します」という明確な意思表示となる。チームの運用ルールによっては、一人または複数のレビュアーからLGTMを得ることが、プルリクエストをマージ（統合）するための必須条件となっている場合も多い。これにより、個人の判断だけでなく、チームとしての合意形成を経てコードが統合されるため、品質の属人化を防ぐ効果がある。

LGTMは単なる「承認」や「OK」という言葉とは少し異なるニュアンスを持つ点も重要である。「Looks Good To Me」という言葉が示す通り、「"私が見た限りでは"問題ない」という、レビュー担当者個人の視点からの確認結果であることを含意している。これは、コードの正しさを絶対的に保証するものではなく、あくまで一人のレビュアーとしての責任範囲内での承認であることを示している。このニュアンスにより、他のレビュアーが別の観点からレビューを行い、異なる意見を述べる余地を残す効果もある。

また、開発現場の文化として、テキストで「LGTM」と入力するだけでなく、「LGTM画像」と呼ばれる画像を用いてコミュニケーションを図ることも広く行われている。これは、猫や犬、アニメのキャラクターなどが「Looks Good To Me」というメッセージと共に描かれた画像であり、これをコメントとして投稿することで、承認の意を伝える。このような画像を用いることで、テキストだけのやり取りになりがちな開発プロセスにおいて、チーム内の雰囲気を和ませ、ポジティブなコミュニケーションを促進する効果が期待される。ただし、プロジェクトの文化やチームの雰囲気によっては、このようなカジュアルな表現が好まれない場合もあるため、使用する際は周囲の状況を考慮する必要がある。

システムエンジニアを目指す初心者がLGTMを使用する際には、いくつかの注意点がある。最も重要なのは、安易にLGTMを出さないことである。LGTMは、レビュアーがそのコード変更に対して責任を持って確認したことを示すサインである。内容を十分に理解しないままLGTMを出してしまうと、潜在的なバグや設計上の問題を見逃し、将来的にシステム全体の品質を低下させる原因となりかねない。LGTMを出すということは、そのコード変更によって引き起こされる可能性のある影響について、レビュアーも一定の責任を共有することを意味する。したがって、自信を持って承認できる場合にのみ使用するべきである。もし、軽微な修正案や改善の提案がある場合は、それを指摘した上で承認の意を示すか、「LGTM, but...（問題ないが、〇〇を修正すればさらに良くなる）」のように補足情報を添えるのが丁寧なコミュニケーションとされる。

総括すると、LGTMはソフトウェア開発のチームコラボレーションを円滑にするための重要なコミュニケーションツールである。その背景にあるコードレビューの重要性を理解し、承認の意思表示が持つ責任の重さを認識した上で、この言葉を正しく使用することが、信頼されるシステムエンジニアとして成長していく上で不可欠なスキルの一つとなる。